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情報が欲しい

イルは俺にこの世界の事を説明してくれた。


「それでね、あのね」


多分俺に嘘などは教えてないだろう。


「こんなおおきいひとがいてね、あのね」


結論から言うとイルはこの世界の事を何もわかってなかった。


ただ来た冒険者に体当たりを繰り返していたということ。


イルの冒頭の話は全て違ったが最後のオチは全て一緒だった。


あと、あのね、あのねが多くて聞くに耐えられなかった。


「パパぁぁきいてるの?あのねイルはそれでがんばったんだよ」


「わかった、イルはすごいなぁーもうわかったよ」


早めに切り上げにかかる。


「ダメだよ、あのねイルしゃべる」


駄目だった。


これ無限ループじゃん。













果てのない繰り返しを経て満足したのか


「イルすごいのよー」


と、ピョンピョン跳ねる。


ようやく終わったとひと段落していると


ガサッ ガサッ


奥の茂みから音が聞こえる。


イルも気づき俺にピッタリと震えながらくっつく。


さっきまでの武勇伝は何だったのか。


音はどんどん大きくなる。


よく考えると俺は異世界のモンスターのことは全然知らない。


っていうかイルしか知らない。


もしお決まりの凶暴なウルフだったりゴブリンだったり意思疎通ができないモンスターだったら。


もう今から隠れても遅い。


こうなったら玉砕覚悟で立ち向かうしかない。


「来るぞイル!」


「ががが、がんばるのぉ」


茂みから現れたのは・・・・・・



















ブタだった。














自然と笑みがこぼれ異世界でも現実と同じ動物がいる事で少し安心した。


近くに養豚場でもあるのかな。


現実世界でもブタを近くで見る機会なんてないから少しだけ興味が湧き近寄る。


イルも興味が出たのか俺から離れて移動する。


「イル、あんまり近づき過ぎるなよ」


どうやら鼻を使って草や木の根っこなどを食べてるみたいだ。


イルはその食事に興味津々で近づき過ぎたばかりに事件が起きた。


「パパぁぁあああああっっっ!」


イルは好奇心旺盛なブタに捕まり身動きが取れずにいた。


「はやくたすけてええぇええ!!!」


ブタもイルは初めて見るのか出っ張りのある鼻を勢いよく押し付けて匂いを嗅いでいる。


鼻を離した瞬間イルもすぐさま離れようとするがブタの方がスピードが早くすぐに追いつかれ、また鼻を押し付けられる。


「パパあああー、はやくぅぅ!!!」


俺はブタをイルから離すためブタを持ち上げる。


全然持ち上がらない。


なんだこれは嫁と同じで持ち上がる気がしない。


ブタってこんなに重いのか。


「パパあああー!!!」


ブタを抱えるのは諦めて鼻が離れた瞬間にイルだけ掴み救出する。


すごい匂いだ。


汚いのですぐ地面に置いた。







イルは泣いていた。


あれだけ自分を語りアピールしていたのにまさかブタに敗北するなんて・・・・・・


っていうかイルが勝てる相手なんているのか?


少し助けるのも遅かったし一応謝っとくか。


「イル助けるの遅れてゴメンな」


「・・・・・・」


「イル?」


「うるさーーーーい」


イルは怒っていた。


そしてパパが全部悪いと責任転嫁し罵声を浴びせ続ける。


満足したら今度はブタの方に向かい後ろに回り込み、お尻の方に体当たりを繰り返す。


「こんにゃろ、こんにゃろ」


イルはなかなか辞めずにブタもそれほど気にはしていない。


もういいだろうとイルをブタから引き離そうとする。


「おい、また匂い嗅がれるぞ」


「イル、あのね、やめないんだよー」


こいつマジで止める気がなさそうだ。


「こんにゃろ、こんにゃろ」







あ、いいことを思いついた。


息子の太一に使っているやり方だ。


「じゃあ置いて帰るわ、バイバイ」


イルの攻撃がすぐに止み


「えー、イルやめる」


単純だなぁ。


今度からこの手を使おう。


よし、これでやっと探索が開始できると思った矢先


「お前ここで何してる?」


振り返るとそこには銀髪の好青年がそこにいた。


年は若そうで10代後半20代前半ぐらいかな。


事の顛末を話そうと近寄ると、すぐに相手が距離を詰め胸ぐらを掴まれたまま地面に叩きつけられる。


「がはっ!」


急な事だったので受け身も取れず意識がもうろうとする。


爽やかな外見で判断してしまった。


胸ぐらで掴んでいる彼の手には恐ろしいほどの力が込められている。


イルの事が頭にすぐ浮かび出来るなら逃げて欲しかったが残念なことに声が聞こえる。


「こんにゃろ、こんにゃろ」


銀髪はイルを残った片方の腕であっという間に捉え俺と一緒で地面に叩きつける。


「パパぁぁ」


銀髪がイルの声を聞き俺の方を見る。


「お前魔物使いか?なら少しの間は生かしといてやるが」


魔物使い・・・・・・イルを見て判断したとは思うが俺自身どうなんだろうか、イルが特別なだけという気はするが。


ただ受け答えを間違うことは出来ない。


「あ、ああそうかもしれない、ただ俺はこの世界に来たばかりで本当に何もわからない状況なんだ、何か気に触るようなことがあれば謝るよ」


と、正直に話した。


「異世界転移か・・・・・・」


銀髪は少し考え込み、ならばそれを証明する物を出せと告げる。


俺はポケットに入ってる携帯を取り出し銀髪に渡す。


流石に異世界なら携帯なんて無いのがお決まりだろうと思い渡したがこれが通用しなければ打つ手はない。


銀髪は携帯を見てもあまり反応しない。


これはまずいか?


「お前・・・・・・何故うちの嫁と同じ物を持っている」


予想の斜め上をいく解答だった。


「危険だな」


急に首筋に鈍器のような物で殴られたような激痛が走った。


このまま終わりなのか・・・・・・


イルは無事逃げてくれと願いながら俺は意識を失った。

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