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幸福屋奇譚  作者: 峰村尋
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CASE1:歌う少女と飴玉青年 1

雪も降らなくなって久しく、ようやく季節の巡りを肌で感じられるようになってきた。

時たま吹く強風に煽られる以外は、まあ過ごしやすい時節になったと言えるだろう。

時刻は昼。目覚めた草木が新芽を膨らませる公園で、一人の青年がベンチに背を預けてだらーっと体を弛緩させていた。

鳥が寝床としてこしらえたようなボサボサの黒髪、ロゴなのか紋様なのかよく分からない奇妙なデザインのシャツにジーンズという、オシャレを何かと履き違えたかのような独特の着こなしでありながら、妙な一体感を醸し出すこの青年。名を渡良瀬(わたらせ)(ひかり)という。

傍らには手提げ鞄一つ。何が入っているのかというと、自作のアクセサリーがいくつかと大量の飴玉である。

アクセサリーの方は、そこいらの店で良さそうな素材を見繕っては手先の器用さを生かして加工し、電子ネットワークを活用して売り捌くという職業(?)柄から鞄に入っていても不思議はないが、飴玉に関しては量に問題がある。比率で言えばアクセサリー一割飴玉八割その他一割といったところか。

どうしてそんなに飴玉ばかり所持しているのかというと、勿論彼自身が甘露を好んでいるという事も大いにあるがもう一つ、とある人物のご機嫌取りに使うためである。

「くはぁ」

欠伸が出るほどいい陽気だ。昼寝という単語が脳裏を過ぎる。

見回しても辺りに人影なく、待ち人来る兆しなし。しかしながら、このまま瞼を閉じて真昼間から寝顔を衆目に晒すには流石の青年にも抵抗がある。かといって寝床に戻る訳にも行かぬ。

取引の一つでもあれば違ったのだが、鞄に入った残り一割は無音を貫き、その内で閑古鳥を養っている。

はてさてどうするか。

起きているにもやることは無く、寝るには日が高すぎる。

まったくもって心底どうでもいい悩みである。青年自身がそう思うのだから異論の余地はない。

「くぁ……はぁ」

本当に、欠伸が出るほどいい陽気だ。


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