【49】
数日前、マーグの城下街の、マーグリアのある施設に強盗が入った。
そこは、傍目には普通のバーなのだが、
その実情は、マーグが国外に放った”草”が集まる場でもあった。
とはいっても現在、政情は安定しており近隣諸国との軋轢もない。
本来の目的で使っている者は少なく、純粋にバーとして利用している者が大半を占めていた。
そんな場所に強盗が入り、中にいた者達は無残に殺された。
一般客も多数いたそうだ。
一体、何故そんな事態が起こったのか訳がわからなかった。
ゼブを含めた、一握りの者達を除いては。
この地域一帯を国と呼ばれるまでにまとめたのは
ゼブの遠い先祖である一人の戦士だった。
彼は、特別何かの能力に突出した人物だったわけではなく
ほんの少し運が良かっただけだった。
彼があるモンスターと出会い(結局、最後までモンスターとは気付かなかったのだが)、
譲り受けることになったアイテム『流星群』。
魔道士の母と、戦士の父との間に生まれたしがない一戦士だった男は、
そのアイテムを手に入れ、人生が劇的に変わった。
まずは何かと諍いの絶えなかった周辺部族らを付き従えるようになった。
すると、やがて町の人々から頼られる存在になる。
町を取り仕切るようになるまでそう時間は掛からなかったという。
そこからの発展は目覚ましく、
日を追うごとに評判を聞き付けた有象無象が集うようになっていった。
人は、増えれば増えるほど問題は増えていく。
円滑に生活するためには取り決め、つまりは”法”が必要とだった。
法が施行された瞬間、マーグ・アレキサンドロは国王と成った。
襲撃された施設には
その『流星群』が保管されていた。
グスタフに確認に行かせたところ、保管庫はもぬけの殻だったそうだ。
ゼブは唖然とした。
『流星群』が盗まれたことにではなく、
そんな危険な物があったということを忘れていたことに。
伝え聞くところによると、
もう何代も前からアイテムを使いこなせる者はいなかったそうだ。
ゼブも使うことは出来なかった。
そんなアイテムを使う必要がないほど、政治、経済共にマーグ国は安定していた。
これは先達の人力によるところが大きい。
そもそも、何故そんなアイテムが城ではなく
街の一角に保管されていたのか。
何代か前の王がアイテムの効果を実証すべく
城に仕える魔道士に調べさせていた。
当時すでに使われなくなって久しかったらしく
魔道士にも油断があったのかもしれない。
何かのきっかけでアイテムが発動してしまい
城が半分吹っ飛んでしまったそうだ。
当時の王は、使いこなせない危険な物を城には置いておけない、という理由で、
城から離れた所に保管庫を作った。
なにせ城を吹っ飛ばす程の兵器だ。
その区画は、厳重に警備していたそうだ。
だが、時は流れ、記憶も記録も遠くなっていく。
一応、国に仕える者が利用するという名残はあるものの、
そんな物を保管しているという危機感は全くなかった。
実際、保管庫が空になっていると言われてもピンとこず、
クラインから指摘されて初めて気付いた程だ。
ゼブは事態を飲み込むにつれ血の気が引いていった。
簡単に国が滅ぼせる兵器が悪しき者の手に渡ってしまった。
なんとしても取り戻さなければいけない。
そして強奪者には制裁を。




