【6】
「…武器入荷したよっ!見てってよー!」「あ…すいません。食べ物はほとんど売り切れですぅ」「…このタイプの呪いはちょっと値がはるけどいいかぃ?…」「……誰か攻略手伝ってくれませんかぁ??」「お兄さま。ちょっと向こうでパフパ………」
「ハハハ。前に来たときとは大違いだ……」
先頭を歩くマコトが感心している。
ここ、ウェルネ=デザイアは多くのプレイヤーが生活の拠点としている。
「確かに…。今は"街"って感じがするね」
「おい、シャル。人前であんまり喋るな…」
タケはユウゴのことを未だに"シャル"と呼ぶ。
「ただでさえ目立つんだ。ほら見ろ…」
住民がこちらを見ながら何か話している。
「一応、お前は"マコトの召喚獣"っていう体なんだから」
「だ、だよね…」
ユウゴはガクッと項垂れる。
「でもミカを一人で置いてきて良かったのか?」
「ああ。本人が望んだことだ。"あそこ"はどこよりも安全だしな」
「まぁ、それもそうか」
「それに、教会にも近寄りたくなかったんだろう…」
「……」
ゲーム時代。プレイヤーは死ぬと教会に送られ、その後、復活する。
経験値やアイテムを失ってしまうものの、そこは皆、割り切っていた。
ところが、取り込まれたこの世界は違う。
教会に送られるまでは同じだが。
「おーい!"子供"が逃げた!誰か捕まえてくれ!」
声の方を向くと、巨躯の戦士を二人の魔術師が追いかけている。
「よっと…」
戦士が横を通り過ぎる直前、タケが足を引っ掛けた。
「あいたっ!何すんのさ!」
転ばされた戦士がつぶらな瞳で非難してきたが、
その戦士を見たタケとユウゴは驚いた。
「お前、さっきの……」
街に来る前、ダンジョンで撃退したパーティの一人だった。
「痛いなぁもう!誰だよオッサン!」
「な、オッサ…」
「もう、ここどこなんだよぉ。早くおウチに帰らないとママに怒られるのに……」
「……」
そこへ二人の魔術師が追い付いてきた。
「ハァハァ…。ありがとう、助かったよ」
「いや、礼には及ばない」
「元気だけはあるんだから困るよ」
「あんたらも大変だな」
魔術師の表情が沈む。
「こんな状態になるのなら復活せずに消えてくれた方が…って思わないこともない」
「……」
「でもな…。偶然にも保育士なんだ俺達。リアルでは」
「へぇ、そうなのか?」
「ああ。だから慣れているっちゃ慣れているんだがな……。さっさと何とかしてくれないかな、誰か…」
「そうだな……」
二人の魔術師は、戦士を抱え込み連れて行った。
死ねば経験値を失う。
ゲームにおいては、ただの数字でしかない経験値。
現実に照らし合わせてみれば、
それは積み重ねた歳月が失われるということなのかもしれない。
つまり、経験値を失い教会に送られると、年齢が逆行する。
身体はゲーム内のアバターのため、
見た目はそのままで頭の中身だけ若返ってしまう。
教会に送られた死者の大半が幼稚園児から小学校低学年に逆行しているため
いつの頃からか自然と"子供"と呼ばれるようになった。
見た目がゴツいのもいるが、街では護られるべき対象とされている。
「実際に目にするのはツラいな…」
マコトが連れて行かれる戦士を見ながら呟いた。
「……」
「シャル。気にするなというのは無理だろうが、割り切れ」
「…わかってるよ、タケちゃん」
「俺達はみんな同罪だ。お前だけに背負わせはしない」
「…ありがとう」




