表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幸福屋奇譚  作者: 峰村尋
1/4

CASE1:歌う少女と飴玉青年 〜プロローグ〜

私は歌う。

「~♪」

元々は気晴らしだった。

とても嫌なことがあって、ぶつけ所も分からなくて、自棄になって、駆け込んだ公園で大声を出した。叫んで、叫んで、叫ぶのに飽きて、歌った。

歌詞なんてうろ覚えだったし、叫んだ喉が痛くて音程だって怪しかった。

だけれども。

そんなボロボロの歌声を、聴いていてくれた人がいた。

歌うのにも疲れて座り込んでいたら、『変な歌だな』と言って頭を撫でられた。

その手のひらがなんだか温かくて、気が付いたら涙が出た。涙を意識したら止まらなくなって、声を出して泣いた。

するとあの人は慌てて、私をなだめようとわんわん声を上げる口の中に飴玉を押し込んできた。

酸っぱい、レモン味。

びっくりして泣き止んだ私に、あの人は苦笑いを浮かべて『次はいい歌を聴かせてくれ』と言って飴玉の詰まった袋を押し付けて去っていってしまった。もしかすると、変な歌だと言われたから泣き出したのかと思ったのかもしれない。

それから二日後、公園に行くとあの人がいた。

ベンチに座って本を読んでいて、私と目が合うと手を挙げて挨拶をしてくれた。

私もベンチに座って、自己紹介をした。

なにか話そうとしたけど、なにも出てこなくて、あの人もなにも聞いてこなくて。

困った私はあの人が言った言葉を思い出して、歌い出した。

今度はちゃんと歌詞を覚えている歌を歌った。音程にも気をつけた。緊張したけど、なんだか気持ち良かった。

歌い終わるとあの人は『いい歌だな』と言って頭を撫でてくれた。

「〜♪」

私は歌う。誰の為でもなく。

ただ、届けたい想いがある。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ