【14】
騒々しかった警告も入口に着くと鳴り止んでいた。
「五月蠅いギミックだったな」
「ええ、ホント。無駄に気疲れしちゃった」
「……」
「よし、入るぞ!油断するな………ん、なんだ?」
そこには看板が立てられていた。
―これはこの世界に来てから書いたものです。
文章はこう始まる。
警告を聞き入れてもらえないこと残念でなりません。
始めに言っておきますが、このダンジョンには現実に戻るための"何か"は一切ありません。
あるのはアイテムとゴールドだけです。
この世界ではダンジョンの詳細が確認出来なかったと思うのでここに書きます。
ここの難易度はMENACEです。……
「おい、グリシャム。……引き返そう」
「…ま、まぁ待てバッツ。まだ続きがある」
リーダーであるグリシャムは続きを読む。
ここに来るまでにあった警告はゲーム時代に設置したギミックです。
本当の警告は今書いているコレです。
お願いします。
帰って下さい。
あなたを教会に送りたくはありません。
このダンジョンに大したモノはありません。
お互いに現実に戻るための方法を探しましょう。
お願いします。
本当に帰って下さい。
最後になりますが。
ゲーム時代。
このダンジョンは《ウォンテッド》でした―
「な…、《ウォンテッド》だとっ?!」
これにはグリシャムも驚いた。
「う、ウソだ!《ウォンテッド》は全て把握してるが、ここは聞いたことがない」
ダンジョンの価値はランクで表わされる。Hから始まり最高はS。レアアイテムやゴールドをどれだけ配置しているかによりランクが決まる。
編成限界は一度に侵入できる人数の上限。
モンスターの強さもこれが目安となる。編成限界がなければ、全プレイヤーで圧殺という横暴がまかり通ってしまう。
難易度。ランクと編成限界を総合的に加味され、そのダンジョンの難易度が算出される。
最低難度がEASY、最高がMENACE。
《ウォンテッド》とは運営が認めたダンジョン。
芸術性、難易度、アイテムの価値などが高いと評価されたダンジョンは、
クロニクル・オブ・スカンディナビアの公式サイトで紹介された。
個人を槍玉に挙げるような行為に批判が頻出しそうなものだったが、
掲載数が極少数だったこともあり、大きな批判には繋がらなかった。
むしろ、目標が出来た大多数のプレイヤーからは神対応と称賛されたほどだった。
この掲載の仕方が、いわゆる賞金稼ぎが目にする、掲示板に張り出されたチラシみたいな仕様だったことから、《ウォンテッド》と呼ばれるようになった。
「……《魔窟王》」
「…なんだ、バッツ!」
「おそらく《魔窟王》が創ったダンジョンだ…」
「…?」
「一時期、俺達のサイトでも噂になっただろ?」
グリシャムのパーティは、攻略サイトの管理人の集まりだった。
「俺達管理人は検索エンジンの履歴が閲覧出来る。一週間位の間だったが、頻繁に《魔窟王》と検索されていた。それも一つのIPアドレスから…」
「あっ!あれか……。確か《女衒》が明るみに出た頃に…」
「そうだ。そのせいで検索が途絶えた。おそらく自分が《バスター》だと自覚したんだ」
「……くぅ」
沈黙が辺りをつつむ。
「なぁ、グリシャム。…帰ろう」
「……」
「……グリ」
「ダメだ」
「グリシャム……。おい、お前らも何とか言え!」
「……」
「バッツさん、まぁ落ち着いてくださいよ。そもそもダンマスが勝手に言っているだけです」
「……雲助ぇ」
雲助の言うとおりだ。証拠はない。
「余程、奪われたくないアイテムでもあるんでしょう」
「フフ。絶対そうよ…」
紅一点はまた舌舐めずりしている。
「バッツよ。俺達がクリア出来ないダンジョンなんてあると思うか?」
「チッ」
確かにゲーム時代は一度も全滅しなかった。
「最悪、アイテムだけ盗って帰ればいいだけだ」
「……」
バッツは何としても説得したかった。




