【39】
「アイラ…。俺と結婚してくれ」
優雅に跪き求婚する。
聖天大聖堂の中央。
まるで名画を彷彿とさせるような場面だったが
生憎と目撃者はいなかった。
男は幸せの絶頂だった。
物心ついた時から好きだったアイラと恋仲になり、はや十年。
身分の違うアイラに見合う男になるために永い月日を費やした。
それがついに報われる。
聖天騎士団長になり、この大聖堂を自由に使えるまでに登り詰めた。
「返事を聞かせてもらえるかな…アイラ」
「……」
「アイラ…俺では役不足なのか?」
アイラは喜びとも悲しみともとれる表情をしている。
「アイラ…。君の為に寝る間も惜しんで、血反吐を吐きながら頑張った……っけ?……あれ?」
そこで男の意識が遠のいた。
「アイラ…。俺と結婚してくれ」
優雅に跪き求婚する。
再び。
この一連の流れを既に数十回繰り返していた。
男がかけられた魔法は《夢現》。
対象が思い描く夢、理想を延々と見せつけることが出来る。
マイラの足元には、"夢を実現した男"が寝転がっていた。
「ハズレね、こっちは」
ひょこっと屋上の縁に腰掛ける。
マイラは作戦が終わるまで警戒にあたることになっていた。
可能性は低いが、増援が来ないとも限らない。
「あれれ。お早いね、みなさん」
マコトが裏口に着く頃には、全員揃っていた。
ユウゴを見やるが、まだ時間が掛かりそうだ。
「ハハハ。ボクの力を舐めてもらっては困るな」
「…」
ゼロスは自己アピールに余念がない。
「私めも滞りなく…。それにしても遅かったですね?」
「いやぁ。これ投げたらちょっと吸っちゃってさ…」
マコトは"通常"の道具袋から《☆1 睡眠粉》を取り出した。
「一瞬、意識飛んじゃったよ」
手にある物を見てが何故か皆が驚いている。
「…どうしたんだ?」
マコトは訝しむ。
「睡眠粉…?」
「ああ、そうだけど…。何をそんなに驚いているんだ?」
意味がわからなかった。
「赤ポーションの次に安かった睡眠粉ですよね?」
「だからそうだって!シリウスさんまで一体、何なんだ!?」
三人が顔を見合わせている。
「…そんな方法があったのか」
ゼロスが呆れている。
「はぁ?」
「いや、実は…」
三人はそれぞれどういう方法で巡回兵達を無力化したか説明した。




