【45】
「それにしても全然喋ってくんねぇな、桜ちゃん」
「…」
「ずっと一人で喋ってるじゃん、俺」
留守番を命じられた二人は馬車で時間を潰していた。
「…さっさと自分の馬車に戻れ」
ここまで違う馬車で来たため、始めはそれぞれ別々だったのだが、
暇を持て余した銀次は、桜のいる馬車に乗り込んできた。
「だってさぁ……ヒマじゃん?」
「チッ…」
「攻略ギルド同士、親交を深めようと思ってさ」
桜が剣の柄に手をかけた。
「おっ!なになにぃ?剣士らしく剣で語り合うって……」
「シッ、黙れ!」
桜が真剣な表情をしているのに気付いた。
「どうしたっ?!」
銀次も武器を手にしようとした瞬間、
馬車の外から、座っている場所目掛けて剣が突き刺された。
「ゲ……ゴ、ゴフッ」
銀次から変な息が漏れ出た。
「ダッサ…」
「なっ?!ちょっとは心配しろよな!見ろよ、コレ…」
腹からは二本の剣が生えていた。
「私達がそんなくらいで死ぬ訳がないだろう」
「まぁな」
桜と銀次は馬車の天井を突き破り、飛び出した。
銀次を刺した二名もそのまま引っ張られている。
桜は辺りを見渡す。
「ほぅ。壮観だな」
広い草原には馬車しかなかったはずが、
その馬車を取り囲むように人が犇めきあっていた。
「で、お前ら何者だ?」
刺されたままなのを忘れているかのように
刺している男達に尋ねる。
「ヒッ、ヒィィィィィ。な、なぜ死なないんだ…」
男達は剣を放し、後退った。
「銀次、コイツらNPCか?」
桜はNPCとプレイヤーの見極め方を知らない。
「多分、としか言えないな。前に襲ってきた奴等と同じ服装だ。俺たちプレイヤーはこんなダセェ格好はしないだろ」
「それもそうだ」
襲撃者達は、赤の装束に身を纏い、三角帽を被っていた。
「困ったな…」
まだ桜は動き出そうとしない。
「おい。何をしてるんだ?」
「マコトとの約束が…」
NPCへの攻撃は禁止されていた。
「ああ、あの"決まり"か。…意外とバカだな、桜ちゃん」
銀次は呆れた目で桜を見る。
「な…バカっ?!」
「見ろよ、コレ」
腹に刺さったままの剣をツンツンと触る。
「コイツら、俺達を殺す気だぜぇ?」
銀次は凶悪な笑みを浮かべる。
「よって、これから起こることは"正当防衛"だ」
桜もつられて笑みを浮かべた。
「なるほど…」
命を危険に晒してまで約束を守る義理はない。
二人は武器を構えた。
「あ、桜ちゃん。始めに言っておくけど…」
「チッ。なんだっ!?」
桜は、戦い始めの"ノリ"を邪魔されイラついた。
「俺、"スイッチ"入ったら戦闘が終わるまで止まれないから」
申し訳なさそうに告げる。
「……問題ない。私も似たようなものだ」
二人はお互いを確認し合う。
「よっしゃぁぁぁ!いっちょやりますかぁぁぁぁ!」
銀次が高らかに吠え、戦いは始まった。




