【32】
すでに辺りは暗くなっていた。
あの後も数度、"野良"の群れに出くわしはしたが、稼ぎ時とみたのか、
ゼロスが嬉々として野良退治に励んでくれたおかげで順調に進むことが出来た。
駐屯地は砦タイプの建造物で、建物の周りと、高台には松明を持った見張りが配置されていた。
かろうじて砦が視認出来る距離に馬車を止め、
七人と一匹が一堂に会している。
会議の場にいたギルドの内、ギルドマスターが参加したのは《倶利伽羅》桜だけだったが
(一人しかいないのだから当然と言えば当然なのだが)、クエストの重要性を考えて、ギルドの精鋭ということは保障するとのことだった。
会議での流れそのままに、クエストの指揮は《廃人倶楽部》が担っている。
「皆様方、ここまでお疲れ様で御座いました」
《廃人倶楽部》のシリウスが皆を労う。
《スワロウテイル》から派遣されたのは妖魔師マイラ。
名前はマイラではなく"妖魔師マイラ"。
COSに妖魔師なんていう職業はなく、ただの魔法使いだ。
いかにも、という感じで魔女のような格好をしている。
《M-BOX》からはRYU。《M-BOX》はギルドメンバーの九割を吟遊詩人が占めているらしいのだが、
RYUは、そのギルドの中で唯一の武闘家だそうだ。
《宵闇の疾風》銀次。左腕が欠損している。
卍丸にクエストの詳細を聞くや否や、即座に立候補したらしい。
職業は狂戦士。戦士の職業を極めた後、
特殊なアイテムを所持したまま転職すると発現する上位職業だ。
狂戦士になると、他の上位職業に比べ攻撃力は格段に上がるものの、
攻撃する敵は選べない、防御は出来ない、アイテムは使えない、スキルは使えない、魔法も使えない。
まさしく、狂った職業として認知されている。
このクエストに適しているかどうか疑わしいところだ。
「では、若輩ではございますが、私シリウスめが当クエストの指揮を執らせて頂きます」
《廃人倶楽部》シリウスは、珍しくスーツを着用していた。
どのような効果が付与されているのかは不明だが、この世界でも妙にしっくりときている。
イザナギといい、このシリウスといい、《廃人倶楽部》のメンバーは、ギルド名にそぐわず人格者が多そうだ。
「ではこの私、シリウスめが騎士団共の目を潰しますので、その間に皆殺し下さい」
「「「…………」」」
「いいねぇ!そういうの好きだぜぇぇぇ」
大半の者は、作戦とも呼べない作戦に絶句していたが、約一名。
武者震いしながら無い筈の左腕をさすっている。
「も、もうちょっと何かないのか?…せめてソルティキャットと"子供"達の場所を把握してからとか…」
修行僧のような格好をしたRYUが至極当然な疑問を口にする。
「出来れば、気付かれる前に全員瞬殺頂ければ」
シリウスが平然と答える。
「きゃ、却下だ!それ却下ぁ!!」
マコトは思わず突っ込んでしまった。
《廃人倶楽部》には人格者が多そうだと思ったつい先ほどの感想は自分の中で削除する。
マコトにしてみれば、あまりの杜撰な計画に
反射的に反応してしまった程度だったのだが、
この一言がきっかけで後々、多大な苦労を背負うことになる。




