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望月りや子の妄想日記  作者: こたつの蜜柑
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1月10日 - 通学路 -

 学校に行くまでの道は、何通りもある。

 推奨されている通学路はあるが、朝は気分的に一番近道と思われる農道を抜けて行く道、夕方は暗くなっても街灯のある住宅街を抜けて行く道、といった具合で好きな道を通って行く生徒が多い。

 私もその一人だ。

 住んでいる周辺は山を切り開いて作られた巨大な住宅街なので、坂が多い。朝が弱い私は、高低差の少ない農道を抜ける道をよく使っている。でこぼこしている舗装のない道は走りづらいが、坂道に心折られる住宅街を抜けるよりは、早く学校に着ける。ゆっくり歩いて約20分、頑張って走って約17分。自転車通学との境目学区の手前なのが、ちょっと悲しい距離だ。

 まあ、自転車通学なんか無かった小学校よりは、通学時間は短くなっているのでましだ。


 珍しく早起きで来たので、近道をする必要はないのだが、何となく農道の方に向かってしまう。

 今朝は今冬一番の冷え込みだとかで、足元の草には霜が降りている。はぁーっと、ゆっくりと息を吐くと、白い息がふわっと広がり消えていく。

 マフラー、コートに手袋。防寒具で完備したつもりでも、むき出しの顔やスカートと靴下ではカバーできない素足の部分には直接冷たい空気が触れる。寒いは寒いのだが、朝の空気は気持ちがいい。

 農道の半分ほどに来たところで、前方に学ランが見えた。

 白い肩掛けカバンを歩みに合わせてヒョコヒョコ揺らしながら行く後ろ姿は、見覚えがある。

 同じ町内の同じ学年の彼は、のんびり白い息を吐き吐き歩いて行く。思わず、歩く速度を落とす。

 普通に「おはよう」と言って並んで歩く仲でもないし、何も言わずに追い抜くには顔見知り過ぎる仲なので、困った。

 近づきすぎないように、一定の距離を保つ。

 行き先は同じなので、いつまでたっても前に彼が居る。

(気づかれたら、どうしよう。……って、普通に挨拶するしかないんだけれども)

 ストーカーとか思われないかな、等と変な心配をしながら農道を抜け、車道に出る。

 細い路側帯を前方の彼も私と同じように、できるだけ道の端に沿って歩いて行く。

 カーブで一瞬姿が消えても、カーブの先でまた現れる。

 見つかるか見つからないか、緊張感を保ちながら進むこと暫し。ようやく本来の通学路に合流する。住宅街に入り、他の生徒の姿もちらほら見えて来る。

 ここまできたら、後ろを歩いていても怪しまれることはないなと、ほっとする。

 歩く速度を戻し、彼との距離が縮まる。

 他の生徒に紛れるようにして、彼を追い越していく。

 気づかれないかどうか鼓動か跳ねるのを自覚しながら、そのまま息を詰めて早歩きで離れて行く。

 もういいかなと、振り向いて確認した時、ふいに彼と目があった気がした。


××× ××× ×××


 朝、のんびり登校できた日なんて、中1の頃ぐらいしか覚えがないけどね。

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