【11】
「もちろん素材の商談じゃないよな?」
「ええ、当然です。魔具に必要な素材は《魔具屋-塩猫-》の最高機密です。自分達で調達出来ない素材は一切使いません」
絶大な効果をもたらす魔具。その素材の一端でも知られれば
価値が高騰し、入手が困難になるというのは想像に難くない。
「じゃあ一体、何の商談をしてるんだ?」
踏み込み過ぎている嫌いはあったが、遠慮より興味が勝った。
「それが……NPCなんですよ。……相手は」
「「なんだって?!」」
話を聞いていただけのタケも驚いた。
ユウゴは辛うじて声を抑えることが出来た。
「え、NPCってあのNPCだよな?!」
「はい……そのNPCです……」
ノンプレイヤーキャラクター。
ゲームのシステムとして設置されている。一番メジャーなところで言えば、街の入り口にいる女の子。「ようこそ!○○へ」しか言わないキャラクター。
「自分から喋るのか?!…NPCが?」
「ええ。…というか…」
「…なんだ?」
「プレイヤーと区別がつきません。普通に生きています…」
「ま、マジか…」
マコトとタケは顔を見合わせる。
こちらの世界の状況に疎かったとはいえ、あまりにも衝撃的な事実だ。
「で、何なんだ?」
「…は?」
「何の商談なんだ?」
「あ…用件は魔具屋ではなく、ギルドです」
「ギルド?」
「はい―」
NPCの住居は、当然、街の中にある家だ。
その家と、それに付随する財産を奪おうとするプレイヤーが後を絶たないらしい。
取り込まれた当初に比べれば、
そのような蛮行は減ってきているらしいが完全には無くならない。
その取り締まりをギルドへ依頼しに来たそうだ。
「ギルドも大変だな…」
「ええ。正直、微妙なところではありますからねぇ」
「…確かに」
片やゲームのシステムでしかないキャラクター。
片やこちらは取り込まれた人間。
どちらを優先すべきか明白なもんだが、やはりそこも人間だ。
関わってしまった者を見殺しにするのは忍びないのだろう。
「実際に批判も多くきています…」
「だろうな…。潮さんらしいというか…」
マコトは苦笑した。
「まぁ、自分達のギルマスを信じていればいいさ」
「流石、マコトや。ええこと言うやないかぁ」
商談を終えたのだろう。品のある老夫婦と、
動きやすそうな鎧を着た大柄な女性、ソルティキャットこと潮が二階から降りてきた。
「潮さん。お久しぶりです」
「ほんまにな。生きとって何よりや」
「ソルティキャット。久し―」
「まぁまぁ、立ち話もなんや。上いこか」
「…」
タケの挨拶は途中で遮られた。
昔からタケはよくイジられる。潮はインテリが好かないらしい。




