【0-1】
ユウゴの一日はゲームをログインさせることから始まる。
その数、およそ二百タイトル。
連続ログイン日数を途切れさせないことと、
日々のログインボーナスを手に入れるためだ。
ヘッドディスプレイを装着し、
始めの数タイトルは寝ぼけ眼の半覚醒状態。
ログイン作業をするににつれ、段々と目が覚めてくる。
全てのゲームがアクティブな訳ではない。
ログインしかしていないゲームが大半を占めていた。
そんなことなら辞めればいいのにと思うところだが、
性格だから仕方がない。
一度始めたものを途中でやめることが気持ち悪かった。
そんなユウゴが唯一、本気でハマっているタイトル。
「クロニクル・オブ・スカンディナビア」
いわゆるダークファンタジー系ゲームだが、
コンテンツが氾濫している今の時代にも関わらず、
かなりのユーザー数を誇っている。
その理由は圧倒的自由度。
ゲームを始めてまずすることは、
戦士や魔法使い、神官、盗賊など数多ある職業の中から一つを選び、
その後種族を決める。
そして自分の分身たるアバターを作り、
ステータスにボーナスポイントを割り振る。
ここまではよくあるゲームの流れだ。
ところが、一旦、始めればそこからは自由。
王道的なストーリーは用意されているが、そこをメインにしている人は少数派だった。
殺し屋、葬儀屋、リフォーム業者、神父、ウェディングプランナー、ペットショップ、弁護士など、
一見、ゲームに関係なさそうな職種もあるが、これらは全てゲーム内での話。
プレイヤーがプレイヤーに対して業務を担っている。
ただし、そういう職業がゲーム内に実装されているわけではなく、
プレイヤーが独自に仕事を請け負い、
それを生業としているだけだ。
対価はゲーム内通貨やアイテムの場合もあるが、
リアルマネーが使われることも多い。
運営による規制は一切ない。
自由。
何をしても問題はなかった。
とはいえ、この程度のゲームは他にないというほどでもない。
ユウゴがハマった理由は別にあった。
「魔…がん王…って読むのコレ?」
最初の職業選択に見慣れない職業があった。
下に説明が書いている。
『魔窟王-まくつおう
種族固定(変更不可)
全ステータス-中程度
魔法は一切取得しない
ダンジョン作成特化アビリティ
・通常より複雑なギミックの使用が可能
・ダンジョンに湧き出るモンスターが強化される
・ダンジョンで他プレイヤーが死亡した場合の恩恵が大幅にアップ
・一定条件を満たしたモンスターを使役することができ、
また、そのモンスターが取得している魔法を全て使用できる
但し使用回数は自分のステータスに依存する』
「ふーん、変わった職業だな…」
プレイ経験が豊富なゲームのジャンルだったが、
見たことのない職業だった。
ガツガツ前に出でゴリ押しするタイプではなかったので
いつもは魔法使いみたいな後衛職を選ぶことが多い。
『使役』
この言葉に魅かれた。
そもそもゲーム自体、それほど真面目にやるつもりもない。
「とりあえずコレで始めるか…。どうせいつでも転職出来るだろうし」
ダンジョンクリエイト。
"DC"や"ダンクリ"と呼ばれるゲームシステムの一つ。
言葉のとおり、ダンジョンをクリエイトすることが出来る。
少々クセがあり複雑なシステムではあるが、
通り一辺倒のゲームを遊び尽くしたゲーマーからの評価も高かった。
このおかげで「COS」は現在の地位を築いたといっても過言ではない。
プレイヤーは死亡すると所持品、ゴールド、経験値をドロップするのだが、
それがダンジョン内の場合、全てダンジョンマスターのものとなる。
ただし、自分のダンジョンで"死んでもらう"には、
プレイヤーに来てもらわないといけない。
それには"餌"が必要となる。
時にそれはゴールドだったり、時にそれはアイテムだったり。
それらはダンジョンマスター自ら設置する必要があり
当然、ダンジョンを制覇されればそれらを全て失うことになる。
「……で、ここに地下二階への階段を設置して終わり……っと!」
ダンジョン確定のボタンを押し評価を待つ。
ゲームを始めてから本筋そっちのけで、まずはダンジョンを創ってみた。
職業《魔窟王》にどれ程の恩恵があるのか。
窓の外は真っ暗だ。 気づけば、朝起きてからずっとダンジョンを創っていた。
『あなたのダンジョンランクは【H】です』
「え、Hって…」
最低の評価だった。
ユウゴは下された評価に愕然とした。
《魔窟王》というくらいだからどれほどの力があるのかと思いきや
蓋を開けて見ればこの始末。
「…オレの15時間は何だったんだ」
この時は知らなかったが、
《魔窟王》であろうと見習い戦士であろうと
プレイヤーが創ったダンジョンは
最も低いランクHからのスタートとなる。
このランクは、階層、モンスターの強さ、
配置したアイテムの価値などが総合的に加味される。
一階層のデザインにいくら時間を掛けたところで
いきなり高ランクのダンジョンはできないのは当然だった。




