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望月りや子の妄想日記  作者: こたつの蜜柑
14/31

1月16日 - 放課 -

評価いただきありがとうございます!

 授業と授業の合間の時間を、世間一般では「休み時間」と言うらしい。

 都道府県それぞれの地域の特色をピックアップし、紹介するテレビ番組が大好きな姉が言うには、私たちが普通に使っている「放課」は方言に当たるとのことだ。

 方言であるとわかっても、やはり自分の中の感覚では「休み時間」より「放課」の方がしっくりくるので、たぶん、授業と授業の合間の時間のことを一生「放課」と呼び続けると思う。


 友だちが少ない私は、放課でも殆ど自分の席から離れることはない。

 体育の着替えや移動教室、たまのトイレ以外は、寝ているか本を読むかである。

 今は特に窓側の席なので、ポカポカ陽気の日は眠気に誘われる。放課は10分しかないので、半分寝ていて半分起きているような状態ではあるが、うとうとするだけでも寝た気になれるから不思議だ。

 さすがに寝顔を人に見られるのは嫌なので、机の上に腕で輪を作り、その輪に顔を伏せる形になる。少々、涎を食わないかが気になる姿勢になってはしまうが、よっぽど疲れていない限りは大丈夫だ。


 そんなこんなで、今日も寝の体勢に入る。冬の窓際は少々冷え込む席でもあるが、良い天気の今日は微睡むのにちょうどいい暖かさだ。

 うとうとと、周りの喧騒を遠くに聞いていると、間近でカサりと紙が擦れる音がした。

 覚醒しきらない頭を持ち上げ、周りを見回す。特にこちらを注視する生徒はいない。次の授業までは、まだ5分もある。そこまで確認して、また再び顔を伏せる。

 しばらくして、夢現に授業開始のチャイムを聞く。

 半分眠ったままの脳みそを頭を振って、何とか起動させる。軽く伸びをした時、何かが机から落ちたのに気付く。足元を確認すると、プリントの切れ端らしき紙切れを二つ折りにしたものが、床に落ちていた。紙切れの発見と同時に先生が入室してしまったので、起立と礼のどさくさに、足元の紙切れをさりげなく拾う。

 先生に指定された教科書のページを開いて、それで隠すようにして紙切れを自分の前に持ってくる。

 ゴミっぽく見えなくもないが、よく密かに回覧されくるメモにも見える。

 先生の様子を窺いながら、こそっと二つ折りの紙を開いてみる。


『好きだ』


 簡潔な文言は、抜群の破壊力で私の平常心を吹っ飛ばした。


 うたた寝で半分動いてなかった頭も、突然の衝撃に妙な高速回転を始める。

(え……何コレ、マジ? イタズラ?)

 宛名もなければ差出人の名前もない。本気の告白だとすれば誰に答えたら良いのかわからない。ただの悪戯だとすれば随分と悪趣味だ。罰ゲームで仕方なくだとしても、人に迷惑かけるのはヤメロ。

 モテない女子に、これは酷くないか――?

 耳が熱く、赤くなっていることを自覚しつつ、微妙な期待を打ち消すようにひたすらこれは悪戯と、見えない犯人にクレームを付け続ける。

 完全に、授業は忘れ去られた。


××× ××× ×××


 無理な姿勢のはずなのに、学校の机は妙に寝やすい不思議。

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