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井上達也 短編集2(恋愛小説はレタス味)

文化祭の準備の帰り道は、何かが起きる

作者: 井上達也

 僕は、会社員になった。そこら辺にいるサラリーマンである。片道、一時間かけて満員電車に揺られて会社に出社する。土日は休みだが、平日はいつもこんな感じで過ぎて行く日々だ。駅のホームに向かえばそこには人、人、人。経済新聞を読む頭の良さそうなサラーリンマン、受験を控えているのか英語の単語本を片手に立っている制服の高校生の男の子、携帯電話を手に持って画面とずっとにらめっこしている若い女性。僕は、毎朝その列に申し訳なさそうに後ろに並ぶ。季節は変わって、気温の変化による服装の変化はあったとしても僕の気持ちは変わらない。また、同じ一日の繰り返しかと思うのだ。

 そんな同じ毎日の中で、僕はある時古い友人久しぶりにあった。出会った場所は、駅のホームだ。

「あれ、コージじゃん。何してんの?」

 いきなり、声をかけられた。声がするほうに向くと中学の同級生だった、ようちゃんがその場所に立っていた。

「あ。ようちゃんじゃん。そっちこそ何してんの?」

「質問を質問で返すなよ。俺は、これから仕事だよ。東京の方に会社があるから結構遠いんだよね」

 ようちゃんは、少々笑いながら僕の質問に答えてくれた。たしかに、質問してきたのはようちゃんだった。僕ではない。

「へえ。ああ、僕もこれから仕事なんだ。川崎のほうに会社があるからようちゃんよりかは近いかな」

 僕は、笑って彼の返事に答えた。それから、僕たちはお互いの近況を話し合った。高校のときはどうだったとか、大学はいったのとか。本当にお互いが知らない部分を知りたくって、共有できていない時の質問ばかりしあった。なんだか、いつもの退屈なルーティーンの中に、ぽっかりとようちゃんがドリルで穴を開けてきて、僕を救い出してくれたような気がした。

「そういえばさ、おまえって今彼女とかいんの?」

 古い友達に会うと、大抵この質問はくるのだが、ようちゃんも例外ではなかった。ようちゃんとは中学校の頃、本当に仲が良かった。同じクラスだったから、体育の授業の二人組にもよくなったし、席も隣になることが多かった。そして、恋バナについてもよく語った。

「ああ、今?んー居ないんだよね。彼女」

 ようちゃんは、ふーんと言った。別に、彼が同性に興味のあるようなタイプではないため、さほど意味は無い返事だと思うことにした。

「そういや、お前中学の頃さ付き合ってたヤツいたよな。えっと……たしか……なっちゃんだっけ?」

 僕は、そのことについては忘れようとしていた。ナツコちゃん。正確には、山形夏子。僕の初恋にして初めての彼女である。彼女との交際は僕にとってそれはそれは思い出のある話である。でも、正直それは思い出したくもない話である。



 話は、中学生まで遡る。中学二年生の頃だ。僕は、好きな人が初めてできた。クラスの夏子ちゃんである。みんなからはなっちゃんと呼ばれていた。黒くて肩にかかるくらいの長さの髪で、身長はさほど高くない。がっちりしてなく華奢な体で、僕からしてみたらお人形のように可愛かった。

 好きになったきっかけは、文化祭だった。今考えてみれば、よくある話だ。一緒に、文化祭の準備で教室から机を二人で運んでいた。

「ああ、僕が机もってあげるから、山形さんはほうきで床を掃いておいてよ」

 教室に、美術の授業で作成した作品を展示するために不要な机は、予備教室に運んでいたのだ。どういうわけか、他の人たちは他にやることがあるからと、この仕事を僕たちに押し付けてきたのだ。放課後に。どうせ、やることなんてなくて準備が面倒で、僕らに無理矢理押し付けたんだろうとこの時思っていた。

「あ、ありがとう。優しいんだね」

 夏子ちゃんにお礼を言われてしまった。彼女は、笑って僕に言ってきた。僕は、赤面していたに違いない。

「そ、そんなことないよ。別に。重いものを持つのは男の仕事でしょ。ほら、早くはいて」

 僕は、ほうきをはくジェスチャーをして彼女に早く床を掃くように催促した。彼女は、うんわかった、と頷いて教室の床を丁寧に掃き始めた。僕は、その間に机を重ねて運んでいた。なかなかの重労働である。中学生ながらにして、いや僕はペンよりも重いものを最近持ったことが無いんだよ的な言い訳をなぜだか頭の中で考えていた。

「あ。おかえり。床の掃除は終わったよ」

 彼女は、僕が運び終えて教室に戻ってくると机の配置が書かれた紙を見ているようだった。

「じゃあ、次は残った机で展示スペース作っちゃおっか」

 僕は、そういうと彼女のほうに行き、彼女の持っている紙に目を通そうとした。

「近いよ」

 近づいて見ていると、彼女は突然ぼそっと優しく僕にこう言った。別にやましい気持ちとかがあったわけではないのだけれど、どうやら肩が触れていたらしい。日没まであともう少しといったところの夕日が差し込む教室にいる二人に、暫しの緊張が走った瞬間だった。

「ご、ごめん!気持ち悪かったね。ごめんごめん」

「ううん。別に良いんだけど、なんか近かったから緊張しただけ。コージくんいきなり近寄ってくるもんだからさ」

 そう言うと彼女は、はははと笑った。


 その後も作業は続いた。机を並べて、その上に青色の方眼紙を敷いた。地味な作業だけど、なかなか方眼紙がいい感じに広がってくれなかったのであった。気がつくと、教室の外はまっくらだった。

「うわ。もうこんな時間。夏子ちゃん、帰らないと!」

 僕は、作業に没頭するあまり、時間を忘れてしまっていた。でも、それは夏子ちゃんも同じだったみたいだった。

「ああ、本当だ!帰らないと先生に怒られちゃうよ!」

 僕たちは急いで帰りの支度をした。カバンを手に取って、急いで、いや教室から逃げるようにして僕らは昇降口に向かい、上履きから外履きに履き替えた。

 昇降口を出ると辺りは真っ暗だった。かろうじて、体育館で部活をしている生徒はいるらしく、体育館の明かりはついていたが、ほとんどの生徒は帰宅していた。

「真っ暗だね。ごめんね夏子ちゃん。帰れそう?」

「う、うん……なんとか頑張る」

 僕は、じゃあまた明日ねと言って歩き始めた。二、三歩歩いたあたりで、右手の袖を誰かにつかまれた。つかまれた先には夏子ちゃんが立っていた。

「やっぱり一人じゃ帰れないかも。あたしの通学路、夜になると真っ暗になっちゃうんだよね……。ほら、学校の後ろの道あるでしょ。あそこなんだ……」

 僕もその道は知っていた。学校の裏にも一応道があって何人かの生徒は通学路になっている道で、昼間でも木が多く茂っているせいか

薄暗く、街灯もが一本しかない道だ。同級生の間では、あの道はお化けがでるとかいう噂が広がっていて、オバケ道、通称オバみちと呼ばれていた。

「いいよ。僕でよければ一緒に帰るよ」

 僕は、そう答えると、彼女はよかったと口から言葉をこぼしていた。安心した表情を見て僕は安心した。



 学校から、オバ道までは時間はかからない。学校の裏側にあるため、1分くらいである。ただし、オバ道を抜けるための時間は5分以上はかかる。5分と数字だけ見れば比較的短い時間に見えるが、歩いてみるとその倍以上は歩いているような感覚があるものだ。そういう理屈はこの道にも当てはまった。相当長く感じた。

 今は10月だからようやく涼しくなってきた頃だ。でも、まだまだ冬服を着るほどの暑さじゃなかった。僕は、未だにワイシャツ一枚で過ごしているし、夏子ちゃんもブラウスに紺色のベストを着ている。風が吹くと、オバ道にある森が一斉に揺れ、なんだか僕らを歓迎しているのかと思うほど心地よい風音がした。でも、夏子ちゃんにはそうは思えなかったらしい。

 夏子ちゃんは、オバ道に入った瞬間から僕の右腕の袖を左手で握っていた。やはり、少々おびえているらしかった。

「大丈夫?」

 僕は、声をかけてみた。小さい声で、うん、という返事が聞こえてきた。すると、夏子ちゃんが小さい声でしゃべりはじめた。

「い、いつもはね、この時間は家に居るんだ。暗くなる前にはいつも帰るようにしてるんだけどね。今度からは気をつけないとなぁ。コージ君に送ってもらえてよかった。たぶん、一人じゃ泣きながら帰ってたかも……」

 夏子ちゃんが僕に喋っている最中、突然、森の中から何かが飛び出してきた。

「きゃああ」

 夏子ちゃんは悲鳴を上げた。僕も、悲鳴を上げたかったのだが、そこは男の子。我慢した。僕が怖がっていては夏子ちゃんの恐怖心は一層に増すだけだ。

「ううう」

 夏子ちゃんは、半べそをかいていた。そして僕は、どうしていいのか少々戸惑っていた。僕は、夏子ちゃんとはクラスメイトで仲の良い友達だから、大丈夫とか言って彼女を抱きしめるのはなんとなくルール違反な気がしたし、頭を撫でてあげるとか妹にするようなことは厳禁とも思うし……。何をしてあげれば、彼女は泣き止むのだろう。

「大丈夫だよ、たぶんたぬきだと思うよ。ほら、学校の掲示板にもたぬきが最近よく出るって書いてあったじゃん。ちなみに、その掲示板に貼ってあったポスターの絵って、実は数学の田辺が書いたんだってさ。数学教師のくせにあんなかわいいたぬきがかけるんだね」

 僕は、どうにかこの場を和ます話題を考えた。田辺先生ごめんなさい。

「ぐすん……そ、そうなんだ。田辺先生って意外と可愛いものが好きなのかもね……」

「そうだよ、きっと部屋中に可愛いぬいぐるみばっかで、枕とかも可愛いキャラクターものばっかりだよ」

 夏子ちゃんはようやく、安心したのか僕の話にあきれたのか泣き止んでくれた。田辺先生ありがとう。50歳のおっさんだけど、あなたの趣味のおかげでなんとかなりそうです。

 僕は、泣き止んだ夏子ちゃんを見て、このくらいは許されるだろうと手をつないだ。

「これで、怖くないでしょ?さ、行こうよ」



 オバ道を抜けてからもなぜだか僕たちは手をつないでいた。手を離したいと、さすがに夏子ちゃんは言わないで僕に気を使ってくれたのかもしれない。もちろん、僕から離すわけにもいかなった。夏子ちゃんの家はオバ道のすぐ近くだった。玄関前の庭には可愛いポメラニアンが待っていた。夏子ちゃんの帰りに気がついたのかしっぽを振ってこちらによってきた。しかし、僕には一瞬だけ嫌そうな顔をしたような気がした。あんなに可愛くて愛くるしい子犬の顔が一瞬、修羅のような容相に変化したのだ。たぶん、彼女を連れ去ったとか勘違いしたのだろう。従順な忠犬である。

「あの……今日はありがとね。コージ君が居てくれたから、今日は安心して帰れたよ。あ、でも途中でちょっと半べそかいちゃった。恥ずかしいとこ見られちゃったね」

 彼女は、多分照れていた。僕は、本人ではないから本当のところはわからなかったが、夏子ちゃんは少々俯いきながらしゃべっていた。

「夏子ちゃんって暗い所嫌いなんだなって発見できたし、僕としては弱みを握れたから収穫の多い帰り道だったけどね」

 僕は、からかうように言った。夏子ちゃんは、顔を真っ赤にしていた。揶揄わないでよと彼女は言った。

「じゃあ、またね」

 そういって僕らは別れ、彼女は家に、僕は家に向かって歩いた。



「おーい、コージー」

 気がつくと、目の前でようちゃんが僕の意識を確認するように手を振っていた。

「ああ、何。ごめん、ちょっと考え事してた」

 考え事というか、昔のことを思い出していたのだけれど。

「そうか。つか、お前って何駅で降りるのよ?今、横浜駅を通り過ぎたけど」

「俺は、川崎駅だから……」

「なら、次、川崎駅だぞ」

 ようちゃんは、そういうとつり革を握り返して窓のほうを見た。僕は、未だに呆然と立ち尽くしていた。そういえば、文化祭って結局どうなったのだっけか。僕は思い出せなかった。そんなことを考えているうちに、電車は川崎駅についてしまった。

「お、じゃあ仕事頑張れよ。機会があったらお酒でも飲もうぜ」

 そういって、ようちゃんは電車に残って、僕は川崎駅で下車した。サラリーマンたちは、そそくさと改札に向かって行く。僕もその波に遅れないようにと、そそくさとサラリーマンたちの波に乗る。



 僕は、仕事を終えてまたしても電車に乗っていた。今日はなんだか疲れた。朝のことがあったからかもしれない。僕は、電車に乗り、座席に座れた。目を閉じてしばらくすると眠りに落ちてしまった。目をさますと、自分の降りる駅を何駅か過ぎてしまっていた。仕方なく僕は、電車を降りて戻る電車のホームに行くことにした。

 反対側のホームつくと、僕は右手で顔を追った。あーなんてこったと思った。帰るのが面倒だと思った。思った思った。

「あれ、もしかしてコージ君?」

 聞き覚えのある声が僕の耳元に聞こえてきた。確か、つい最近僕のことを悩ましていた人物のような気がした。あ。もしかしてと思い、振り返ってみるとそこには彼女が立っていた。

「久しぶりだね。えっと……中学校の頃から会ってないからもう10年近く会ってないことになるのかな? 」

 僕は、気が動転していた。今朝からずっと考えていた僕の脳内の彼女が成長した姿で、僕の目の前に平然と立っているのである。

「えっと……もしかして幽霊とか?あれ、確か川で溺れて……」

「なんの話よ。あたしは生きてるし、そんな事故にあった覚えはないよ!」

 彼女は、笑いながら言った。つかみは成功のような気がした。成長したとはいえ、相変わらず華奢だし、中学生の頃よりも幾分小さく感じた。それは、僕の身長が伸びたことが原因だと思った。胸の膨らみも正直期待できないレベルの成長度であると言えた。でも、中学校の頃に比べても断然に可愛くなっていることは間違いがなかった。

「あ、もしかして今帰りだったの?あたしも、帰るところだったんだけど、コージ君は今ひまだったりする?お茶とかしようよ」

 疲れているので、帰らせてください。と、会社の上司とかいつもの友達だったら言う場面であったが、夏子ちゃんからのお誘いである。断る理由がなかった。



 僕らは、駅を出て駅前のコーヒーショップでお茶をすることにした。コーヒーショップなのにお茶という表現は正直僕としては違和感があったが、さすがに茶屋は駅前になかったのでこれで落ち着くことになった。僕は、ブラックコーヒーにベーグルを頼んだ。夏子ちゃんは、キャラメルがかかったコーヒーとチーズケーキを頼んだ。

「そういえば、コージ君身長は伸びたし、声も昔より低くなって、顔もなんかかっこよくなったんじゃない?」

 僕は、そんなことないよと彼女の質問を軽く流した。僕の顔なんてかっこよくもないし、一度も言われたことが無い。夏子ちゃんは少々お世辞というものを覚えたのかもしれない。僕は、ちょっと残念だった。

「そういえば、夏子ちゃん。文化祭のことって覚えてる?結局、美術の展示ってどうなったんだっけ。今日、ようちゃんに偶然会って、思い出しちゃったんだ」

 夏子ちゃんは、ようちゃんに会ったことを驚いていた。元気だったよというと、そうかそうかと頷いていた。

「美術の展示は、大成功だったはずだよ。学年一、見栄えがよくて綺麗で。でも肝心の美術の作品の質はイマイチだったって担任の先生に言われたような気がしたけどね」

 そうだったようなー、と適当に相づちを僕はうった。

「あ。文化祭と言えばコージ君と二人で何回も一緒に文化祭の準備の帰りに帰ったよね。もう、最後の頃なんてお互い一緒に帰るのが当たり前みたいになってたな」

 夏子ちゃんもどうやら、文化祭の準備のことについては覚えているみたいだった。

「実は、あたしコージ君と一緒に帰りたくってさ。何回かわざと暗くなるのを待っていた時もあったんだよ」

 秘密をばらして、あら恥ずかしい、といった表情で彼女はしゃべっていた。僕は、そのことを聞いてなんだか照れてしまった。

「毎回の帰り道のコージ君、なかなかかっこよかったよ。うん。当時は暗いとこ苦手だったからねぇ」

「今は苦手なの?」

「今は全然平気。暗くても着替えもできちゃうくらいなれっこでございますよ」

 彼女は、昔に比べて少々陽気になった気がした。ボキャブラリーが増えたと言うか、単純にしゃべりかたが面白くなっている気がした。

「でも、意外だったよ。夏子ちゃんとこんなところで会うなんてさ。二駅くらいしか変わらないから」

「文化祭後にあたし転校しちゃったんだよね。そういえば。そうなの。二駅先に引っ越しただけなんだけどさ、あの頃は本当に遠くに引っ越したような気分だったなぁ。外国に行ったみたいだったよ」

 夏子ちゃん、それは言い過ぎなのでは。

 でも、そうだ。夏子ちゃんは文化祭が終わった次の週に引っ越してしまった。当時は、両親の一身上の都合と教えられていたが、実際はマイホームを両親が買ったからだったそうだ。僕は……僕は……。

「コージ君って今、彼女とか居ないの?」

 唐突に、今一番気にしている質問がやってきた。残念ながら今はいませんよと答えた。そうなんだぁと彼女は返事をした。

 僕はね夏子ちゃん、中学生の頃、君のことが好きだったんだよ。お互いに気づいていたのか意識していたのかは今となってはわからないけど、僕は君のことが好きだった。中学生の頃の恋なんてよくわかんなくて、一緒にずっと居たいな程度の感情だったような気がする。でも、その思いを伝えることができないまま、君は転校してしまった。その後、僕は高校に進学したけど、やはり僕は君への感情を引きずってしまった。大学に入る頃にはすっかり忘れて何人かの女性と交際もしたけど、長くは続かなかった。好きな人が出来て、告白をしようかと思うといつも中学生の頃の自分を思い出す。言いたいのに言えない自分の情けない姿が。

「夏子ちゃんはどうなの?」

 すると、驚くべき返事が返ってきた。

「あたし?あたしは、去年結婚したんだ。えっと……2歳年上だったかな。会社の先輩。優しいんだよ」

 僕は一瞬驚いた。そんな僕とは対照的に彼女は笑顔で喋り続けていた。そうか。結婚したのか。まぁ、今更どうなるわけでもないとは思っていたけど、なんだかあっけない幕切れだった。でも、なんだかすっきりした気分もあった。人は、もう物事は叶わないと知ると意外と潔いの良い行動に移れるものだ。僕も例外ではなかった。

「それはそれは。お幸せにだね」

「うん。今とっても幸せだよ」

 彼女は、笑顔で答えた。そうだ。僕は一つだけ君に聞きたいことがあったのだ。過去からの質問になる。当時の僕が聞きたくても聞けなかったことが。

「じゃあ、これは聞けるね。夏子ちゃんって中学生の頃って正直、僕のことどう思ってたの?」

 緊張の一瞬だった。

「うーん。好きだったよ。たぶん特別に。まぁ、中学生の恋なんて大人のようなドロドロとした肉体的な欲求はないですけどね」

 夏子ちゃんが下ネタを言った。大人になってました。


「僕も、夏子ちゃんのこと好きだったよ。特別にね」




 本当に、テンプレートな作品になってしまいました。ただ、今回は少し長めに書いてみました。ダラダラとですけど。

 感想とかありましたらよろしくお願い致します。

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