1月16日 - 放課 -
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授業と授業の合間の時間を、世間一般では「休み時間」と言うらしい。
都道府県それぞれの地域の特色をピックアップし、紹介するテレビ番組が大好きな姉が言うには、私たちが普通に使っている「放課」は方言に当たるとのことだ。
方言であるとわかっても、やはり自分の中の感覚では「休み時間」より「放課」の方がしっくりくるので、たぶん、授業と授業の合間の時間のことを一生「放課」と呼び続けると思う。
友だちが少ない私は、放課でも殆ど自分の席から離れることはない。
体育の着替えや移動教室、たまのトイレ以外は、寝ているか本を読むかである。
今は特に窓側の席なので、ポカポカ陽気の日は眠気に誘われる。放課は10分しかないので、半分寝ていて半分起きているような状態ではあるが、うとうとするだけでも寝た気になれるから不思議だ。
さすがに寝顔を人に見られるのは嫌なので、机の上に腕で輪を作り、その輪に顔を伏せる形になる。少々、涎を食わないかが気になる姿勢になってはしまうが、よっぽど疲れていない限りは大丈夫だ。
そんなこんなで、今日も寝の体勢に入る。冬の窓際は少々冷え込む席でもあるが、良い天気の今日は微睡むのにちょうどいい暖かさだ。
うとうとと、周りの喧騒を遠くに聞いていると、間近でカサりと紙が擦れる音がした。
覚醒しきらない頭を持ち上げ、周りを見回す。特にこちらを注視する生徒はいない。次の授業までは、まだ5分もある。そこまで確認して、また再び顔を伏せる。
しばらくして、夢現に授業開始のチャイムを聞く。
半分眠ったままの脳みそを頭を振って、何とか起動させる。軽く伸びをした時、何かが机から落ちたのに気付く。足元を確認すると、プリントの切れ端らしき紙切れを二つ折りにしたものが、床に落ちていた。紙切れの発見と同時に先生が入室してしまったので、起立と礼のどさくさに、足元の紙切れをさりげなく拾う。
先生に指定された教科書のページを開いて、それで隠すようにして紙切れを自分の前に持ってくる。
ゴミっぽく見えなくもないが、よく密かに回覧されくるメモにも見える。
先生の様子を窺いながら、こそっと二つ折りの紙を開いてみる。
『好きだ』
簡潔な文言は、抜群の破壊力で私の平常心を吹っ飛ばした。
うたた寝で半分動いてなかった頭も、突然の衝撃に妙な高速回転を始める。
(え……何コレ、マジ? イタズラ?)
宛名もなければ差出人の名前もない。本気の告白だとすれば誰に答えたら良いのかわからない。ただの悪戯だとすれば随分と悪趣味だ。罰ゲームで仕方なくだとしても、人に迷惑かけるのはヤメロ。
モテない女子に、これは酷くないか――?
耳が熱く、赤くなっていることを自覚しつつ、微妙な期待を打ち消すようにひたすらこれは悪戯と、見えない犯人にクレームを付け続ける。
完全に、授業は忘れ去られた。
××× ××× ×××
無理な姿勢のはずなのに、学校の机は妙に寝やすい不思議。