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15/62

【15】

ダンジョンに入るな、と警告するということ。

これは異常な行動といえる。

なぜなら、ダンジョンを創る目的は、"プレイヤーを殺したいから"に尽きる。

ダンジョンでプレイヤーが死ねばアイテムやゴールド、経験値がドロップし、

それがそっくりそのままダンジョンマスターの収入となる。

だからこそ、誘いこそすれ、拒むなんていうのは支離滅裂なのだ。なんの為に創ったのか。

「ここは簡単だよ、みんなおいでよ」というのはわかる。

「難しいから帰れ」とわざわざ教える理由がわからない。


という話を昔したことがある。

攻略サイトの管理人達は《魔窟王》の存在を気に掛けていた。

《魔窟王》に留まらず、新たな《バスター》の出現を常に警戒していた。

それも当然だ。管理人なんて皆、一番になりたい奴ばかり。

たった一人の《バスター》の出現で、勢力図が大きく変わる可能性を秘めているのだから。

《ボステイマー》と《女衒》は簡単に潰せたが、

現に《魔具師》には一瞬であの地位を築かれてしまった。

やり方さえ間違えなければ容易くそういう事を出来るのが《バスター》なのだ。

《バスター》さえ発現すれば、と何度願ったことかわからない。

グリシャムに至っては、収入の全てをパッケージ版COSの購入に充てていた。

端から見ていて哀れになるほど《バスター》に囚われていた。


《魔窟王》の文言を初めて見た時はそれは興奮したものだ。

《バスター》は、そのネーミングからおおよそ能力の見当がつく。

もしも《魔窟王》が《バスター》だと仮定した場合、おそらくダンジョン創りに特化した職業だろうと。

洞窟の"窟"。洞窟をダンジョンと考えれば、"ダンジョンの魔王"と解釈出来る、という意見が大半を占めた。

これにはバッツも納得だった。

一体、どんな能力を持っているのか。色々と考察して朝まで盛り上がったのは良い思い出だ。


そんな時だ。そのダンジョンを見たのは。


パーティは42人編成のレイド部隊。公式攻略サイトの編成部隊だった。有名なメンバー達だった。

ダンジョンの編成限界リミットは60人。難易度はMENACEメナスだったが、このメンバーなら問題ないだろ、と誰もが思っていた。

ところが、その精鋭中の精鋭が、たったの三階層で全滅した。それもあっさりと。

この様子は動画サイトのリアルタイム配信で見ていたが、あまりにも残酷な光景だった。

残酷というのは、殺され方ではない。

通常ではありえない量のアイテムとゴールドをペナルティドロップしてしまっていたのだ。

画面からは落ちたアイテムの詳細はわからなかったが、他人事ながら、涙が出そうになったほどだ。


後日、その攻略サイトが情報を上げたところによると、

《☆8皇家の財宝級オブエンペラー》、《☆9伝承の遺物級フォークロア・アーティファクト》、

《☆10神々の遺産級ゴッズトイ》。これらのアイテムもドロップしてしまっていたそうだ。

☆8以上の二つ名が付くアイテムは、課金ガチャ専用のアイテムのため

ペナルティドロップはない、とされていたのでこれには驚いた。

ほとんどのアイテムは情報しか知らないアイテムだったが、

一つだけ実際に見知っているものがあった。


グリシャムが、〔不死鳥の風切羽根〕欲しさに夏のボーナスを全て突っ込んだ。

結果は―。☆9以上なんて狙って出るはずもなく。

その時、プライドの高いグリシャムが泣いていたなんていう話は知らない。


ただ、COSのガチャには、ある一定金額の課金をすると、

☆8の好きなアイテムを一個貰えるという救済措置があった。


その時にグリシャムが選んだのが、


〔ヘリオポリスの羽根〕

《☆8皇家の財宝級》

効果:訪れたことがある座標へ転移出来る

定員6名

使用回数:無制限

ダンジョン内では使用不可


〔不死鳥の風切羽根〕の下位互換ではあるが、COSにおいては非常に珍しい転移アイテムだったので即断していた。


これよりも価値が遥かに高いアイテムを

複数失った突入メンバー達には心の底から同情した。


そのダンジョンでは常に警告が鳴り響いていたのも印象的だった。


ただ、スポンサーありきの大人達だ。次の日。金の力にものを言わせてダンジョンの編成限界である60人で再突入したらしい。

が、なんとダンジョンが無かったそうだ。跡形もなく。

普通では考えられなかった。

このクオリティのダンジョンをそんなにも簡単に破棄出来るわけがない。


その時、《魔窟王》のことが頭をよぎった。

もしかすると、本来ならペナルティドロップのない☆8以上を落とせる能力があるのではないか、と。

たった一日でダンジョンをコピー、もしくは移動出来る能力があるのではないか、と。


その後も警告が鳴り響くダンジョンの話は尽きなかったが、再突入すると影も形もなかったそうだ。


それ以来、警告を発するダンジョンのことは頭の片隅に常に置いていた。

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