【42】
ゼロスとRYUは、外で寝ていた者達を中へと運び、
他の団員達と一ヶ所にまとめた。
そのあと、砦周りの巡回をするよう頼まれていた。
ゼロスは不安だった。
今回の作戦に自分は必要だったのか。
役立つことは出来たのか。
"強さ"には自信はあった。
ゲーム時代、そこそこ大所帯のギルドの中でも上位に位置し、
何かあれば常に頼られる存在だった。
ところが、こちらの世界に来てからというもの、
"使えない男"もいいところだった。
ろくに仲間も集められない。ダンジョンを攻略する勇気もない。
でも、キキ様とエイジのため稼がなければならない。
自分に出来ることと言えば、"野良"退治がせいぜいだった。
所詮"高校生"、と言われればそれまでだが、
頼れる存在に見られるよう名刺を用意してみたり、
口調を大人びたものにしてみたり。
だが、 マコトに言われたことで、結局大事なのは経験だと痛感した。
それも"ゲーム"の経験ではなく"人生"の経験。
物事は深く考えて行動しなければならない、と。
こればかりは今すぐ解決出来そうにない。
もう一人で強がるのはやめよう。
今回の件で知り合いも出来た。
わからないことは聞けばいい。
怖ければ誰かと一緒に行けばいい。
プレイヤーは"鬼"じゃない。
自分と同じ人間。
マコトみたいに拒絶されてしまうかも知れないが
助けてくれる人もいるかも知れない。
街に戻ったらキキ様に相談しよう。
ゼロスはそう思った。
「あれ、キミ一人かい?」
「(え、オレに話してんの?)」
ユウゴは外にいるよう頼まれた。
中では潮、マコト、シリウスの三人と
女性の指揮官こと、サラ・アレキサンドロ・スローンとで政治的な話をしている。
最初はユウゴもマコトの横にいたのだが、なにせモンスターに憑依している身だ。
サラの気が散っていたのをマコトも潮も気にしていた。
そのモンスターに憑依しているユウゴに話し掛けている。
意味がわからなかった。
「あ、キミはモンスターだったな。スマンスマン…」
「(忘れてただけかい)」
ゼロスは壁にもたれ掛かった。
「…みんなどうしてるかなぁ」
「(次は独り言…)」
ユウゴは"人間"と認識されていない。
人語を理解出来ない生物に
独り言を聞かれても差し支えはないと思っているのだろう。
「母さん心配してるだろうな。エイジもこっちだし…。てか俺の体、今どうなってんだろ…」
「(あれ?口調が若いな。オレと同じくらい?」
「そういや○○、一ヶ月もログインしてないや。ログインボーナスもったいねぇ」
「(わかるよ、それっ!オレもなんだよな)」
ゼロスは有名なゲームの名前を挙げた。
それはユウゴもハマり中のゲームだった。
「ああ…帰りてぇな」
「(…だね)」
それに気付いたのは屋上に待機したままのマイラだった。
東の空は徐々に白みがかってきた。
「ああ…ヒマすぎる。いっそのことモンスターの大群でも襲って…ん?」
西側の地平線。まだ暗闇に包まれてはいたが、
ポツッと光の点が見えた。
「なんだ、アレ」
遠くてよく見えない。
その時、それは急に動き出した。
否。"飛んできた"と言っても過言ではないスピードだった。
「っ!!や、ヤバ――」
『ドゴォォォォォンッ!』
皆に忠告する間もなく、砦に着弾した。




