【38】
「マコちん。外は全て把握出来たよ」
周りの様子を探るという名目で、マコトとお供の"モンスター"は一団から離れた。
今回は仲間だが、手の内は明かしたくない。
「優秀だな、ミセスビィン。逆にこの使い方こそ正着の気がしてきた」
「いつも、入られることはあっても、入ることなんてないもんね」
どこか嬉しそうだ。
「で、どうだった?」
ユウゴにミセスビィンから得た情報を聞く。
「見たところ、外と中の連携は無いね。そもそも緊張感が無い」
欠伸をしながら巡回している者さえいた。
「やっぱりな」
マコトはしたり顔だ。
「パルムの話を聞くに、我が物顔な組織な気はしてた。襲われることを念頭に置いていないんだろう」
「あと…何故か裏口に見張りがいない」
「罠の可能性は?」
「ない。とは言い切れないけど可能性は低いね。"気配"がない」
「終わってるな、聖天騎士団。それとも指揮官が愚図なのか」
マコトは油断しそうになる気持ちを抑える。
「でも好都合だな。時間を掛けたくなかった工程が飛ばせる」
「じゃあボクは裏口の方に行くから…」
砦には七人の見張りがいた。
砦の周りを巡回している騎士が六人。二人一組で計三ヶ所に配置されている。
そして砦の屋上に一人。
四方を満遍なく監視してはいるものの、
角度が悪く、巡回兵に異変が起こっても察知出来ない位置にいる。
マコトは見張りを全て無力化するべく指示を出した。
「ゼロスとRYUは砦の西側、シリウスさんは正面を頼む。俺は東側を処理する」
「承りました」
「了解」
「マ……妖魔師マイラは屋上の見張りをどうにかしてくれ」
「お安い御用よ」
「ところで、お供のモンスターはどうしたんだ?」
ゼロスがユウゴの不在に気づき尋ねてきた。
「"あれ"には別の指令を出してある」
「 キミ達の相手をするのは、《ソー…」
「ちょ…ストーップッ!なに考えてんだお前っ!」
武闘家であるRYUは、自分は修行僧だと自負している。
そのお堅いRYUだったが、
ゼロスの馬鹿さ加減に思わず"地"が出てしまった。
「お、隠密作戦故、名乗るなど有り得ない…と拙僧は具申する」
本来のキャラに戻り、ゼロスをたしなめる。
「あ…忘れてた。つい、いつものクセで……」
テヘッとしている。
「とっとと任務の遂行を…と拙僧は具申する」
西側の巡回兵は状況が掴めなかった。
何者かが、突然現れたかと思ったら、訳のわからない言い合いをしている。
「では……。《卑怯者の一撃》!」
「なっ!…ぐはっ」
ゼロスが使ったのは剣士技能。
攻撃力は極小ながらも、必ず先制攻撃が出来るという特性を持つ。
強制睡眠や猛毒、即死効果などの状態異常をのせた武器を使うのが定石だが、
今の目的は意識を刈ること。
鞘打ちに留めておいた。
双剣使いのゼロスは、一瞬で二人の背後をとり、初撃で無力化に成功した。
「フ…この程度ならボク一人でも良かったのに…」
何故、ゼロスが一人で行動させてもらえなかったのか。
その理由が頭に浮かんだRYUだったが、
愚劣な考えをしてしまった自分を戒めた。




