【37】
「師匠、聞きました?《覚醒者》の話。騎士達が噂してますけど」
「もちろんだ、クルス。こんな格好してるのは、あわよくば《覚醒者》なる者と出会いたいからに他ならない!」
「他ならないって…勘弁して下さいよ、師匠。知ってんなら教えて下さいよぉ。絶対来なかったのに……」
「そんなことを言ってるからいつまで経っても"洞窟"の一つや二つ突破できないんだ、お前は!」
「…そういう師匠こそ、死にかけたじゃないですか…この前」
「バ、バカモノ!あれは未知への挑戦だ。何事も自分で経験してこそ為になるんだ」
「だからって、わざわざ"警告"を無視してまで入らなくても良かったのに」
「クルス……。"警告"されるは警戒用の虫はそこら中にいるは…。あれで中が気にならないお前がどうかしてるぞ」
「なりませんね。まだ死にたくないし…」
「……お前のその"やる気"。"アイツら"にもちょっとわけてやれ」
「先輩達は"別の生き物"です。比べられても困ります…」
「はぁ…。ほんと、俺のとこには極端な奴等しかこないのか……」
遠くから見ればその二人は大人と子供にしか見えない。
しかし実際は異なる。
小さい方が小さい訳ではなく、大きい方が大き過ぎるのだ。
クルスは巨人族の劣性遺伝。もうこれ以上大きくはならないが、常人と比べるとその差は歴然。
一般成人のおよそ二倍近くある。
二人の所属は聖天騎士団。ではなく、これは仮初めの身分。
全ては師匠の好奇心からきた行動だ。
その好奇心のせいで、
クルス用に規格外の装備一式を用意させられた騎士団はたまったものではないが、
人を気遣う優しさより、探求心に支配されている。
"入団"間もない二人は、砦の周辺警備にあたらされていた。
「あ……おい、クルス!」
「なんすか、師匠」
「虫の気配だ…。あの"洞窟"にいたタイプに近いぞ」
「!!」
クルスは気だるそうな態度から一変。
瞳を銀色に輝かせ索敵する。
「二匹いる…けど、まだ遠い!どうする師匠?!」
師匠は辺りを見渡し、誰もいないのを確認した。
「一旦隠れる」
「ウィッス!」
クルスはそう言うなり、師匠を抱え目にも止まらぬスピードで砦から離れる。
劣性遺伝の持ち主は、サイズの代わりにスピードに愛されていた。
二人が消え去って間もなく蝿が飛んできたが
その蝿から異常を知らせる信号は発されなかった。




