02話
『ガキィンッ!!』
振り下ろされた剣を間一髪受け止めたゼン
「なんだてめぇは!」
「ガキは引っ込んでろ!」
「殺されたくなかったら、そこをどけ!」
「おい!早くガキ諸共殺せ!」
受け止めた瞬間、静寂が訪れたがすぐさま、盗賊達が騒ぎ出す
「いやーすみませーん
ちょっと道を尋ねたいんですけどー」
場の空気を読む気無し
「ふざけるんじゃねぇ!」
再び剣を振り上げた盗賊
すかさず、盗賊の心臓目掛けて剣を突き刺すゼン
『ドサッ』
呻き声すらあげずに即死した盗賊を見下ろす
「コワッ!盗賊コワッ!!
さて次は誰かな?」
静かに剣を構えるゼン
「や、やっちまえっ!!」
1人の盗賊が声を荒げると他の盗賊達も距離は縮めてきた
「次はあんただな」
と、周りに聞こえないような小さな声で呟くと、持っていた剣をダーツのように、声を荒げた盗賊に向けて放った
『シュッン』
軽く投げたつもりだった剣は、銃のような速度で
飛んで行き、盗賊の頭を粉砕した
勢いは衰えず、たまたま後ろにいた盗賊3人も同様に吹き飛ばし、木を十数本粉砕し、木に貫通して止まった
4人を吹き飛ばした軌道上にもう1人いたが、目の前にいた4人の頭が爆発したかのように無くなり、頭では逃げなきゃと警告が発せられたが、身体も動かず放心状態で偶然にも腰を抜かしため、座るように身体が下がったおかげで、命は助かったが、耳の横を掠り同様に吹き飛ばされ、血を大量に流し悶絶していた
その光景を見ていた他の盗賊達は硬直
木々を吹き飛ばす騒音だけが響いていた
その間、ゼンは武器創造により創りだした弓矢を空に向けて構えた
練り上げた魔力を雷に変え、矢に宿し空に放った
みるみると空高く昇っていく矢は、14本に分離
上昇しきったであろう矢は、落下
14人の脳天に突き刺さった
(ズドォォオオン!!)
まさしく落雷である
バタバタ倒れていく盗賊と寝返った騎士
一瞬にして全滅させたゼンを見つめたウィル隊長
その視線に気づいたゼンは、勘違いされないようゆっくりとウィル隊長の元へ向かった
「えーっと、大丈夫ですか?」
ゼンの目を見続けるウィル隊長
「あのー、聞こえてます?」
「えっ、あっ、す、すまない
傷は大丈夫だ
死にはしないだろう」
「そうですか?
なら、あとは任せていいですか?」
女性達の方に視線を送る
吊られて顔を向けたウィル隊長は
「それはいいが、もう少し待ってくれ
まだ、動けるほど痛みが引いてないのだ」
「おうっそうでした
斬られてましたね」
傷口に手をかざす
手が輝くと、ウィル隊長の身体も輝き、傷口は強く光り、完治した
「おおっ!すまないっ!少年っ!」
バッと立ち上がり、ゼンに握手を求めるように手を差し出す
ギュッと握手を交わす
(背、デカッ!!
さすが、西欧人っぽい人
デケェ〜)
「君は命の恩人だ
我らを救ってくれて、感謝する!」
「いえ、お気になさらず
身体が勝手に動いたとゆうか、なんとゆうか」
と、ハハッと流す
「いや、それでも救われたの事実
私の名は、【ウィル=バーナード】
護衛隊の隊長をやっている」
「僕は、ゼンと言います」
家名は貴族だけかもしれないので、名前だけを告げる
「ゼン君、いやゼン殿
君は有名な冒険者なのか?
ん?」
すごく期待する目を向けるウィル隊長
「殿?
い、いえ、これからなりに行くんです、冒険者に」
「その強さでまだ冒険者じゃないとは信じられん……
しかし、事実なのだろう
さっきから、手が震えだしてきてるぞ」
「あっ、すみません
なにせ、人を殺したのは初めてなので
さっきまでは集中していたのか、何も感じなかったのですが、終わってしまうと………」
「そのようだな
なに、気にする事はない
とりあえず、向こうが片付くまで、ゆっくり休んでいてくれ
終わったら謝礼を払おう」
「えーっとじゃあ、お言葉に甘えて」
(ひとまず、いくらか金があった方がいいしな)
「遠慮するな
当然の権利だ」
一礼し、女性達の元へ走っていった
1人になったゼンは、立っていられず座り込む
(あ゛〜緊張したー
腰が抜けたみたいで、立てないや
吐き気とかはないな
多少なり罪悪感はあるけど、それほどでもないね
見なくてもわかるぐらい、手が震える
きっとひざも笑うだろう)
笑みが出る
(テンプレだとあそこにいるのは、王女か貴族の娘の2択
護衛がいるから、前者だろうな)
「ああー、恐かったー」
両手を上げバタンと寝そべるゼン
(座っとくのもキツいな、力が入らないや)
と思いつつ、2つある太陽が眩しくて目を閉じる
「お〜い、ゼン殿、起きてくれ」
身体を揺らす
「ふぁい」
むくっと起き上がるゼン
半開きの目で周囲を見渡す
ゼンの正面にはウィル隊長
隊長の左に可愛い女の子
その後ろに控えている侍女らしき3人
「すみません
寝てしまったようで」
全員からの視線に慌てて立ち上がり会釈をする
可愛い女の子が一歩前に出て会釈をする
「お気になさらず
私、公爵家が1人
【ルイセ=アグノス=クラーク】と申します」
スカートの裾を摘み、カーテシーをする
(おお〜生で見た!)
顔に出さないよう感動するゼン
「初めまして
ゼンと言います
田舎の出なので、言葉使いや態度など見逃していただけると助かります」
「普段通りと言いますか、公式の場ではありませんし、命の恩人です
そのよう事はいいませんよ」
ニコッと笑うルイセ
「ゼン殿、ルイ様は身分差など気に接してくれる方だ」
「そうですか?
非常に助かります」
「本当にありがとうございました
ゼン様のおかげで生き延びる事ができました」
「ゼン殿、ありがとう」
「ゼン様、次の街まで同行して頂けませんか?」
「すまないが頼む
旅の途中なのは百も承知だが、騎士たちも俺だけになってしまった
これでは、護衛として役に立たない」
「確かに旅の途中ですが、断る理由もありませんし、構いませんよ」
「おお、すまない」
「ゼン様、受けて頂きまして、ありがとうございます
街に着きましたら、命を救われました謝礼と護衛料をお支払いさせて頂きます」
「マジですか!
助かります!」
「ゼン様?
まじですか、とはどのような意味ですの?」
「えっあっ、すみません
地元の言葉です
本当ですか?って意味になります」
「そうなのですね
初めて聞いた言葉ですね
ゼン様は、遠方の国の出身ですか?」
それに答えようとしたゼンは、ウィルに遮られた
「ルイ様、そのように詮索してはなりませんよ」
「あっそうですね
ゼン様、失礼いたしました
お許しください」
「大丈夫です
それより、これからどうするのですか?」
「出発の準備は完了した
これからすぐに出発したいのだが、構わないか?」
「自分は荷物もありませんし、大丈夫です」
「了解した
ではルイ様、出発しましょう」
「わかりました
ウィル、ゼン様、よろしくお願いします」
会釈をして、馬車に乗り込んでいった
「ではゼン殿、後続の馬車にお乗りください
私は、先頭の馬車におりますので、何かあれば連絡を」
「わかりました
よろしくお願いします」
握手を交わし、それぞれの馬車に乗り込んだ