【8】
《魔具屋-塩猫-》は街の一等地。
人通りが最も多いところに建てられたプレイヤーショップだ。
この世界にある建造物は、ゲームのシステムとして最初から存在しているものと、
プレイヤーが建てたものの二種類あり、《魔具屋-塩猫-》は後者となる。
プレイヤーが建てられるもので一般的なのは"ダンジョン"。
これは運営側も推奨しているゲームの根幹であるため、比較的容易で安価に創ることが出来る。
但し、街のショップとなるとそう簡単にはいかない。まず建築費。街の景観に合わせて造る必要があり、材料が限定されている。当然、高価な設定となる。
問題なのが土地代。人気ゲームにおける街の一等地。プレイヤー数が増えるに連れ高騰していった土地代。"何でも自由"と謳ったゲームとはいえ、おそらく運営側も買われるのは想定外だったに違いない。一プレイヤーが貯めようと思ったら、何十年も廃人仕様でプレイし続けなければいけない金額。それほど天文学的な数字だった。
《魔具屋-塩猫-》の主、ソルティキャットが巧妙だったのは資産を分散していたこと。運営に悟られぬべく、買うその瞬間まで資産を隠した。
運営に知られると土地代を上げられる可能性が高かったからだ。
ある者は高価なアイテムに変え、ある者はダンジョンに隠し、ある者は大量に人を雇いお金を持たせ、そしてある者は、換金率の高いアイテムをドロップするモンスター専用のダンジョンを創った。
土地が買える金額が貯まった時点で、即座に全て回収した。その間、およそ90秒。
ソルティキャットを始めとした、それぞれの役割を担ったメンバーは
ゲームの時代から、取り込まれたこの世界においても固い絆で結ばれている。
これがウェルネ=デザイア最大のギルド《やっぱり猫好き同盟》が出来た顛末だ。
ギルド名を変えたい者達との言い争いが絶えない、と会うたびに愚痴を聞かされる。




