2/メガネ屋
●メガネ屋”真心メガネ”
オレのメガネは特別なメガネじゃないといけない。
勿論、邪眼という特別な力を制御するためには必要な事だ。
以前、邪眼の制御に困っていた頃。
偶然通りがかった、この店”真心メガネ”には世話になった。
まだ学生という身の上。
加えて、皆には隠れて”アイツら”と戦っている事。
それらを柔らかく伝えながらも、このメガネ屋店主さんは微笑んでメガネを作ってくれたのだ。
寂れた商店の軒並みに、ひっそりと佇む店舗。
『親切&丁寧”真心メガネ”』という色彩が抜けた看板。
どこか温かいの黄色電球に照らされた店内。
メガネが並ぶ、その奥。
両面を広げた新聞を読む、老人がいる。
「いらっしゃい。おやおや、君は……」
数週間前の出来事で、まだ記憶も新しいのか。
老人の頬がさらに皺を刻んだ。
「今日はどうしたんだね? また”アイツら”ってヤツと喧嘩でもしたのかね?」
まだ汚れが残る学生服。
腫れた顔に、瞑っている右眼。
それらを見て、老人は新聞を畳む。
「……喧嘩……じゃないけど……まぁそんな感じ、です……コレ、直せますか?」
と、胸ポケットにしまっていたメガネを受付に置く。
「拝見するよ」
右のレンズが割れている事は一目瞭然。
だが、老人は慣れた手つきで、メガネのフレームを弄る。
「大事に扱ってくれて何よりだ。レンズ以外は大丈夫だね」
「じゃあレンズは……」
「レンズの交換はしなきゃならんね。ちょっと待ってなさい」
と、受付の隅にある機械を操作し始める。
機械にメガネを置き、検度する老人。
「ん。度なしだね。それなら30分くらいで交換できるよ」
「30分ですか……」
「ああ。度ありなら、フレームに合うように工場で加工してもらうから1週間くらいかかるけど……君のは度なしだから、ボクが手擦りで加工してみるよ」
「えっと……手擦りって事は手作業ですよね……値段は……?」
「気にしないで。レンズ代の5000円もらえれば大丈夫だよ。それか、片眼だけの交換なら2500円くらいだけど、どうするかね?」
したがってレンズ代2500円を払えば、今日中に修理できる。
それならば、渋る理由はない。
「お願いします」
オレは、右眼を瞑ったまま頭を下げた。
読了ありがとうございました。
またまた短編書こうとして、長編4部になりました(汗)
でも、簡単にまとめたつもりです。
この作品を通して、懐かしさや気恥しさが伝わっていただけたら嬉しいです。
もし感慨深くなった方や面白いと思った方。
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