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まほうつかい

作者: 雪月雪姫

途中から何を言ってるのかわけわかんなくなります、ご注意下さい。



「こんばんは、お嬢さん」


 そう、声をかけてきた老紳士は、私の隣に腰掛ける。


「お嬢さんは何か、夢があったりするのかな?」


 老紳士は私の方は見ず、ただ空を見つめていた。その目は、とても穏やかなものだった。

私は静かに首を振ると、老紳士はくすりと小さく笑った。


「お嬢さん、君は嘘を吐いているね。君には、叶えたい願いがあるはずだ」


 私には分からなかった。私の叶えたい願いがどのようなものなのか。あるのか、ないのか。

どうしてこの老紳士が、私に話しかけてくるのかも、わからなかった。


「君の願いを叶えてあげよう」


 そう言った老紳士は、初めて、私の方を見るのであった。その姿はとても、とても、巨大だった。

大きな瞳には吸い込まれそうで、恐怖さえも感じた。

 大きな手は私の方に伸びてくる。逃げようとしても、その手は私を捕まえるのだ。

そして老紳士は小さく、何かを呟き始める。すると、老紳士がみるみるうちに小さくなっていくのを感じた。

周りのものも、私が“住んでいたトコロ”も、すべてが小さくなっていくのだ。

そして、その現象が止まったとき、周りが小さくなっているのではなく、私が大きくなっているのだと理解した。


「君は完全ではない」


 老紳士は先ほどとはうって変わって、厳しい口調で続けた。


「君はしゃべれるようになった。歩けるようになった。感情の幅も広がっただろう。しかし、それは一時の魔法でしかない。

 その力が永遠に続くと勘違いしてはならない。その力の永続を、求めてはならない。

 私ができるのは、ほんの少しの間、君に魔法をかけてやることだけだ。それも君の一生でただの一回きりだ」


 私には何が起こっているのか、老紳士が何を言っているのか、理解することはできなかった。


「……さぁ、その綺麗な声を、聞かせておくれ」


 老紳士は悲しそうに私を見るのだ。ほんの少しの期待と、絶望、すべてが混じり合った目で、私を見るのだ。


「………………」


 目の周りが熱くなるのを感じた。そして、私の目からは、一筋の水が流れ落ちた。


「それはね、涙というんだよ。君の身体は大きく変わった」


「……わ…………し……」


「……」


「わた、し……は……」


 初めて出す声というものは、不思議な気がしてならない。


「私は誰なの……?」




* * *




 その日は妙にけだるい朝だった。朝の光が眩しくてもう一度布団に潜り込む。

うるさい音を出しながらふるえる時計を叩くと、一気に辺りはしんと静まりかえった。

しかしそれも束の間、ゆっくりと階段を上がってくる音が聞こえる。


「愛里。もう朝だよ。起きなさい」


 聞き慣れたしわがれた声が私の耳に届く。もぞもぞと布団の中で身をよじり、あと五分、などと呟く。


「学校に遅刻したらどうするんだい?」


「……う」


 ゆっくりと布団から起き上がると、しわがれた声の主は、ぷっと吹き出した。


「…………なぁに、おじいちゃん」


「すごい頭だ。どれ、じいちゃんが梳いてやろう」


「いいよ。それくらい自分でできるし」


 よっこいせ、と布団から出ると、ひとつ伸びをする。

やはり身体はけだるいのだが、そんな身体にむち打って、私は仕度を始める。


「それじゃ、じいちゃんは朝飯でもつくってやろうかね」


 そう言っておじいちゃんはそっと扉を閉めようとする。


「いつもありがと」


 微笑みかければ、おじいちゃんはどこか複雑そうな顔をしたあと、にっこりと笑って扉を閉めた。

そしてこんどは、ゆっくりと階段を下る音が聞こえた。 

おじいちゃんの少しの表情の変化など、私は全く気にしなかった。

それよりも早く仕度しなきゃ、という気持ちの方が上回っていた。

 仕度が終わり、階段を下りて居間に向かうと、食卓の上に白いご飯が乗っている。


「いただきます」


 ご飯を食べようと口を近づけ、あちっ、と口を離せば、愛里は猫舌だね、とおじいちゃんが笑った。


「よく冷ましてからお食べ」


 無事に朝食を済ませ、学校へと向かう。けだるかった身体が嘘のように軽く、私ははしゃぎながら道を歩いた。

おじいちゃんは、いってらっしゃい、楽しんでおいで、と言っていた。


「あーいーりっ、おはよ!」


「おはよう」


 途中の道で声をかけられ、私は振り返る。友達の美紀だ。


「……愛里、今日なんか変?」


「え? 何が?」


 少し悩んでいたが、まぁいっか、と笑い出す。私も、変なのは美紀の方じゃない、なんて笑った。

 学校について、いつも通り授業を受ける。なんだかいつもより楽しくて楽しくて、仕方なかった。


「愛里、水道水なんてまずいでしょ、よく飲むね」


「んー……なんか喉が渇いちゃって」


 他愛ない話をしながら、私は学校生活を満喫していた。

友達と笑い合って、好きな人と目があって胸を高鳴らせて、居眠りして先生に怒られて……

とっても充実していた。とっても楽しかった。とっても、幸せだった。




 でもなにか なにか 物足りなかった 




(そっか……おじいちゃんが、いないからか)




「ただいま、おじいちゃん!」


 家に帰ると、おじいちゃんに飛びつくように駆け寄る。


「どうしたんだい、愛里」


 おじいちゃんは私を避けるかのように一歩身を引くと、にっこりと笑った。

その行動を見て、それは私のためだと思った。


「私ね、もう良いの」


「……」


 そう告げると、おじいちゃんはびっくりして、目を丸くさせた。


「とっても楽しかった。おじいちゃんの孫娘になれて」


「……」


 続けると、今度は悲しい顔になった。


「『それは一時の魔法でしかない。その力が永遠に続くことはない。その力の永続を、求めてはいけない』」


「……」


「そう言ったのは、あなたでしょ?」


 おじいちゃん……老紳士の瞳から、ぽたり、ぽたりと涙がこぼれ落ちる。


「あなたは私を気遣って、私に触れなかった。友達や他の人たちも私に触れなかった。

 ごはんだって、あれでもとても冷ましてくれてたんだよね。私が火傷しないように」


 私の身体は完全じゃない。暖かいモノに触れることは出来ない。


「私、本当はお婆ちゃんだし、こんな若い姿になれて嬉しかったよ」


 老紳士は声を殺して、泣き崩れていく。

私の心中はとても穏やかなモノだった。すべてを、理解していた。


「楽しかったなぁ、学校というもの。でも私の居場所はね、あなたの隣よ。

 いつもエサ、ありがとうね。私はなんでも食べちゃうから、よく池を汚しちゃったね。

 もう魔法の時間は終わりだよ。私を池に帰して」


「ごめんよ……ごめんよ……」


「どうして謝るの?」


「私がお前を無理にこんな姿にしたばっかりに、お前の寿命を縮めてしまった」


「……いいの。私、あなたとお話しするの、夢だった。もっと話せれば良かったのにね。

 学校なんて、行かない方が良かった。あなたとお話ししていればよかった」


「行かないでおくれ」


「大丈夫。ずっとここにいるから。話せなくても、いるから」


 私は静かに池に潜っていく。

老紳士は、泣きながら、パンくずと今朝炊いたごはんを池へとばらまいた。





 人間になりたかった。……わけではない。私は何も思っていなかったし、ただエサに囲まれて池を悠々と泳いで。

私を人間にしたかったのは、老紳士の方だった。どうして人間にしたかったのか、今ではもう分からない。

 私は今も池を泳いで、次の家の持ち主からエサをもらう。もうなにも、考えることは出来ない。












見事にやっちまった系です。こんばんは。深夜テンションで書くものじゃないです。またもや何を書きたかったのかわけわかんないことになりました。お察し下さい。

そして、愛里は鯉です。もともとは金魚の予定でしたが、急遽変更しました。あと老紳士と愛里は恋愛関係にはいません。絆みたいなものはあるんじゃないですかね?

此方の作品ですが、冒頭は同じで違う話を書くかもしれません。こんな話になるはずじゃなかったので。

久しぶりに書いたけどやはり私は小説書くの向いていないのかも……と落ち込みそうです……

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