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18/62

【18】

応接室は交渉をする場でもあり、気品漂う造りに仕上げられている。

この部屋の主が見繕ったものではないのは一目瞭然だ。


部屋のど真ん中に位置する高そうな木のテーブルに、

それを囲むように配置された固めのソファに四人で座っている。


「"あの時"以来やな……」


「はい。街の様子を見て驚きました」


ユウゴは素直に称賛した。


「フフ。もうすっかり"街"やってたやろ?」


「みんな頑張ったんですね…」


「ちょっと、シャルちゃん!ウチを泣かす気か?」


「い、いや…そんなつもりは…」


「ハハハ。冗談やん」


「……」


ところで、とタケが切り出した。


「さっきの夫婦のことだが…」


「ああ。パルムに聞いたんやな…」


「一体どういうことなんだ、NPCが生きてるって…」


「そりゃ驚いたで!いきなり店に来たからな、買い物しに…」


「くくっ。それはウケるな…」


「やろ?でも…その顔見とったらそうも言えんくてな…」


「…顔?」


「…めちゃくちゃビビってたんや」


「……」


「…ビビる?なぜ?」


マコトにはわからなかった。


「そりゃそうやろ…。NPCにしてみたら、猛獣の群れが大挙してきたようなもんやで」


「……」


「それに、アホなことしよるプレイヤーも多かったしな…当時は」


「らしいですね…」


「その時来てくれたお客さんなぁ。今では常連さんで世間話もよくするけど、相当、勇気を振り絞ったみたいやわ。ウチの店に来るのに」


「そこまでして、何故来たんですかね?」


「興味も強かったみたいやけどな。でも一番の理由は…」


「……」


「仲良くなりたかったんやと…」


「…感動だな」


「タケ。似合わんこと言うなや」


「…黙れ」


「ハハハ。感動したのは事実や…。そういう訳でウチのギルドで自警団みたいなことをな……」


「なるほど…」


「チッ…。なんか湿っぽくなってもうたやんか…」


関西人の潮は、シラケた場を嫌う。


「そもそもなぜNPCに意識が芽生えたのか…」


タケは答えを求めない呟きを漏らした。


「まぁそれなりに考えてみたけどな…」


「……」


「おかしいのはNPCじゃなくてウチらやろ?」


「「「あ…」」」


三人とも間抜けな声を上げてしまった。


「なぁ?抜けてたやろ、そこ」


「フフ…そう言われればそうだ」


「ウチらもその考えに至ったからこそ、積極的にプレイヤーの取り締まりをな…」


「確かに一理ある。プレイヤーが納得するかどうかは別として」


「…タケ。お前はいっつも一言多いな?」


「……」


「で、どうなんですか潮さん。味方ですか、NPCは?」


「……んー難しいな、その質問は」


「難しいとは?」


「単純に考えてみ?仮にマコトが街でプレイヤーとすれ違ったとして、そいつが味方かどうかなんて、短時間ではわからんやろ?」


「……それもそうですね」


「それと一緒や。でもまぁ、街におるNPCは大丈夫や」


セーフティゾーンがあるのは心強い。


「問題は…"聖天騎士団"やな。…って知ってるか?」


「あ…そういやあったな、そういう設定…」


「「??」」


思い出せたのはタケだけだった。


「まぁウチも知らんかったけど…。逆に知ってる方が気持ち悪いわ」


「だんだんムカついてきたぞ…」


教会は全て聖天騎士団の管轄。という設定だ。


「それの何が問題なんですか?」


「……"デスペナ"について何か知っとるかもしれん」


「ほ、本当ですかっ!!」


珍しくユウゴが感情を露にした。


「……ああ。確証はないけどな…」


「詳しく教えて……」


その時。


『ビィィィン!ビィィィン!《焔の剣ヶ峯》に侵入者です!』


ユウゴの耳元で女王蝿のミセスビィンがけたたましく哭きだした。

ダンジョンに侵入されたことを知らせるモンスターだ。

産み出した子蝿をダンジョンに張り巡らし警戒にあたっている。


戦闘力は皆無。

ただ侵入者を知らせるためだけに存在するミセスビィンだが、その恩恵は絶大だ。

ゲーム時代、こいつがいなければ常に全ダンジョンを見張る必要があり

おちおち寝ることも出来なかった。


「く、くそ!こんな時に……」


ユウゴは勢いよく立ち上がった。


「ど、どうしたんや?!シャルちゃん…」


潮はその勢いに気圧された。

マコトとタケも何事かという顔をしている。


「侵入者です…」


「ミセスビィンかっ?!」


「うん」


「急いで戻るぞ!」


「あいよ」


それぞれ、装備品の内側に隠し持っていたピンポン玉サイズの"何か"を取り出す。


[頼豪鼠の頬袋]

《☆8皇家の財宝級(オブエンペラー)

効果:アイテムを3品まで入れることができる。

使用回数:無制限


たった3品しか入れられないものの、アイテムのサイズは無制限。

しかも一旦中に入れると重さはほぼ感じず

それ自体も小さいので、所持コストが低く盗まれるリスクも少ない。

但し、同様の効果を持つアイテム、

例えば[頼豪鼠の頬袋]の中に [頼豪鼠の頬袋]を入れることは出来ない。


三人はそこから、一枚の虹色に輝いた羽根を取り出す。


「ぁぁぁ……。いつ見ても綺麗やな…それ」


[不死鳥の風切羽根]

《☆9伝承の遺物級(フォークロア・アーティファクト)

定員:1名

効果:訪れたことがある座標へ転移出来る

使用回数:無制限

他プレイヤーが創ったランクS以上のダンジョンでは使用不可


「こんなモノ…。欲しかったらいつでもあげますよ、潮さん」


「い、いや…それはアカンて、シャルちゃん…」


潮は生唾が出そうになったが必死に抑え込んだ。


「前に言うたやろ…。それは《魔具師》としてのプライドが許さん。絶対にそれと同じモノを作ったるからな」


「ふふふ。協力出来ることがあれば言ってください」


ユウゴと潮のいつものやり取りが終わったところで準備が整った。


「よし、行くぞ!」


三人は羽根を頭上に放り投げた。

その瞬間、羽根は三人を吸い込み、光輝いたのち消えた。


「…また"子供"が増えるんか。あいつらに非はないとはいえ、早いことどうにかせなアカンな…」


"デスペナ"とはデス・ペナルティ。プレイヤーが死んだ時の経験値ロストのこと。





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