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暗い意識の底で突然フラッシュが焚かれたかのような眩い光が俺の意識を覚醒させた。

目を覚ますと俺がいたところはどうやら芝生の上だったらしく、さぁっと涼しい風が前髪をなびかせた。

このまま二度寝したいと思い、ごろんと体を横にしたときに気付く。


ん?俺いつこんなところに来たっけ?


ガバッと体を上げるとここはちょっとした丘のようなもので少し先には木造の家々が見える。見たこともない景色に呆然とするが状況を把握するために立ちあがり辺りをぐるりと見回す。すると先ほど見た木造建築の家々が立ち並び、遠くには辺りを囲む柵があった。


はっ?どういうことだ?


思考が混乱する中、風が吹いて前髪が目にかぶる。そこでも俺は驚いた。俺は短髪の黒髪だったはずだ。なのに目に映る髪は少し長めの暗い栗色をした髪だった。鏡のようなものはないか辺りを見ると近くに小さな池のようなものを見つけて走り出す。そして恐る恐る自分の顔を確認するとそこには暗い栗色の髪をセンター分けにした中肉中背の男が写っていた。歳は17,8歳くらいだろうか。


んんん!?俺じゃない!?


顔をペタペタと触ったり変なポーズを決めたりするが、写る自分も同じことをするのでこれはどうやら俺でいいようだと認識した。今の俺は中の中という一般的な顔立ちとTシャツと長ズボンといういわゆるモブ的な外見である。とりあえずこの池に写っている男が誰であるか身分の証明できるものはないか服のポケットなどを探ってみるとハンカチに"ヴィーレ"という文字が刺繍で書かれていることに気が付く。


どうやら今の俺の名前らしいな。しかしどうしてこんなところに・・・


自分が他人になっていたことや見知らぬ土地にいつの間にかいたことにうーんと悩んでいた俺の思考回路がついにショートし、ある結論に至った。


そうか・・・夢だなっ!


そうと決まれば話は早い。ここは夢の世界で俺は自分ではない赤の他人になっているんだと自身に言い聞かす。じゃないとこんな田舎のようなところにいるわけない。


そうと決まればここの建物があるところでも散策しますか


俺は建物があるところまで歩き出した。木造の家々を見ると全てがログハウスで石造りの建造物は見当たらない。村民はおおよそ15人くらいだろうか。小さな村のようである。


「おっ、ヴィーレじゃねぇか!」


「うぉわっ!!!」


デカい声で後ろから肩を叩かれ思わず全身がビクッとする。振り返ってみるとそこにはガタイのいい20代後半であろうやや黒色肌の男が目をぱちくりさせて立っていた。


「おう吃驚させんなよ」


「あぁ...わりぃな」


「まぁこっちが吃驚させちまったみてぇだし、悪かったな!これ詫びにやるよ!」


そう言って男は自分が片手に持っていた大きな木箱のなかからリンゴを一つ取り出すとこちらに投げ渡してきた。


「...ありがとう」


「おう!じゃ、手伝いあるからまたあとでな」


男はそう言うと自分から去っていった。俺(中身ではなく外見)はあいつの知り合いなのだろう。肩を叩かれた時やリンゴを片手で受け取った時の感触はすごくリアルで夢ってすごいなと改めて思った。片手に持っているリンゴを齧るとリンゴの食感や風味が口の中に広がる。まるで本物のリンゴを齧っているようだと錯覚する。


いや、これは夢なんだ


夢の中では匂いや味覚などの感覚が無いという考え方が認識されているが、夢でも感覚が鋭くなることだってあると聞いたことがある。俺はきっと五感が鋭かったから夢の中でも感じてしまうのであろう。そう言い聞かせて俺はまた村を散策し始めた。


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