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【31】

「おーい!モンスターが来たぞぉぉい」


前を走る馬車から気のない声が聞こえてきたのは

ゼロスが制裁を喰らってからしばらくしてからだった。


「モンスター?!なんで?」


「何をそんなに驚いてるんだい、マコト」


「…」


状況を理解していないのはマコトと一匹のモンスターだけだった。


「いや、だって……。モンスターが出るのはダンジョンだけじゃないのか?!」


「何を言ってるんだ、キミは。ここでは普通のことだろ」


桜を見ると頷いている。


「まさかとは思うが…。こちらの世界に来てから街の外に出てないのか?」


「今日が初めてだ」


「「!!!」」


ゼロスと桜は驚愕の表情だ。


「それはあり得ないだろ…。キミ達、どうやって移動してるんだ?」


「え…。あ、そうか…」


「そうか…じゃないよ」


「……」


「まぁいい。とりあえずモンスターはボクに任せてくれたまえ」


「一人で大丈夫なのか?!」


「問題ない」


桜も同意見のようだ。


「マスター不在の低レベルダンジョンからモンスターが湧き出ているんだ」


「ダンジョンから?」


「ああ。こちらの世界に取り込まれなかったプレイヤーのダンジョンだ。モンスターは総じて……弱い」


「へぇ。じゃあボスを倒せばそのダンジョンは自分の物になるって訳だな」


「「……」」


ゼロスと桜が冷たい視線を突き刺してくる。


「な、なんだぁ?」


「それは止めておいた方がいい…」


「なぜ?」


「フィールドのモンスター…ボク達は"野良"と呼んでいるんだが、これが結構な収入になっているんだよ」


「あ…なるほど」


モンスターを倒せば素材アイテムや少々のゴールドをドロップする。

これはこのゲーム(COS)の基本的な要素だ。


「仮にそのダンジョンを誰かが制覇してしまったら、モンスターが野良化しなくなる」


「確かにそれは死活問題だ」


「ああ…。…よし、来たな」


ゼロスが馬車の外に降り立つ。


「キミ達の相手をするのは、《ソード&ローゼズ》ゼロス!」


「(うわ…。モンスターに名乗り挙げてるし…)」


対面に座る桜を見ると、彼女もドン引きしていた。


「いざ、尋常に勝負!」


ゼロスの職業は戦士。双剣使いだった。

小振りな剣をそれぞれ両手に持ち、ものの見事にモンスターを切り刻んでいく。


「意外だ。結構強いじゃん、ゼロス」


「…マコト」


「ん?なんだ桜ちゃん?」


車内についた小窓から、ゼロスの奮闘を見ながら意識を桜にやる。


「…転移アイテムを持ってるのか?」


「持っていたら?」


「…コルトス=グリードに連れて行って欲しい」


「なぜ?」


「言えない」


「…ふむ」


マコトは一瞬だけ隣に居るモンスターを見やる。

モンスターは微動だにせず、正面を見据えたままだ。


外にはゼロスの剣戟が(けんげき)響いている。


「…転移アイテムの希少価値は承知しているだろ?」


「…」


「仮に…。もし仮に俺達がそんな物を持ってるなんて知られたら、明日には酒場の掲示板にクエスト貼られちゃうよ?」


「…」


ギルド会議で《☆10神々の遺産級(ゴッズトイ)》を見せたのは、

それが武器だったからだ。

武器ならば一度見せた後、何処かに隠せば問題ない。

但し、転移アイテムとなると事情が異なる。

なぜなら、転移アイテムがあれば場所を一瞬で移動出来るということ、

即ち、自分自身の安全確保のためにも有効なアイテムなのだ。

それを手元に置かないなんていうのは有り得ない。

想像に難くない。

それを持っている事が知れ渡ってしまったらどんな事態になるか。


「さっきの話で勘違いさせちゃったんだったら謝るよ。今まで、ただ単に街に閉じ籠ってただけなんだよ、俺達」


「…」


「だって怖いんだもん、この世界ってば」


マコトは笑って誤魔化す。


「…頼む。マコト…」


「だから持ってな…」


「仲間がいるんだ。コルトス=グリードには…」


「…仲間?はぐれてしまったのか?」


桜が真っ直ぐに目を見てくる。

話すかどうか迷っているのだろう。

マコトは、誰にも言わない、という意味で軽く首を縦にした。


「厳密に言うと…私がはぐれてしまった」


「どういうことだ?」


「《倶利伽羅》のメンバーは全員、コルトス=グリードにいるんだ」


その日は、コルトス=グリード近郊にて

ギルドメンバー全員参加でのダンジョン攻略を計画していたらしい。

が、桜の都合が急遽悪くなり、一旦、ウェルネ=デザイアに戻った。

その時に激しい頭痛に襲われ、意識が飛んだそうだ。


「そりゃあツイてなかったな。でも桜ちゃんのレベルなら一人でも行けるんじゃないの?」


外を見る限り、襲ってくるモンスターは弱い。


「ダメなんだ…。南東にあるコルトス=グリードに行くには、どデカい山脈を通らないといけない……」


「あ…《虹竜の巣岳》か」


「よく知ってるな」


「まぁな…」


「……」


「あの《ウォンテッド》を一人で抜く自信はない」


「(さて、どうするか…)」


「でぃやややぁっ!!」


ゼロスから一際大きい声が聞こえてきた。


「桜ちゃん。とりあえず今はソルティキャットさんの救出が最優先だ。話はそれが終わってからにしよう」


「…そうだな。わかった」


マコトは保留を選択した。

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