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「なるほど…。そういうことね」
「そんな簡単な方法があったんなら教えてくれても良かったのに…」
と、ゼロスがぼやいているが、シリウスも隣で頷いている。
クロニクル・オブ・スカンディナビアのMPは
回数制が採用されていた。
その制限回数が最高で3回のため、シビアなMP運用が要求される。
シリウスの職業は、盗賊と忍者を極めた者がなれる"暗殺者"。
この世界に来てから"初"の対人戦ということもあり、
慎重を期し、自身の最高レベルであるスキルを使ってしまった。
「おかげで私めも無駄打ちをしてしまいました」
「シリウスさんも…か…」
ゼロスはともかく、シリウスも同じ失態を犯しているのは意外だった。
ユウゴを見るとまだしばらく掛かりそうだ。
「今回の指揮官として言わせてもらうが…」
言うかどうか迷ったが、時間はありそうだ。
「それ結構、命取りだぞ」
マコトは三人を見据える。
「な…」
「…」
「も…申し訳…」
落ち込む三人をよそにマコトは続ける。
「ゲームなら『あ、魔法切れた。宿屋行って回復しよ』で済むが、ここではそんなことは出来ない。スキル一発、魔法一発が
貴重な"戦力"なんだ。MP回復アイテムもあるがその価値はわかってるだろ?」
「あ…ああ。もちろん知っている」
《タトーレ天媚薬》というアイテムがある。
これは技能、魔法の使用回数を1ポイント回復することが出来るアイテムだが、
そのレア度が《☆8皇家の財宝級》。
課金ガチャでしか出ないうえ、しかも一度使うと無くなってしまう消費アイテムなのだ。
売っても5ゴールド、しかもMPの回復なんて宿屋で簡単に出来る。
先にレア度から見せるガチャ演出のCOSにおいて
一番、腹の立つ"ハズレ"として認識されていた。
但し、この世界でその評価は一変している。
宿屋で回復するシステムは変わらないが
その時間に問題があった。
人の睡眠時間と同様、8時間以上寝なければ
HP及びMPが満タンにならない。
また、まさしく命懸けの戦闘中。
技能、魔法の使用回数の回復は
喉から手が出るほど欲しい安全マージンだ。
価値が暴騰するのも納得だった。
「敵の戦力を見極める"観察力"と、それに自分を委ねられる"判断力"が必要だと思う」
「「「……」」」
「まぁ今回は支障はないだろう…。差し出がましいようだが、今後の参考にでもしてくれ」
「あ、ああ…すまなかった」
「…御意」
「私めも申し訳ありませんでした」
「マスター。オワリマシタ」
そこにモンスターに扮したユウゴがやって来た。
「お、おう。じゃあ済まないがちょっと席を外させてもらう」
「「「……」」」
三人のテンションは限りなく落ちていた。
「言い過ぎたかな…」
三人の様子を遠目に、マコトが後悔を口にする。
「別にいいんじゃない?間違ったことは言ってないし」
ユウゴは、裏口の鍵穴から、砦の中へと蝿をばらまきながらも話を聞いていた。
「…それにしても時間掛かったな?」
「一応、建造物だから"ダンジョン"扱いになってた。そのせいで蝿も結構死んだりして…」
街の外にある建造物は、全てダンジョン扱いとなる。
放っておくとモンスターが湧き出てくるが、
誰か一人でも人がいるとその対象から除外される。
ミセスビィンが産み出した蝿は知能が低く、
建物の間取りが理解出来ず、壁にぶつかって死んでしまったりした。
全てを把握した上で警戒にあたっている自分の"ダンジョン"とは事情が異なったようだ。
「それは興味深いな…」
「うん。時間は掛かってしまったけどね」
「で、中は?」
「一部屋だけわからなかった。おそらくそこに潮さんがいると思う」
「他は?騎士達は?」
「……全員寝てる」
「……」
「……」
「何か真面目に作戦してるのが馬鹿らしくなってきた…」




