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【48】


「―以上、町の付近に出没していたゴブリンの群れを討伐致しました」


「よし、ご苦労だった。次ー」


「ハッ。先日の大洪水による被害についてですが―」


円卓の上座に位置する三人は膨大な書類から目を外すことなく、入れ替わり立ち替わりくる報告に耳を傾けている。


広い空間の中心には玉座があった。但し、主が座ることはほとんどない。国民はもとより、近隣諸国からも賢王と評されるその人物は、非効率を好まない。玉座に踏ん反り返っている暇があるなら、自ら率先して事にあたりたいタイプだった。


マーグ王国における政治は、荘厳な玉座の間ではなく、玉座の背後より空間一面を覆うカーテンの向こう側、とても同じ場所とは思えないほど雑多な部屋で行われていた。


「―という訳で人手が不足しております。被災前と同じ状況に戻すにはあと少々時間が掛かるかと思われます」


「よし、ご苦労だった。引き続き頼むぞ。では一旦解散としよう」


「「「ハッ!」」」


上座の三人を残し、皆はそれぞれ業務に戻って行った。



「フゥ…」


皆が出て行ったのを確認すると

三人の中心にいた人物が目頭を押さえながら身体を伸ばした。


「ゼブ様。いつも申し上げておりますが、このような些事(さじ)は私共で処理します故-」


「そうだぜ、ゼブ。お前は玉座でどっしり構えていたらどうだ」


「グスタフ、何度言えばわかるっ!貴様、王に対して何という口の利き方だっ!」


いかにも肉体だけが取り柄というような体躯のグスタフは、ヒョロリとしたクラインを呆れた目で見る。


「お前の方こそくどいぞ、クライン。ゼブが良いって言ってるんだから別に良いだろうが…」


「そういう事じゃないっ!ゼブに対してじゃなくて、王という地位に敬意を払えって言ってるんだっ!」


「いや、お前の方が失礼なんだけどね…クライン」


「え?…も、申し訳ありません」


何が悪かったのかいまいち理解していないクラインだったが、王にたしなめられとりあえず謝罪を口にする。


ゼブはこの見慣れたやり取りに辟易しながらも、声を一段落とし、二人に話を切り出す。


「ところで、例の件はどうなっている?」


何のことなのか察した二人は、ふざけた態度を改める。


「すまねぇ、ゼブ。こっちは進展なしだ」


グスタフは申し訳なさそうに報告した。


「…クライン、お前の方は?」


「ハッ」


クラインは懐から報告書を取り出し、ゼブに渡した。詳細は報告書にまとめられていたが、グスタフと情報を共有するという意味で、中身を大雑把に説明した。


「例の襲撃で生き残った者の意識が回復しました。その者に聞き取りを行ったのですが、あまりに突然のことだったのでほとんど覚えていないそうです。ですが…」


ゼブは報告書に目を通している。


「意識がなくなる直前、巨人族を見たそうです」


「巨人族っ?!」


「巨人族といっても、常人の二倍程度のサイズだったのでおそらく劣等種かと…」


「へぇ…」


手持ち無沙汰なグスタフが、クラインの言葉にいちいち反応する。


「今のところ報告出来ることは以上です」


「…そうか」


ゼブは落胆を隠せなかった。



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