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35/62

【34】

人間を(むさぼ)り食うアンデッドヒューマンの集落がある、との通報を受けて

前・第十聖天率いる隊は、その掃討に赴いた。

敵を追い詰め、あと少しで終わりというところで

突如、 三人の人間が出現した。

まさしく対峙していたそのど真ん中に。


三人はきょろきょろと辺りを見回し、何かを話し合っているようだった。

その内、一人が隊の方に歩み寄ってきた。

見た感じ、ぎこちない笑顔ながらも友好的な感じだったそうだ。

ところが、こちらは既に戦闘中。

アンデッドヒューマン側が何か魔法を使い"三人"を召喚したと判断。

前・第十聖天はその三人に対して攻撃命令を出した。

命令をうけた騎士は、まずは無防備に近づいてきた者を斬った。肩から心臓に掛けて。

明らかに致命傷。斬られた者は、驚いた表情のまま、口をパクパクさせたあと消えた。

死体が消える。そんなことは普通の人間では有り得ない。

やはり何かの魔法だと思った騎士達は、残りの二人も殺すべく向かって行った。


その光景を茫然と見ていた残りの二人は、

仲間が斬られ、姿が消え去るや否や、何か大声で叫んだ。

そして突然、変身した。

一人は角のある巨大な白い馬に。

もう一人は、手が六本、頭部には顔が三面。

そして翼を生やした、見たこともない化け物だった。


馬の角がピカッと輝いたその時、

前列に展開していた数十人の騎士が一瞬にして黒こげになった。


何が起こったのか理解が追いつく前に、手が六本の化け物は騎士達に襲いかかる。

武器は持っていないものの、一度その手に捕まったが最後。

ある者は掴まれた箇所を握り潰され、ある者は凄まじい勢いで地面に叩きつけられ、

ある者は無理やり引き裂かれ、ある者は生きたまま頭部を引っこ抜かれ。

黒こげにされた方がマシ、というような殺され方ばかりだった。


阿鼻叫喚。

逃げ惑う誇り高き騎士団員。

惨劇を目の当たりにした、前・第十聖天は騎士団員達を責めるでもなく

アンデッドヒューマンの陣地へと矢文を飛ばした。

全面的に降伏する。だからこれ以上の攻撃は止めてくれ、という内容だった。

任務放棄だったが、団員達の命には代えられない。


ところが、すぐさま返された矢文には、

そんな奴らは知らない、と震える文字で書かれていた。

あくまでもこちらを皆殺しにするつもりか、と怒りに我を忘れそうになったが、

二体の攻撃がアンデッドヒューマンにも及んでいることを知り考えを改めた。


前・第十聖天は即座に撤退命令を出した。




不幸中の幸いだったのは、次に白い角が光ったのは撤退命令が出された後だったこと。

前・第十聖天は黒こげになってしまったが、

何人かは惨劇を免れることが出来た。

そのおかげで《覚醒者》の存在を認知するに至っている。


騎士団長からも耳が痛くなるほど言われている。

《覚醒者》に手を出してはならない、と。


サラはその生き残りに

《覚醒者》と、普通の人間の違いはあるかと聞いた。

返ってきた返事は、絶対にわからない、だった。


そして、こうも言っていた。


「あんな可愛らしい女の子達が、あんなおぞましい化け物に変身するなんて…」

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