2話.池田葵には逆らえない
4月20日、いつも通り平穏に進んでいたはずの俺の生活に亀裂が生じた。
全く面識のない、おそらくクラスメイトであろう女子に昼飯に誘われた。
三つ編みツインテールに眼鏡でいかにも学級委員とかしてそうな感じだ、偏見だけど。
突然のことに驚いていたが、
「いきなり何?」
とりあえず、キツめの声色と目線でこの女子を遠ざけることを試みた。
が、
「えっ、あっ、そうだよね!まだ、名前言ってなかったね!ごめん!」
全く動じる様子がない。
というか俺の方が動揺している。
「私は池田葵っていいます!よろしくね、御影くん!」
「お、おう。よろしく・・・」
無意識のうちによろしくしてしまうなんて、やはり男は女には逆らえないということか、無念。
「で、昼食のことなんだけど、どうかなっ?」
「えーと、なんで、俺?」
「そう、あれは3日前のことだった・・・」
なんか、急に語りに入ったぞ!?
できれば、この隙に逃げたいがナチュラルに腕を掴まれている。しかも結構強い。
「3日前、入学してすぐに受けた実力テストが返却されたでしょ?私の家はテストの結果によってお小遣いの額が決まるんだけど、中学生の頃はずっと学年で一番だったからお小遣いも月に5000円もらってたの。でも、今回は2位だった。貴方が全教科満点で1位だったから!だからお母さんに結果を報告しても『仕方ないわね』って3000円しかくれなかったの。」
3000円って十分多いと思うんだけどな。
ていうか、もしかしてまた、自分の頭の良さが面倒ごとを呼び込んだのか。世の中はなんて不条理だ。
「私にはどうしても買わなければならないものがあるの。でもこのままじゃお金が足りない。それを手に入れるためには、次の6月の定期考査で学年1位を取る必要があるの。」
学年1位を取るために、俺を昼食に誘う・・・
まさか、俺に毒入りの何かを食わせるつもりだろうか。
もしくは人のいないところに連れ込んで暴行とかもあるかもしれない。
全く、人は見た目によらないものだ。
「その話と俺を昼食に誘うことと、何の関係があるんだよ」軽く牽制。
「だから、御影くんと仲良くなって、ゆくゆくは勉強を教えてもらう仲になりたいのです!」
「勉強を教えて欲しい、か。じゃあ断る。」
相手が安全な人なら断っても大丈夫だろう。
「えー!?なんで!?」
「別に、池田さんのことが嫌いで断ってるんじゃないんだ。ただ、人と関わりたくなくて・・・」
「うー。なんだか複雑な事情があるとみた。」
「そうなんだ、物分かりが良くて助かるよ。だから、悪いな。諦めてくれ。」
「諦められないよ!こっちにも単純な事情があるの!」
「単純な事情って・・・一体何が欲しいんだよ」
「ふふふ、それはね・・・この『男同士でも問題ないさ!~夜のお楽しみ編~』のCDとBlu-rayのセットの初回限定版!しかも声優の稲野潤さんのスペシャルプロマイド付き!!」
そう言いながら見せられたのは、スマホに写されたマッチョの男二人が見つめ合っているイラストだ。
「この作品はね!主人公の嬲崎くんが姦田くんの●●●を●●するんだけど、その●●の●●がとてもリアルで、しかもその時の表情がたまらんのですよ!特に●●のシーンなんか嬲崎くんの●●●が●●で姦田くんに●●●●●●●●●●●●!!」
「お、おい!俺の席で大声でヤバいこと言ったら・・・!」
「ねぇ、あの2人ヤバくない?笑」
「おい、御影〜。お前、女子と何話してんだよ〜笑」
ほら!やっぱりクラスメイトの注目と嘲笑の的だよ!俺にも被害が及んでるし。
しかも一番の問題は未だにものすごいことを語っている池田さんだ。
「おい!池田さん!ちょっとその口閉じろ!マジでお願いだから!頼む!!黙ってくれ!もう何でもするから!とりあえず今は黙れ!!」
「今、なんて言った?『何でもする』って言ったよねぇ?ねぇ?」
「え、あー、空耳だと思・・・」
「言ったよね?」
「はい、言いました。」
池田さん、怖ぇえー!!
完ッ全にハメられた!!
「というわけで、勉強よろしくね!あ、御影くんは学食?弁当?」
「・・・弁当だけど。」
「私も!じゃあここで食べよっか!」
まぁ、こいつは俺に対して悪意を持ってるわけじゃなさそうだし、それに6月の定期考査までの辛抱だ。適当に終わらせよう。
こうして、俺は池田さんに半ば強引に勉強を教えることになった。
前回、初投稿にも関わらずコメントを忘れました。初めまして、嘘ネコです。
とくに書くことが思いつかないので登場人物の名前。
主人公「御影 蒼」
ヒロイン「池田 葵」
です。
苗字は近所の駅名から引用。