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「自分」と限りなく等しいものを亡くし、彼女は抜け殻のように虚ろな日々を送っていた。あの人がいない世界に生きる意味も価値もない。それが口癖となっていた。
それでも時間は容赦なく進んでいくのだから残酷だ。臆病な彼女は結局生きるも死ぬも選べず、死にたい死にたいと繰り返し唱えながら息をしていた。
ある日ふらふらと歩いていた彼女は、ふと足を止めた。路上で男の人がギターを片手に歌っていた。路上ライブというやつだろうか、彼女はテレビ以外で初めてその光景に出会った。全部がどうでもよく希薄になった毎日にそれは物珍しく、何となく近寄って聴いた。観客は彼女一人きり。
つま弾かれるギターの音色は寄り添うように優しく、少し低めの声はしかし透き通っていてぬくもりがある。何となくだった彼女はやがて真剣に聴き入り、そして最後にはしゃがみ込んで泣いた。あの人がいなくなってから流す、初めての涙だった。深淵に染み込んで、じわじわと何かが溶けていく。
「だ、大丈夫ですか……?」
涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げると、ギターの青年が演奏をやめておろおろと心配そうに彼女を見ていた。
彼女は笑った。上っ面ではない、湧き上がるように自然と顔が綻んだ。
「いい歌ですね」
それが、彼女と彼の出会いだった。




