1月3日 - 初詣 -
高架下の駐輪場に着いた時点で、自分の脚力を過信した28分前の己を呪った。
約束の時間10分前に間に合う電車がホームから出ていく音を聞きながら、自転車を空いている場所に押し込み、スマートフォンを鞄のポケットから取り出して次のダイヤを検索する。
次の電車だと、待ち合わせの駅に約束の時間1分前に到着になるようだ。待ち合わせは改札前だから、混んでなければギリギリ間に合う。しかし、今日は正月三が日の最終日。地下鉄への乗り換え1回を挟む上、目的地はこの地域で最も有名な神社の最寄駅だ。あまり楽観はできなさそうだと、肩を落としながら駅へと向かう。
――――せっかくのお誘いなのにな。
どうせなら、待ち合わせ場所に来る人をドキドキしながら待つ、という絶好の機会を堪能してみたかった。
1週間とちょっと前。冬休みが始まって、いつも通り家族での変わり映えのしないクリスマスを過ごしていたら、その人から初詣のお誘いが来た。
着信があったことにもドキッとしたけれど、『初詣行きませんか?』それだけのメッセージに、歓喜と期待で胸が高鳴った。そして、その日の夜はなかなか寝付けなかった。
もちろん、前日である昨日の晩も、早く寝なきゃと思う気持ちとは裏腹に全然寝付けなかった。寝坊こそしなかったが、いろいろ準備に手間取って時間ギリギリとなってしまったのだ。
後悔するくらいなら最初から前もって準備なりしておけ、などと言われてしまいそうだが、そこはそれ、困った乙女心という所を理解していただきたい。
電車に揺られながら、もしかしたら遅れてしまうかもしれないことを知らせるべきか悩み、メッセージを打っては削除する。それを何度か繰り返しているうちに、乗り換えの駅に着く。
思ったより人は多くなく、すんなりと約束時間の1分前に着く電車へ乗れそうだと安心したところで、手に持ったままのスマートフォンが震えた。
『到着。改札付近にいます』
時計を確認すると、約束時間の5分前だ。本日2度目の呪いを自分に掛けながら、約束時間ギリギリになるお詫びを返信する。
さらなる返信はないまま、目的の駅に着く。
ホームへ降り改札へと向かいながら、昨夜ドキドキとワクワクで目一杯膨らんだ心が、シュルシュルと萎んでいく。呆れられていないか、不安になってきたのだ。
階段を上りきり、改札付近を見やる。そこに、人待ち顔で待っている君がいた。
ポッと、胸に温かい何かが咲いた。
手を振ると、君は私に気付き、笑顔で手を振り返してくれた。
××× ××× ×××
そんな相手がいたらいいな、って参拝の行列で待っている間に、スーちゃんと盛り上がった。