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スゴロク スゴくロクでもないゲーム  作者: 沖光峰津
第二章 神様のゲーム
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第十六話「休息」

 帰ろうとした天使ヘカロを秀樹が呼び止めた。


「今日これからと残りの二日は休みでいいんですよね、村に泊まれそうもないから近くの町に行きたいんですけどいいですか? 」

「町に行くのは構わない、だが今から四日目の昼にはこの場所にいないとルール違反でゲームオーバーだ。一番近いモカの町まで歩きだと片道三時間もかかる……ゴーレムを手に入れたんだったな、ゴーレムに乗っていけば一時間ほどでつくだろう、私だってここでゲームオーバーなどしたくないので集合時間には遅れないでくれよ」

「了解しました。俺たちもここで終わらす気なんてないですからね」


 くれぐれも遅れるなよと再度念を押すと天使ヘカロは帰っていった。


 チャラ男たちが村へと戻っていく、彼らは祝杯の宴で残り三日を楽しく過ごすのだ。

 栄二がゴーレムの小石を転がすように地面に投げた。


「ゴーレム出て来い! 」


 小石が白く光って大きくなっていく、光が消えると大きな人の形をしたモンスターがいた。

 大きさは3階建てのマンションくらいで茶色い岩で出来ている。


 出す時に大きさを指定しなかったので一番大きなサイズで出てきたのだ。

 ゴーレムは出す時にS・M・Lのどれかを指定しなければいけない、Sが2メートル、Mが5メートル、Lが10メートルの3サイズで微調整は出してからする事が出来る。


 予想以上の大きさに秀樹が困惑顔だ。


「でかすぎるぞ、もう少し小さくしろ」

「ゴーレム小さくなれ……もう少し小さくだ。それくらいでいい」


 栄二が命じるとゴーレムは小さくなっていく、5メートルほどになると止めた。

 四つん這いにして秀樹たちがその背中に乗る。

 軽トラックと同じくらいの大きさだ。


「荷物は大丈夫だな、忘れ物ないな? じゃあ出発だ」


 秀樹の掛け声でゴーレムが四足で駆け出した。

 一時間ほど走って町に着く、


「小さい町だな……カジノあるかな? 」


 恒夫がゴーレムの上に立って町を見渡す。

 隣りにいた栄二は乗り心地の悪いゴーレムに酔ったのか青い顔だ。

 秀樹がお尻を擦りながらゴーレムから飛び降りる。


「とりあえず宿を探そう、お尻痛いから少し休もうぜ」

「恒夫早く降りてよ、ゴーレム仕舞うよ」


 栄二も降りるとゴーレムの上で立っている恒夫を見上げた。


「カジノは無くても野宿よりマシだな、女の子とは遊べるだろうしな」


 ぽんっと跳ねるように恒夫が降りてきた。

 バイクに乗り慣れている恒夫は二人と違ってゴーレムに乗っても疲れは無い様子だ。


「ゴーレム戻れ! 」


 栄二がゴーレムを小石に戻すと秀樹たちは町へと入っていった。



 一泊一万ギギルの高級な部類に入る宿に決めた。

 この世界で安宿を使うという考えはもう無い、チャラ男たちのように盗みの被害に遭わないためでもあるが恒夫がカジノで稼いでくれたことが大きい、それに今回はゴブリンの所から持ってきた三十万ギギルがあるので思い切って高級な宿にした。


「水だけじゃなくてお湯もちゃんと出るぜ、流石高いだけあるな」


 恒夫がシャワールームから出てくると新入社員が着ているスーツのような服に着替える。

 スタート地点の町で買った服だ。

 カジノに行くためである。

 宿を探すときにカジノがあるのを聞いていた。


「ベッドもフカフカだぜ、変な匂いもしないしな」

「これなら気持ち良く眠れそうだよ、安宿じゃ眠れないで逆に疲れるかもしれないね」


 秀樹と栄二はゴーレムに乗ったのが堪えたのかベッドに横になっている。

 二人が休んでいる間に恒夫は荷物を整理して大事なものを隠すように分散して仕舞った。

 高級宿だが窃盗が無いとは考えない、恒夫は変に用心深いところがある。


 しばらく休んでから三人は町へと繰り出した。

 時刻は夕方だ。


「じゃあ一稼ぎしてくるぜ、今日は様子見だから期待するなよ」


 夕食をおえると恒夫がカジノへ消えていく、秀樹と栄二は女の子のいる店に向かった。

 恒夫は深夜に帰ってきた。

 様子見と言っていたが百万ギギル稼いでいる。

 これで手元にある分と合わせて三百万ギギルだ。


 先に帰っていた秀樹と栄二が楽しそうに自分たちの事を話し出す。

 女の子のいる店でたっぷり遊んだ話しを恒夫は嫌というほど聞かされた。


「人が疲れて稼いでる時に……明日はカジノで稼いだ後に俺も行くから年上のお姉様がいる店探しとけよ」


 恒夫はさも疲れた様子でベッドに転がるとすぐに寝息を立て始める。

 談笑していた秀樹と栄二もいつの間にか眠っていた。



 翌日、予定通り恒夫がカジノで稼いでいると秀樹と栄二が現れた。


「何かあったのか? 」


 慌てた様子の二人に恒夫が顔を顰める。


「奴隷が……獣人が売ってるんだよ」

「奴隷商人が来てて獣人の奴隷が居たんだ」


 慌てて早口になっている栄二の代わりに秀樹が説明してくれた。


 秀樹の話によると奴隷商人は昨日の夜遅くに来て今朝奴隷市を始めたらしい、小さい町なので奴隷商人がやってくるのは四ヶ月に一度だけである。

 冷やかしに奴隷市を覗いたら獣人が何人かいてその中の猫耳少女に栄二が一目惚れしたらしい、それで値段を聞いて恒夫の元に急いで来たのだ。


「六百万ギギルいるんだ早く稼いでよ、早くしないと売れちゃうよ」


 余程気に入ったのか栄二が取り乱している。


「奴隷商人は明日までいるって言ってたから間に合うか? すぐに売れるとは思えないけど……少し見せてもらったら栄二のやつ気に入ってさ」


 隣で秀樹が困った顔だ。


「明日じゃダメだよ、一番可愛いから売れちゃうよ、頼むよ恒夫」


 手を握って頼む栄二に恒夫が呆れ顔だ。


「始めたばかりで三十万しか稼いでないぞ……これ持っていけ二百万ギギルを手付金にしてその獣人を他が買わないように抑えとけ、明日の朝一番に残り四百万ギギルを持っていくってな、間に合わなかったら手付金は返さなくていいって言って承諾させろ」


 恒夫が金貨の入った袋を二つ差し出した。


「わかった。何とかやってみる」

「足元見られないようにな、秀樹が交渉するんだぞ、どうしても欲しそうな態度はするなよ値段吊り上げられるからな、冷静にな栄二」

「わかったよ、秀樹に任せるよ、ありがとう恒夫」


 金貨の入った袋を受け取ると秀樹と栄二が慌てて小走りで店を出ていく、


「栄二のやつ余程気に入ったんだな、あと四百万か……手元の百三十万を3倍にしなきゃな一日仕事だぜ、まったく…… 」


 呟くと恒夫は気合を入れるように太股をパシッと叩いた。

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