05話
朝、スッキリと起きたゼン
とても身体が軽い
窓を開け新鮮な空気を満喫する
大気汚染などない
王都だが田舎のような感覚になる
ストレージを試していると、下からいい匂いが漂ってきた
時計などがあるわけではないので、降りてみることにした
「おや、今日はちゃんと起きてきたね」
「おはようございます」
「おはよう
好きな席に座ってな
すぐに持ってくるよ」
席に座るとすぐに戻ってきた女将さん
ちなみに女将さんの名前は【マリア】
名前で呼ばれるのは恥ずかしいらしい
「オークのサンドイッチだよ」
料理とぶどうジュースを置く
パンからはみ出している肉がこれまた美味そうに見える
「料理はどれも美味しいですけど、オーク肉が多いですね」
「そういえばあんた、ここは初めてだったね
近くに【オークの森】ってとこがあったね
定期的にオークが狩られているし、このぶどうもその森で採取されているのさ
名物みたいなもんさね」
「なるほど
そんな森があるんですね」
サンドイッチを頬張る
女将さんは、他の客らしき人が増えてきたため、準備をするため去っていった
「頑張ってきなっ!!」
とまたもや背中を叩いていった
1番痛かった
チラチラと観察してみると、朝食を食べに来た人達みんなの背中を叩いていた
「気合いが入った!」
「これがないとね!」
「オスッ!」
「痛っ!」
1人体育会系がいるなぁー
と思いつつ、これもまた名物のようである
部屋に戻ろうとしたら女将さんに呼び止められた
「あんた、今日は出かけるのかい?」
「今日は出ますよ」
「そうかい
気をつけて行きなよ
今日は外で食べておいで」
「ありがとうございます」
部屋の前まで戻ってきたが、用意もなにも手ぶらである
もらったお金はストレージに入れてある
荷物もない
部屋に戻る必要はなかった
Uターンして階段を降りていく
すぐに降りてきたゼンを見かけやってきた女将さん
「どうかしたのかい?」
「いえ、手ぶらなので
部屋に戻る必要もなかったので」
「そういえば荷物らしい物見てないね
じゃあ、いっといで!」
来ると思ったので、ちょっと避けてみた
笑顔を向けてみるも、さらに満面の笑みを浮かべ、左肩を掴まれる
ミシミシと鳴り響きそうな力を込められて悶絶
両手でクルッと回転され、左腕でがっしりホールドされ、右手がやってくる悪寒がする
『バシッィイン!!』
「イデェエエ!!」
思わず声が漏れるゼン
ほんのり涙が出る
(まさかケツ叩きとは………)
周りの視線に気づくと皆んな笑っている
騒いでいるようだが
「朝一から見るとはな!」
「誰もが通る道」
「昔やったなー」
「あのケツ叩きが最強だよな」
「あれも避けたら、凄まじい雷が落ちるぞ」
などなど言われていた
「い、行ってきます」
「はいよ
しっかりおやり」
宿を出てとりあえず、テキトーに歩いて行くと後ろから声をかけられた
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!
黒髪のおにーちゃんっ!」
「俺に言ってたのね」
振り向くと、女の子がいた
「えーっと、何の用?」
「道案内、どうですか?」
「道案内?
じゃあ、お願いしようかな
いくらだい?」
「わぁ!
ありがとうお兄ちゃん!
中銅貨5枚かな?」
「じゃあはい、中銅貨5枚」
「えっ!?」
「やっぱり後で払う感じだった?
じゃ、じゃあ
いつまでかは決めてないけど、帰るまでしっかりと案内してくれたら、同じ枚数追加で払おう」
「えっ!?
ほんとっ!?」
「よろしくね」
「うんっ!
今日はどこに行くの?」
「とりあえず、ギルドかな
あとは、武器・防具を見たいかな」
「お兄ちゃん
冒険者ならもっと早く出ないと〜〜」
「いいんだよ
登録しに行くだけだら」
「そうなんだ!」
歩き出す2人
ギルドに着くまで1時間以上かかってしまった
途中にあった、串焼き屋・果物屋などで寄り道をしていた
まっすぐに行けば30分で着く距離である
様子見で見物するだけだったが、案内してくれてる女の子からはジト目を向けられた
早く行こうよって顔をしている
なので、食べ物で買収してみた
見事に堕ちた
そこから、その子がすすめる店にも寄ってさらに遠回りしたりしていた
道中話をしをしてみると、やはり孤児で女将さんの好意で客取りを宿の前でやってるらしい
粗暴な客は女将さんが叩き返すため、子供達も安心して探せるのである
もし子供達を騙したりすると女将さんから制裁が下され、運が悪いと大将も追加される
「大将とまだ会ってないなー」と呟くとしっかりと聴こえていたようで教えてくれた
寡黙なオーガだと恐れられているのだが、ただの人見知りで、喋れないだけであった
オーガのように人相が悪いが、子供達には優しい笑顔を向けるそうだ
そして大将が作る料理が評判を呼び、宿屋をやる事になったそうだ
女将さんが話してくれたそうだ
適当に時間潰しててとお願いされ、ギルドに入っていたゼンを見送る女の子
「はーい!」
(さーて、なにしてようかなー
でも、まさかすぐにお金くれるなんて
終わったらまたくれるって言ってたなー
ホントなら嬉しいな
マリアおば様のお客さんだし、期待しちゃうな
ここに来るまで、こんなに時間がかかるなんて思ってもみなかったな
でも、どれも美味しかったな〜〜)
ギルドの正面にある建物のとこで座って待っていた
先ほど食べた串焼きを思い出しながらトリップしていた
午前中からお腹いっぱい食べれた事なんて初めてであった
『ギィ』
ドアを開けると、思いの外静かだった
酒場もあるタイプだ!
これもテンプレだよね!
など感動していた
奥に見えたカウンターに行ってみた
「すみません
登録をしにきたんですが、どこに行けばいいですか?」
カウンターには3人の女性が座っていた
誰にとはならないよう、満遍なく視線を送った
「冒険者登録ですね
では、そちらに座ってお待ちください」
立ち上がったのは、1番小柄の人、じゃなかったエルフさんだった
ゼンは感動していてた
トップクラスの有名種族・エルフ
(エルフと出会えて、嬉しくない日本人はいないハズだ!)
興奮していた
しかし、やってきたエルフを正面から見たら見たで、恥ずかしさが勝ってしまい、目線を合わせられなくなる
「おはようございます
担当します【シャルロッテ】と言います
では、こちらのボードに血を一滴お願いします」
(どうやって血を?)
と思っていたら、すぐに道具が出てきた
見た感じ、ホッチキスだ
「こちらの中に、人差し指を入れてください
奥まで入れると針が出て刺さりますので、チクっとします
ちょっとだけ指が動かないよう我慢してください」
「あ、はい」
素直に指を入れると、行ききると指先にチクっときた
注射だなー
と思いつつ動かないようじっとしているとホッチキスの下部の穴から血が一滴落ちた
カッと光るボード
ステータスプレートと同じような表記である
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名前:ゼン=ハメッシュ
種族:人間
年齢:15
職業:冒険者・F
状態:健康
所属:セントラルギルド
クラーク王国・アグノス支部
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()の中は表示されないようである
スキルの項目も無いようである
職業も冒険者・Fとなっている
(出たな、ハイテクマシーン)
「これで登録は完了です」
フワッとボードが光ると、ネックレスが出てきた
「こちらが冒険者としての身分証になります
魔力を込める事で、こちらのボードと同様に表示されます
ご本人の魔力でないと表示されません
無くされますと、再発行に金貨1枚かかりますので、ご注意ください」
「高っ!!
あっ、すみません」
つい声が出てしまった
恥ずかしくなりちょっと赤くなる
「重複して持たないようにするためです
他にも対策はされてますけどね
説明に入ります」
よくある冒険者のパターンであった
「何か質問はありますか?」
「いえないです」
「では説明は以上です
今日より冒険者の一員となります
決して無理せずにお願いします
無理をして滅びた村などいくつもあります
いいですね?」
「はい
よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いしますね
それと、その言葉使いは止めるように」
「ダメですか?」
「悪い事ではありませんが、依頼中は使わないように
特に護衛の依頼を受けた場合、絶対に使ってはいけません
悪人に上下関係が伝わってしまいます」
「なるほど
わかりました」
「では以上です」
「ありがとうございました」
そのままギルドを出て、女の子を探すとすぐに見つかった
向かいの建物のトコにいた
ただ、周りの老若男女が戸惑ってる感じがした
近くと、ヨダレを垂らし恍惚とした表情でちょっと引いてしまった