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望月りや子の妄想日記  作者: こたつの蜜柑
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1月14日 - 着物 -

 1月は着物姿の女性をよく見かける。

 初詣で神社に行けば家族揃ってであったり、恋人や夫婦と2人であったり、母子や女友達とであったり、様々な組み合わせで目を楽しませてくれる。

 その次に多く見られるのは成人式だ。テレビはもちろん、駅や大型ショッピングモールなどでも、艶やかな振袖のお姉さん方に出会うことができる。

 成人式はほぼ全員、初詣は大半が晴れ着なので、華やかな姿をつい目が追ってしまう。

 着物は、七五三の時と小学校中学年くらいまでお正月に着せてもらっていた記憶がある。綺麗なもの好きなので、すごく嬉しかった覚えがある。全て姉のお下がりではあったけれど。おそらく、振袖も姉のお下がりになるのだろう。

 姉とは歳が干支一回り以上離れている。小学校低学年の頃の、姉の成人式を思い出す。あまり派手な柄が好みじゃないと言っていた姉も、「一生に一度の成人式」と説得されて、色味は地味なものを選んでいたが、豪奢な刺繍の入ったものを選んでいた。子ども心ながらに、綺麗な着物を着る姉が誇らしくもあり、羨ましかったりもした。

 今の自分は完全にあの着物に負けている。二十歳を迎えるころには、釣り合うようになっていることを祈るばかりだ。


 ――――まあ、そんなこんなを考えているのも、勉強の息抜きにブラつきに来た商店街で、何人もの新成人とすれ違ったからなのだが。


 そしてまた、目の前を歩いて行く振袖姿を見送りながら、5年後の自分を思い描こうとしてみる。

 たぶん大学生だろうと言う、制服を着てないだけの今のままの自分しかイメージできない。きっと大人びているだろう、という甘い予測はできそうでできない。願わくば、「お付き合い」している相手がいるといいな、とは思う。果たして、自分はどんな大人になっているのだろう。

 未来に思いを馳せながら、商店街の端まで歩く。端には丁度、呉服屋があった。

 ショーウィンドウには、ぱっと目を引く綺麗な振袖が展示されていた。母や姉曰く、最近の「若者受け」を狙った柄ではなく、古式ゆかしい大胆でいて派手すぎず地味すぎない粋な柄だった。

 足を停めて、しばしショーウィンドウの振袖を見つめる。

 振袖の横には、撞木に掛けられた帯が並んでいる。展示の振袖によく合う、豪華な帯だ。

(いいなぁ……)

 もはや一目惚れといっても良いくらいに、心を鷲掴みにされてしまった。

 じっと動けずにいると、ゴホンと咳払いが聞こえた。

 視線だけを動かすと、いつの間にか店主と思しき初老の男性が店先に立っている。

 いくら心奪われたところで、振袖をねだるには早すぎるし、おそらくねだれる価格でないだろう。

 そう自分に言い聞かせ、後ろ髪引かれる思いで来た道を引き返していく。


××× ××× ×××


 着物は好きだけど、昨今のチェーン店に置いてあるのは好みではないな。

 小学校上がる前くらいの頃のが好みだったような気がする。

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