1月31日 - 病人の一日 -
下がりかけていた熱は、昨日の強行軍が祟り、またも38度台に達していた。
やむなく今日も学校を休み、鍋焼きうどんを一人寂しく啜っている。
普段見ることのない昼前の情報番組を観ながら、時間をかけてうどんを食べた後は、やたらと出された薬を白湯で流しこんだ。
テレビと炬燵の電源を切って、水分だけ持って大人しく自室へ戻る。
起きてご飯を食べたばかりの今は、眠気が殆どない。
眠くなるまで読みかけの本でも読もうかと思ったが、寝落ちた時にページや表紙を曲げてしまうのが怖くて、変わりにスマートフォンを手に布団に潜り込む。
適当にスマートフォンをいじっているうちに、薬が効いてきたのか目蓋が落ちてくる。
それでも、しばらくは欠伸を噛み殺しながら画面と睨めっこを続けてみたが、眠気の波に襲われてすぐに撃沈してしまった。
眠りから浮上してもまだ日は高く、随分寝てしまったのかと思ったが、時計を確認すると丁度おやつの時間を回ったところだった。
寝入る前までより身体が軽い気がして、枕元に置きっぱなしになっている体温計を咥える。少しは熱が下がっているかと思ったが、誤差の範囲内くらいしか変わっていなかった。
目を瞑るものの、一旦眠ってすっきりしたのか、目が冴えてなかなか眠れない。
寝るのを諦めて身体を起こす。ベッド際に寄せたテーブルの上に置いておいた、スポーツ飲料のペットボトルを取って、一気に半分ほど飲む。水分が身体に浸透していくのが心地よい。
遅くはなったが、昼ごはんを食べて薬を飲まなくてはいけない。
(面倒くさいなぁ。でも眠れそうにないし……)
布団をはねのけて半纏を羽織って、何か簡単に食べられるものあったかな、と冷蔵庫の中身を思い出しながら階段を降りる。
冷蔵庫を開けると、『昼ごはん 炊飯器のご飯を入れなさい』と書かれたメモが貼ってある鍋が鎮座していた。鍋を取り出して中身を確認すると、細かく刻んだ野菜のスープらしきが入っている。
メモの通り、炊飯器に残っていたお茶碗一杯くらいのご飯を鍋に入れて、火にかける。
せっかくだからたまご粥にしようと、もう一度冷蔵庫を開くが、残念ながら卵はなかった。その代わり、『食べてよし』のメモ付きの焼きプリンを発見した。
温め直した鍋と、とんすい、お気に入りのスプーン、プリンをお盆に載せて炬燵まで運ぶ。
鍋の蓋を取って雑炊状になったご飯をとんすいによそって、冷ましてから一口食べる。中華味が口の中に広がった。卵がなかったのが余計に悔やまれる。
冷ましながらゆっくりと食べ、鍋を空にした後はデザートのプリンだ。
お気に入りのスプーンを一気に底まで入れて、ひと匙掬って口に含む。冷たい塊が、熱い口の中で存在を主張する。固めのプディングを舌で転がすと、カラメルのほろ苦い甘みが口の中に広がる。カスタードの甘みと混ざって、一気に幸せな気分に満たされる。
(あー……。しんどいのは嫌だけど、たまには至れり尽くせりな一日というのも良いな)
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プリン食べたいなぁ、プリン。