前置きと切ない願い
伊坂 律は嫁と出会うまでは趣味の無いつまらない男だった。
仕事はマイペースにこなし人当たりが良く、時には失敗もするが悪く言う人は一人もいなかった。
煙草やギャンブルもせず酒は嗜む程度、お金は老後のことなど考えてほぼ貯金していた。
仕事が休みのときは布団から出ず、よく一日を過ごしたものだ。
まぁ昔の話だが完全にインドア人間だった。
・・・・・・嫁と出会ったのは職場で派遣社員として入ってきて、とても行動力のある人だった。
全ての出来事という訳ではないが基本即断即決で迷いなく行動する。
それは仕事中でも休日で会社の同僚と遊びに行く時も。
そんな性格がまるで俺と違う彼女に惹かれていたのかもしれない。
あっ、ちなみにこの時点では嫁は普通体型でした。
付き合う事になって最初のうちはどんな要望も聞いていろんな有名なスポットに二人で行っていたのを割と鮮明に思い出す。
嫁の行きたい場所は県外が多く休みが重なる度よく遊びに行き、キャンプだったり海に行ったりとインドア派の俺にとっては結構辛い時もあったが彼女と一緒で彼女が笑っていればそれで充分だった。
ご当地グルメが好きでよく旅行本やネットのグルメガイドなどを巧みに駆使し限られた時間でどう回るかよく計算してた。
行きたい場所が周辺に密集しているときは、時間短縮で車で食べれる物は大量に持ち帰って車内でよく食べており俺も一口貰おうかなと思ったらもう無かったりと、ブクブクに太らないか心配でしょうがなかった。
どうして、あの時止めなかったのだろうか。
因みにこの時点でぽっちゃり形態へと進化していた。
付き合ってしばらくしてお互いの性格もわかり嫁の実家にも遊びに行ったりトントン拍子に事は進み結婚した。
結婚するとわかるがとてもお金がかかる。
嫁は式を挙げたがっていたし結婚式を盛大にしたら貯金の大半を失った。
これなら婚約指輪をセーブすれば良かった。
金銭面は幸せの代償だから後悔は無い。
結婚して子供が出来ると嫁って太るよと友人に言われ、まさかこれ以上は無いかなと思っていたがそんな認識は大甘だった。
結婚前はまだ序の口だった。
結婚して子供ができたら相撲取りになっていた。
勘違いしないで欲しいのは俺は嫁が嫌いなわけじゃ無い、面倒くさくワガママな性格も含めて好きなんだがデブ専ではない。
そこだけわかって欲しい。