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モンスターの小競り合い

横になりながら目をつぶり考えごとをしていた。


この異世界のことは勿論だが現実世界の事も心配になってきた。


太一をそのまま残して外に出てるからそのまま朝になったら大事件だ。


都合よく祖父母が朝、太一を保育園に送る約束をしているので最悪の事態は防げるが・・・・・・


考える度冷や汗が出てくる。


時間が惜しい。


こんな所に閉じ込められてる場合じゃない。


俺は立ち上がり鉄格子の近くまで行く。


イルとコウモリのうるさい声は聞こえるが戦況はどうなっているかと覗くと


「こんにゃろ、こんにゃろ」


イルがいつもの攻撃を繰り返している。


コウモリは翼を広げクロスして防御している。


だがコウモリは嫌がっている。


「待て待て、翼が傷むから」


近くで見るとイルよりもサイズが小さく勢いよくイルが当たるとコウモリがよろける。


良い角度で入ったのかコウモリが悲鳴をあげる。


「ぎゃあああああっ、つ、翼が歪んでるうぅぅ」


イルは楽しくなってきたのか攻撃をやめない。


「こんにゃろ、こんにゃろ」


全方位から、体当たりを繰り返す。


「イル、パパのやくにたつのー」






この展開ならイルが勝つかなと思ったがさっきまでうるさいぐらい叫んでいたコウモリの声が止まり静かにイルを防御しながら見ている。


ボクシングのカウンターを狙っている感じがした。


確かに狙いは良いと思う。


イルの体当たりは一定のリズムでぶつかってくるしタイミングは取りやすい。


案の定コウモリのカウンターは成功する。


イルが飛び出し体当たりをした瞬間クロスしていた翼を広げ横薙ぎで翼を撃ち込む。


自分の胴体よりも広く大きい翼はイルのボディに食い込み勢いよく吹き飛ばす。


そういえばふと疑問に思ったのがイルに打撃って有効なのか?


吹っ飛ばされたイルの方を見ると。


イルは呆然(ぼうぜん)としていた。


そして、泣いた。


「パパああああっ、こわいのー」


ダメージというよりは突然翼がボディにあたりびっくりして泣いてる感じだ。


そうなるとイルは打撃無効なのかな。


考えているとイルは俺にすごい速さで近づき足から俺の頭部まで登りさっきのニット帽に姿を変える。


「パパあぁーイルあのねがんばったの」


やっぱりこうなったか。


俺はコウモリの追撃が来るかと身構える。


あれっ襲ってこない。


この鉄格子もたぶんコウモリのサイズなら通れるはずだが。


足音を立てずにゆっくりと近づくと


コウモリも泣いていた。


「うううっ、人間見ろよ!この美しい翼に傷が付いて・・・・・・どう責任とるんだよー」


何だこいつ。


なんか面倒くさい予感がする。


「俺は、その久しぶりの人間だったからさ、からかってやろうかなって、あと美しい翼を見せつけようと思っただけなのに」


「いやいや、コウモリお前にも非があるだろ、なんかさ終わりだとか言ってたじゃん」


コウモリは泣きながら


「ぐすっ、キングデビルバットだから、俺は普通のコウモリじゃないから」


と、何故か名前の方を否定する。


「わかった、じゃあ長いから省略してバトにしよう、もう泣くなよ」


「うええっっ?んっ名付けてくれるのか?」


バトの涙は止まり俺をジッと見てる。


あれっ、この展開前に見たぞ。


バトは翼を広げ羽ばたき鉄格子の隙間を器用にすり抜け俺の肩に止まる。


「人間、名前は?」


「えっ、(りつ)だけど」


「律か、これからは美しい翼を持つバト様が付いているから心配するな守ってやるぞ」


上から目線で翼を広げたり閉じたりしてご機嫌だ。


バトの翼が頬に当たって痛い。


名付けると仲間になるのは半信半疑だったがイルの前例もあるし。


そう考えてると頭に装着されている呪いのニット帽が震えだす。


「イルいやだこわいー」


まあ俺も仲間になって欲しくて名付けた訳じゃないし、イルもそうだけど。


非常に断りづらいが


「バトさ、悪いけど・・・・・・」


バトに目線を向けると、今度は恥ずかしがっているのか目線を合わせようとしない。


「べ、別に律が来なくてもいずれ外に出る予定だったし、時期が早まっただけだし、寂しかった訳でも無かったし」


「いや、悪いんだけど」


「まぁでもこの機会も悪くないな、ちょうど退屈してたし、陽の光浴びたいし」


バトは聞く耳をもたない、あと早口でうるさい。


どうすれば聞いてくれるかと考えていると


「お前ら楽しそうだな」


聞き覚えのある声の方に目をやるとあの憎い銀髪が鉄格子前に立っていた。


銀髪の手には俺の携帯がある。


俺は鉄格子から少し離れ身構える。


銀髪は鉄格子に手を掛けポケットに入っていた鍵を取り出し鉄格子を開く。


「良かったな、俺の嫁がこの機械の持ち主に会ってみたいってさ」


銀髪はそう一言話し付いて来いと誘導する。


そして俺は時期に知る事になる。


これは、俺の物語ではなく嫁の物語だという事を。

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