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小説家になろうラジオ大賞7

人魚だって舞踏会に出たい!

作者: 夜狩仁志

なろうラジオ大賞7 参加作品。

テーマは「舞踏会」で2作品目。

 ある海にアクアという人魚がいました。

 従来、人魚は歌が上手く人間を魅了しますが、このアクアは絶望的な音痴。

 魚やクラゲ、ナマコにも笑われる始末。


 そんなアクアが得意なのは踊り。

 今日も一人で水中を優雅に踊るも、相手をしてくれる者はいません。


 アクアはある夜、海辺にそびえる城の中で、着飾った人間たちが軽やかに踊る姿を見ます。


「私も一緒に踊りたいな」


 でも彼女には足がありません。

 そこで魔女に頼みに行きます。


「これを使うといい」


 魔女が出したのは、人間が両足に付けている靴と呼ばれるもの。

 でもそれは一つしかなく、とても大きく、そして左右に車輪が付いていました。


 アクアは喜び、早速その靴を尾ビレに履き、足元が隠せるイブニングドレスを用意し、城へと向かうのでした。


 海から城の堀までは繋がってますが、水門が12時に閉まるので、その前に戻るよう魔女から言われます。


 アクアはうまく城内に侵入すると、服装を整え紛れ込みます。

 舞踏会でのアクア、美しい姿と踊りで注目を浴びます。

 珍しい客人に城主の王子も興味を持ち、滑るように舞うアクアの手を取り、一緒に踊り回ります。


 楽しい時間はすぐに過ぎ、時刻はまもなく12時。


 アクアは慌てて外に出ますが、途中転んでしまい靴が脱げてしまいます。


 後ろからは王子達が追ってきます。

 人魚だとバレれば、なにをされるか……


 アクアは必死に這って水中へと逃げ込みます。

 王子が着いた時には一足の靴が。


「これは彼女の? 奇妙な形だが、手がかりになるに違いない」


 彼女にもう一度会いたい王子は、兵に捜索させます。


「この靴を履き踊れる者はおらんか?」


 その噂は広まり無関係の娘まで名乗り出ますが、この奇妙な靴を履いて踊ることは出来ません。


 そこで王子は再び舞踏会を催しました。

 それを知ったアクア。あの素敵な夜を思い出し、踊りたくて仕方ありません。


 我慢できなくなったアクアは再び城に侵入し、城内の川から様子を伺うのでした。


 しかしこれは王子の策略で、水門を閉められます。

 逃げ場がなくなったアクアは観念し、王子の前に姿を現します。

 王子はその足を見て驚きますが、そっと靴を履かせて立ち上がらせます。


「また一緒に踊ってくれるかな」

「は、はい」


 こうして二人はダンスにより、種族を越えて結ばれることとなったのでした。


 そして今では、水中をペアで泳ぎ踊るアーティスティックスイミングを作り上げ、週替りで水中と陸上でダンスをする日々を送るのでした。


 この作品をお読みいただき、ありがとうございます。

かつてシンクロナイズドスイミングと呼ばれていた競技が、今やアーティスティックスイミングと呼ばれていたことに、ちょっとした時代の流れにショックを受けております。

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