占い鳥の話。選ばれた村と選ばれなかった村(ショートショート)
昔々、村々を訪れた占い鳥は……。
昔々、色々な村々におかしな鳥が現れました。生き物のような、作り物のような、どうもはっきりとしない代物です。
その鳥はひとしきり村を徘徊した後、激しく鳴いたかと思うと、口バシをぱっくりと開きました。そして口の中のものを、集まった村人たちにこれ見よがしに見せるのです。
中から現れるのは、決まって”首”でした。
鳥のノドチンコに当たる部分に、ある者たちの頭部のみが現れるのです。
”ある者たち”は、大きく二つの種類に分かれました。一つは如何にも禍々しい鬼のような顔。もう一つは豊穣の女神ともいえる端正な顔立ちの女性の顔でした。
おかしな鳥は、自らの喉の奥を村人たちに見せると、どこへともなく消えていきます。しばらくは呆然としていた村々の民たちですが、やがて誰ともなくこんな事を言い始めました。
「あれは、村の運勢を占う鳥に違いない。喉の奥にいたのが鬼ならば村に凶事が起こり、女神ならば吉事が起こる前触れに相違ない」
最初は単なる噂でしたが、それがどんどん真実のように語られ始めます。
女神を見せられた村の民は、おおいに喜び勇んだものの、それが高じて自分たちは選ばれた民なのだと豪語し始めました。そして、鬼を見せられた村々を蔑むようになりました。やがて村々は「女神の村」と「鬼の村」に仕分けられ、様々な格差が生まれます。
さて、それから数年後。おかしな鳥が現れた村々に変化が起き始めました。
え? 女神の現れた村に幸福が、鬼の現れた村に不幸が訪れたんだろうって?
いやいや、ところが全く逆なのです。
鳥の喉に女神が現れた村々には大きな不幸が、鬼が現れた村々には大きな幸福が舞い降りました。
どうしてでしょう?
実はですね。タネ明しは、こんな感じなんです。
あのおかしな鳥。本当は占いをする鳥などではなく、単に、土地の精霊を食べてしまう鳥だったのです。鬼も豊穣の女神も、土地の精霊の一種なのは言うまでもありません。
もう、おわかりですよね?
鳥の喉に鬼の顔があれば、それは土地に凶事をもたらす精霊を食べ殺した事になり、逆に女神の顔があれば、それは豊穣をもたらす精霊を食べ殺した事になるのです。
つまり村人たちが考えたのとは逆に、鳥の喉に鬼の顔があればその村は幸せになり、女神の顔があれば村は不幸せになるのでした。
その後の村々がどうなったかといいますと、幸せになった村々では、自分たちを蔑んだ村々を逆に侮蔑するようになり、不幸になった村々は、幸せになった村々を逆恨みするようになり争いが生まれました。それはエスカレートの一途をたどり、やがては全ての村々が不幸になりました。
まぁ、人間の浅はかな考えで自然の営みを捉えれば、それは愚かしい結果を招くばかりであるというお話です。
皆さんも、世のつまらぬ解釈に振り回されて一喜一憂していると、こういった村々の民と同じ道をたどる事になるかも知れませんよ。
どうか、お気をつけて。
【終わり】
(気楽イラスト805のキャプション)




