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第二話「覚醒夢? 二人目三人目」

 時間は少し遡る。


 秀樹が変な夢を見ているのと同じ時刻に友人の野方栄二のがたえいじも同じような夢を見ていた。


 栄二と秀樹は小学校からの友達だ。

 アニメ好きという事もあり直ぐに仲良しになった。


 デブな秀樹と違いガリガリな栄二はガイコツやポッキーなどと渾名を付けられて女子に避けられていた。

 当然現実の女に興味は薄れていき秀樹と同じくアニメキャラに夢中である。

 秀樹が体を鍛えて見かけだけは普通になったのと違い栄二はガリガリのままで典型的なひょろっとしたタイプのオタクそのものだ。


 ガリガリオタの栄二の周りにも草原が広がっていた。


「夢の中か…… 」


 頭の良い栄二は直ぐに夢の中だと気がついた様子だ。


「夢なら僕の願いもかなうはず…… 」


 草原をキョロキョロと見回し始めた。

 何かを探しているようである。


「猫耳に犬耳にウサギでもいい、妖狐でも狸でもいいから可愛い女を思い浮かべて夢に出すんだ。獣少女を想像するんだ。猫娘に狐姉さんに狼女を…… 」


 キョロキョロするのを止めて目を閉じて考え始めた。

 自分の好きなアニメキャラを思い浮かべて必死に呼び出そうとしている。


 考えている事は秀樹と同じだ。

 夢の中でアニメの女の子とエロい事をしたいのだ。


 おっぱい好きの秀樹と違い栄二は猫娘や狐姉さんを思い浮かべている。

 栄二は特殊な性癖というか動物と人間が混じったような姿の女が好きなのである。

 人間では無いが人間に近い女の子が好きなのだ。

 俗に言う人外好きというヤツだ。


「ドラゴンのカンナちゃんにケモ耳少女や魔法少女を……ペリーヌちゃんやエーリカちゃんを撫で撫でモフモフしたい、バックから…… 」



 目を閉じて叫ぶ栄二の肩を誰かがポンポンと叩いた。

 ビクッと震えると同時に栄二がバッと振り返る。


「 ……なんで? 天使はいいけど何で男なんです? 」


 目の前に立つヘカロを見て直ぐに天使だと分かったのは流石人外好きである。

 ヘカロが話し掛ける前に栄二はまた目を閉じた。


「天使が出せるなら猫娘や狼少女も出せるはずだ…… 」

「 ……君もか? 少し話しをしたいのだが」


 天使ヘカロがまた栄二の肩をポンポン叩く、

 栄二はぐっと目を閉じたままでこたえる。


「帰ってください、僕はイケメンの天使じゃなくてサキュバスの方がいいです。エルフでもいいですがどっちかというとダークエルフの方がいいです。だから帰ってください」


 夢の中だ。

 ヘカロを自分が出したものだとしか思っていない。

 困った顔をしてヘカロが話しを続ける。


「そんな事をしても何も出てこないぞ、ここは確かに夢の世界だが栄二くんの夢ではなくて神様が作った世界だからな」

「神様の世界? 」


 目を開けると栄二は疑うような顔でヘカロを見つめた。

 天使ヘカロが神様のゲームの事を説明する。


「つまりゲームに勝てば本当に願いがかなうんですね、当然参加しますよ」


 頭のいい栄二は直ぐに理解した様子だ。



 詳しい話は後日するといって天使ヘカロは大空へと消えていった。


 ガバッと飛び起きるようにして上半身を起こすといつもの自分の部屋だ。


「夢か……妙に現実味のある夢だったな」


 栄二が肩を摩る。

 ヘカロにポンポン叩かれた感触がリアルに残っていた。


「まだ六時半か、後三十分は寝られるな」


 そのままベッドに転がって二度寝を始める。

 もう草原の夢は見なかった。




 二人と同じ頃、城道恒夫じょうみちつねおも同じ夢を見ていた。


 恒夫は二人とは中学からの友人である。

 濃いオタクの二人と違い恒夫は軽いオタクだ。

 アニメは好きだし漫画やフィギュアも持っているが原作の小説や製作しているスタッフなどにはあまり興味は無い、声優も殆ど知らないというタイプである。


 背が低く老け顔で頭の薄い恒夫はチビハゲもしくは小さいおっさんと呼ばれていた。



 六畳和室の自分の部屋で眠ったはずの恒夫も気が付くと草原に立っていた。


「ここは……中学の時に処分に困ったエロ本を捨てた山……じゃないな、時々野外オナニーをしに行く河川敷……でもないか、とすると夢しかないな、夢は己の心を写すというが流石俺だ。この澄んだ空気に生命力溢れる緑、清々しい俺の心そのものだな」


 言いながらシャツを脱いでパンツ一丁になっていく。


「 ……夢なら俺の思い通りになるはず。女王様ぁ~このハゲミニブタに折檻を……縄で縛って鞭で思う存分叩いてください、あとは美少女の黄金水を全身にかけてくれぇ~~ 」


 パンツ一丁で空に向かって大声を出す。


 頭の中でボンテージ服を着た年上の女王様やオシッコを我慢して頬を赤く染めたアニメキャラの美少女を思い浮かべて夢に登場させようと必死で叫んだ。



 ヘンタイである。

 確かにオタクだが秀樹や栄二と方向が違う、どちらかというとヘンタイ成分の方が濃い。


「夢ならかなうはずだ。女王様を出してこの緑の牧場で三角木馬のお馬さんごっこだ。美少女も出そう、秋山優花里ちゃんや麻子ちゃんにそど子ちゃん……この清々しい草原の中でみんなの黄金水シャワーで朝シャンだ。俺の夢がかなうんだ」


 叫びながら恒夫が走り出す。


「股間のウナギさんチームが荒ぶるぜ、パンティーフォ~~!! 」



 パンツ一丁で走り回るヘンタイ妄想全開の恒夫の前に大空から天使ヘカロが降りてきた。


「 …………。 」


 何でパンツだけなのだ? 

 秀樹くんも栄二くんもジャージを着ていたのだが……パンツ1枚で寝ていたのか?

 いや違う、シャツが捨ててある。

 ここで脱いだのか、なぜだ?


 ヘカロの顔色が悪い、緊張して強張ったような表情だ。



「あれは? 」


 降りてくるヘカロを見つけた恒夫の顔も驚きに固くなる。


「飛んできた……男が……俺が出したのか? 男か? 男………… 」


 自問するように呟くと険しい表情のまま考え込む、


 男……女王様でも美少女でもなく男が……。

 アニメの姉ちゃんじゃなくイケメンの男が……俺はそっちの気もあったのか……、


 やるか? やらないか?


 これは夢の中だからな、

 痛ければ目が覚めるだけだしここは一つ経験しとくか……、

 天使ヘカロを爪先から頭まで嘗めるように見ていた恒夫の考えが纏った。



 バッとパンツを脱ぐとお尻を向ける。


「よしっ、バッチ来い、やってやるぜ、カモンベイビィ~ 」


 ヘカロの目の前で意外に綺麗なお尻がプルンと揺れる。



「何をするつもりか!! 何を! 」



 冷静沈着なヘカロが大声で怒鳴った。


 パンツ一丁姿でも充分にヘンタイなのに其の上全裸でお尻を向けている。

 ただ尻をこちらに向けているのではない、

 両手でむんずと掴んで広げて穴を見せていた。

 恒夫が何をしようとしているのか天使ヘカロにも一目で分かっただろう、


「ナニをするに決まってるだろ、お前は俺が呼び出した肉奴隷なんだからな、遠慮はいらん思いっきり突いてくれ」


 プリプリと振る恒夫の尻をヘカロが蹴り飛ばす。


「だれが肉奴隷だ! 」

「はうぅっ!! 」


 蹴り飛ばされて前につんのめっていた恒夫がガバッと起き上がる。


「そっちのプレイか……女王様じゃないけどまあいいか、ロープや鞭を出して思う存分折檻してくれ、汚いハゲミニブタと罵ってくれ」


 恍惚の表情を見せる恒夫の前でヘカロが気持ち悪そうに顔を引き攣らせる。


「何を……本物のヘンタイだな、私はそんな気はない、話しを聞け」


 恒夫がパッと顔を明るくする。


「話!? 何の? エロい話か? 」

「誰がエロ話しをするか! 取り敢えず服を着ろヘンタイめ!! 」


 怒鳴るヘカロの前で恒夫が脱ぎ捨てた服を拾う、


「何怒ってんだよ、ケツの穴の小さい男だな……締まりは良さそうだけどな、えへへ…… 」



 ニヤつきながら恒夫が服を着るとヘカロが神のゲームについての話しを始めた。


「なんだ俺のエロい妄想で出てきたのじゃないのか、エロい事が出来ると思ってたのに……せっかくだからヘカロさんさえよければ一発やっていってもいいぞ」


 話しを聞き終わった恒夫がスルッとパンツをずらす。


「何がせっかくだ! 私はそんな気は無い、参加するかしないか早くこたえろ」


 ヘカロが問答無用で尻を蹴り飛ばした。


「秀樹と栄二が行くなら俺も行くよ、あいつらだけじゃ頼りないからな」


 蹴り飛ばされ倒れたままで恒夫がこたえた。


「ヘンタイのお前が何の役に立つかは知らんが了解した。後で連絡するから待ってろ」


 秀樹や栄二のときと違いあからさまに嫌悪を顔に出すとヘカロは飛んで消えた。



「ふぅーっ、危なかった。やっぱ初めては女王様に突かれたいもんな」


 ヘカロの消えた空を見上げて一人呟いた。


 恒夫はゲイではないヘンタイだ。

 バイセクシャルの気は少しあるかもしれないがヘカロにお尻を向けたのもヘンタイの興味からである。




 暫くして恒夫がベッドの上で目を覚ます。


「 ……変な夢だな、いやにハッキリ覚えてるし……天使ヘカロか……ああいうのが意外とチンチンでっかいんだよな」


 横になったままニヤりとほくそ笑んだ。

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