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望月りや子の妄想日記  作者: こたつの蜜柑
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1月9日 - 授業中 -

 国語の授業は好きだ。

 授業が、と言うか物語が好きなのだ。新学年が始まって教科書が配られたら、とりあえず最初から最後まで読んでしまったりする。便覧も物語を楽しむスパイスが詰まっているので、これもまた一緒に読んでしまう。

 文字を追いながら物語の世界に入っていくのが好きなだけで、解釈や作者の気持ち、物語に隠れたメッセージを読み解くと言う授業内容自体はおまけみたいな感覚だ。ただ、先生の薀蓄は聞いていて楽しい。

 ――――これでテストのために板書を写す作業さえなければ、もっと好きなんだけれど。

 国語の教師だけあって、お手本のような綺麗な字で埋め尽くされた黒板を、手元のノートにお世辞にも綺麗とは言い難い字で写していく。時々、色ペンに持ち替えながら、先生の「ここテストに出ます」の部分に色をつける。

 ただの作業にため息が漏れる。早く写し終えて、また教科書の物語に潜りたい。

 窓際の後ろの方の席のせいで、今日のようにいい天気の日は、若干黒板の字が読み取りにくいのも、さらにため息ものだ。

 苦労しながら写し作業を続けていると、ノートから黒板に視線を戻す時に違和感があった。少し、黒板から視線を外すと、斜め前方の席の彼と目があった。

(え?)

 と、思った一瞬に、彼は頭を前に戻してしまった。

(見間違い? 気のせい?)

 平常心平常心、と考えている時点で、どうしようもく意識してしまっているのだが、何とか黒板に意識を戻して作業を再開する。

 だが、しばらくすると、また違和感を感じた。

 斜め前方に視線を向けると、また彼と目が合う。すぐに逸らされるのも先ほどと同じだ。

 気のせいではなかったようだ。

(え? ええ?)

 何なのだろうか? 私がどこかおかしいのだろうか?

 寝ぐせ? それならば、もう昼も過ぎているし、酷ければ友人から指摘されているだろう。

 私の席の後ろの方で何か起こっているのだろうか? それなら他の生徒も注目しそうだが、可能性はゼロではない。

 まさか、気があるなんてことはないだろうし。自意識過剰にも程がある。

 再び、平常心平常心と自分に言い聞かせても、先ほどとは違い、なかなか意識を切り替えることができない。

 何とかかんとか無理やりに意識を黒板に持っていき、作業を続ける。

 けれども、その後も時間を開けては何度が彼と目が合う。

(何なんだ、一体!)

 一瞬しか目が合わないせいか気持ち悪さはないが、意味がわからなくて落ち着かない。

 もう作業どころではなくなってしまった。


××× ××× ×××


 今日も平穏な一日だった。

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