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16 育成科合同実習


私達は今大講堂へと移動中。



今日の授業は他のクラスと合同で実習を行う。



「あ、ルナリア嬢にエメ嬢。こっちこっち」



私とエメが大講堂に入ると手を挙げて私達を呼ぶ人物がいた。



「コームさんとクロードさん。それに、ブリスさん…」



手を挙げて呼んで居たのはコームさんだった。



コームさんの隣にはクロードさんとブリスさんもいる。



ブリスさんを見て私は思わず強張ってしまった。



それに気付いたエメが私の手を握った。



「大丈夫」


そう言って私の手を引いて彼等の元へと向かう。



「今日は、宜しく御願いします」



彼等の前に着くと勢い良く頭を下げた。



「ああ。こちらこそ…」



私の挨拶に応えたのはブリスさんだった。



まさか、ブリスさんから返答が来るとは思わなかったから驚いてしまった。



顔を上げると、ブリスさんは決まり悪そうに頬をかく。



「あー…なんだ。その。エメとリシャール様に話は聞いた。昨日はすまなかったな…」

「い、いえ!エメの事を心配してのことなのでブリスさんの反応は当然の事です。ただ、少しだけでもエメの友人として許して頂けたのなら幸いです」



彼の謝罪に微笑む。


「怒ってないのか?」

「何故ですか?」

「いや、だって不快な思いをしただろう」

「少し寂しくは思いましたが不快とは思っておりませんよ?ブリスさんの行動はエメを大切に思っているからこその言動だと分かっておりますので」



彼は、ただエメを大切に思っているからこそ警戒しただけだ。



それを分かっているから私が不快になったり怒ったりするなど有り得ない。



本当に素晴らしい友人関係だ。



ブリスさんを見ると何故か顔を赤くしていた。



それを見て両端にいたコームさんとクロードさんは肩を震わせて笑いを耐えていた。



…私、何か変な事でも言ったかな?



「ブリス。何か顔赤くない?」

「はっ!?あ、赤くねーよ!」


エメがブリスさんの顔を覗き込むとブリスさんは顔を逸らす。



「「ぶっ」」




コームさんとクロードさんは遂に吹き出して声は出していないが腹を抱えて震えている。



そこで私は気付いた。



ブリスさんはエメが好きなのではないかと。




だけど、エメは恐らく────




「ルナリア?集合かかってるよ。早く行こ?」

「あ、うん。」



エメの声で意識を戻す。



ブリスさん達の方を見ると、コームさんとクロードさんが頭部をど突かれている最中だった。





講師の説明を受けて、実習が始まった。



今日の実習はテーブルマナーだ。



侍女・侍従は主人の身の回りのお世話を主としており、給仕等は執事やメイドの仕事であるが、仕える家柄の階級によっては執事やメイドの仕事も熟さなくてはならない。



今回は長テーブルでの実演。



侍従、侍女の順で給仕を行う。



私にはクロードさん、エメにはブリスさんが給仕についた。




彼等は先程まで戯れていたのが嘘のように綺麗な所作をする。




侯爵家にいた時に仕えていた執事達と遜色ない。



育成科の本気を垣間見た瞬間だった。




「ルナリア。周囲に気を付けて。私も出来る限り注意するけどルナリアの足を引っ張ろうとする者がいるかもしれない」




侍従と侍女が入れ替わり、準備をしている時にエメがそう耳打ちした。




三日後、私達は普通科生徒達との合同授業が行われる。



侍女・侍従は給仕の仕方。



普通科生徒はテーブルマナーの実習として。




その時、今日の実習で誰がどの生徒達のテーブルに付くかが講師達の間で決められる。



しかし、それは育成科に従者がいない場合だ。



普通科生徒と育成科の生徒で主従関係を結んでいる者は合同授業でもその主従関係は行使される。



私は既にディオン様の従者であるから、ディオン様が座るテーブルを任される事は必須。



そこに、後三四人育成科の生徒が加えられるだろうが私を蹴落としたからといって私が外される事はないはずなのだが。



「それは違うわ。ディオン様のテーブルとなると殿下がおられる席。粗相があっては行けないと色々と理由を付けてルナリアが授業自体に出られなくなる」

「それって、何らかの理由で強制的に授業に不参加にさせられるってこと?」



周りに聞こえない程の声量でコソコソと話す。



私の問いにエメは頷いて、周囲に目を向ける。




裏の作業場には侍女しかいない。



エメの後を追って周囲を見渡すと、目をギラつかせた女生徒達がいた。



怖っ…



思わず鳥肌が立つ。




「殿下がルナリアと婚約破棄してフリーになったでしょ?それに、側近の人達も未だ婚約者がいないと来たもんだ。肉食獣達がこぞって競いに来るわよねー」




確かに。



この乙女ゲームに似た世界は前世プレイした設定でも、婚約者がいるのはパトリス殿下ただ一人だった。




その為、悪役令嬢という立ち位置も私一人だったわけだけども。




それに、私と殿下の婚約は破棄されたがどういうわけかアメリーとの婚約が結び直されていない。




アメリーはパトリス殿下のルートに入ったのでは無かったのか…




殿下のルートでは私という邪魔者が消えた事でアメリーと婚約を結び直す。



そして、途中に行われる最後の恋の障壁を乗り越えて周囲に認められ、漸く二人は婚姻する。



それが、未だに殿下も攻略対象者である側近達もフリーとなれば世の女性が放って置くわけが無い。



育成科の生徒から婚約者の位置はかなり厳しいだろうが、不可能というわけではない。



目に止まれば、婚約者とは行かずとも傍に召し上げられる可能性も僅かにある。



その為、育成科の女生徒達は必死に私を蹴落としに来るかもしれない。




私は気を引き締めて授業に臨んだ。

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