06話
恍惚としている女の子に、ねこだまし!
『パンッ!』
日本ではできなかったであろう音量で、あたりに響いた
恍惚と表情はなくなり無邪気な顔にもどる
「あれ?お兄ちゃん
早かったね」
「そ、そだね
スムーズに終わったよ」
(あっ!ヤベッ!
ジョーズさんに書いてもらった紹介状出すの忘れてた!
まあいいや
明日、仮証文と一緒に渡せばいいか)
「次はどこに行くの?」
「じゃあ武器屋かなー」
「武器屋なら、オススメがあるよー!」
「そうなの?」
「そこのおじさん、展望亭の【グスタフ】さんより怖い顔してるし、言ってる事も怖いんだけど、ご飯食べさせてくたりするの!」
(大将、そんな名前なんだ)
「じゃあ、そこに行ってみよう」
「は〜い
こっちだよー」
と手を繋いで引っ張られていく
10分ほどで着いた
「ここだよっー!」
【武具店】
「スゲーシンプルな名前
わかりやすい」
「おじちゃーん!!」
ドアを開けて入りながら呼ぶ
開けると『チリーン』とドアに付いた鐘が鳴る
奥から小柄なおっさんが出てきた
「うるせぇぞ!ガキ共!
って、お前1人か」
「お客さん連れて来たよっ!」
「客?
そんな事しなくていいって言ってるだろうが」
女の子に怒りつつ、ゼンをジッと睨む
「フンッ!
こっちもガキじゃねぇーかっ!」
「お兄ちゃんだよー
さっき冒険者になったんだよー」
「それでも俺から見りゃあガキ共の1人だ
にしても兄ちゃん、ずいぶんと慕われたな
どんな手を使ったんだ?」
「串焼きで………アハハハ」
「ゲハハハハハッ!
確かに1番の手だな!」
「食いしん坊じゃないもん!」
「こいつと話しをするから、いつもの場所に行ってろ」
「やった!
おじちゃんのパン!」
奥に駆け足でいなくなった
「食いしん坊じゃねぇか
さて小僧、あいつの紹介だから仕方ねぇが、名前は?」
腕を組む姿は様になっている
「なんかすみません
ゼンと言います」
ペコッと会釈をする
「ゼンか
覚えておく
俺はドワーフの【オルクト】
ここ王都では随一の鍛治師だと自負している
そんな俺が打った武器で早々に死なれちゃあ困るんだがな」
「それは残念ですね
じゃあ帰ります」
有名種族・ドワーフに出会えた上に、そのドワーフが打った武器が買えるなんてと感動していたが、いっきにテンションが下がった
(異世界の王道パターンだったのに………)
「ぅおいっ!
出て行く奴があるかっ!」
「え?
でも」
「さっき仕方がないって言っただろうがっ!
名前聞いて追い出す奴がおるかっ!」
「それもそうですね」
「これだから小僧は……」
「アハハハ」
頭に手を置き笑ってごまかす
「今日は何か買いに来たのか?」
「ショートソードを買おうと思ったのですが」
(武器は魔法で出せるから、偽装用にだけどね)
「んん?
お前、見た目は華奢な感じだが、何かしらのスキル持ってるな?」
「えっ!?」
「いやスキル名は言わなくていい
そもそも言わない、聞かないが常識」
「そうなんですね」
(ラッキー!)
「とりあえず、今日はこれを持って行け」
差し出されたのは、ショートソード
装飾など無く、シンプルな剣
「持って行けってなぜです?」
「お主と相性が合いそうな武器はない
打ってやるから、一度3日後に来い」
「マジっすか!
マジでありがとうございます!!」
「お、おう」
(ま、まじってどこの言葉だ?)
喜び過ぎて、引かれている
「あっすみません」
「落ち込まれるよりはいいがな
そろそろあいつが戻ってくるだろうから、帰りな」
「わかりました」
「それと俺の名は他所で言うんじゃないぞ」
「もしかして、お尋ね者なんですか?」
ついついニヤついて言ってしまった
『ゴンッ!!』
雷が落ちた
「すみません
つい冗談を」
(女将さんといい勝負だな)
「大勢の客に来られても迷惑だ」
「なるほど
わかりました」
「おじちゃーん!
今日も美味しかったよー!」
「食べたんなら、さっさと出て行けよ」
「はーい
お兄ちゃん、お話し終わった?」
「君のおかげだね
ありがと」
「うん!
じゃあ次のお店行こうー」
「じゃあ帰ります」
「忘れずに来い、小僧」
ゼン達が帰ってすぐに客がやってきた
「オルクトさんいますか?」
「また子供か
俺がそうだが、何か用か?」
「スキアと言います
ジョズ様に紹介されて来ました」
「ほう、奥で聞こう」
「お兄ちゃん
次はどこに行きたいの?」
「防具屋に行きたいけど、途中でご飯でも食べようかと思ったけど、あとの方がいい?」
「ご飯行くぅ〜!」
(食いしん坊だね)
「じゃあ行こう
お店は任せるよ」
初めてオーク以外のお肉を食べた
美味かった……
また来ようと決めた
【防具屋・ダフネ】
到着した防具屋は、特に何かあるわけではなく、少し愛想がなかった
案内してくれた女の子は
来た事はなかったがお客が1番多い店とのこと
一通り見たけど、欲しいと思うものはなかった
Fランクなので、危険度は高くない
いつ昇格するかわからないが、必要になった時に買うことに
その後、雑貨屋なども案内してもらいそこでバックを買ったり、数件の串焼き屋に連れて行かれたりした
「今日はここまででいいよ」
「もういいの?」
「だね
じゃあ、展望亭までお願いね
ここがどこなのかさっぱりわからん」
「展望亭はこっちだよー」
と再び手を引っ張られる
思ったよりすぐに着いた
「はい、残りの5枚ね」
「わぁ!
ありがとう!お兄ちゃん!」
「助かったよ」
「じゃあねお兄ちゃん!
また案内してあげる!」
バイバーイと去っていく
そんな姿を見ていたら、声をかけられる
「おや、もう戻ってきたのかい?」
「もうお腹いっぱいで」
「あ〜あの子に捕まったのかい
食いしん坊で有名だからね」
「本人は否定してましたよ」
「ハハハ、女の子だからね」
部屋に戻ったゼンは満腹感に包まれ眠った
夜中に一度目覚め、展望亭自慢の屋上に行ってみた
空に広がる星々は地球との比じゃなかった
テレビで見てきた世界各地の星空よりスゴい
彦◯呂さんの決め台詞が聴こえてきそう
月は1つだったが、5倍ぐらいの大きさで威圧感がかなりある
確かに展望亭と名付けただけの事はある
流れ星でもないかなーと寝そべってみる
タバコが吸いたいと思い出す
材料探して魔法で作れないか試してみよう
と決意するゼン
そんな思いにふけってたら、眠気が現れたので部屋に戻って寝た
朝、昨日と同じ時間帯にシャキッと目覚め朝食も食べ終え、1人でぶらぶらしながら、ギルドを目指してみる事にした
串焼きや果物、スープ系の店に寄ったり迷って人に聞いたりとしながらも、無事に到着
中に入ると、昨日より若干人が多かった
まあ昨日はさらに寄り道してたしなーなど思いつつ、カウンターに行ってみたが列ができていたので並んだ
すぐに順番がきた
「おはようございます
ご用件は?」
ゼンの手元に視線を送り依頼書を持っていない事を確認したようだ
「おはようございます
昨日登録したんですけど、その時に書類を出してなかったもので」
「もしかして、ゼンくん?」
「は、はいそうです
でもどうして?」
「担当したのシャル、シャルロッテでしょ?
仮証文持ってるのか聞くのわすれたー!って騒いでたわ」
「すみません」
「いいのよ
よく忘れるから、こっちで聞く事になったんだから
シャルは忘れたみたいだけど
ちなみに私は【カタリーナ】カタリナって呼んで」
「よろしくお願いします、カタリナさん」
「よろしくね、ゼンくん
張本人を呼ぶから、そっちの窓口で待ってて」
と、後ろで別の作業をしていた女性に話しかけ、その女性がどこかに行った
ゼンは隣の窓口に移動した
奥の扉がバンッ!と開き、シャルロッテが慌てて走ってきた