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魔法の使えない魔法使い  作者: 只野 凡


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9 接触

 



 


 …何をさせられるのか。

横たわるエイルの前まで連れてこられる。


…まさか医療の知識を期待されているのか。はたまたケガを治す魔法でも使えると思われているのか。

どちらにしてもできることではない。


「一応言っておくが、私は医者でも神官でもないよ?」


相手を刺激しないように自分では役に立たないかもしれないことを伝えてみる。


「…その目で視てほしい。ここが、傷口。」


言われるがままにエイルの怪我を確認する。


爪で顔の横から切り裂かれたような傷だが、今は塞がっていて問題はないように見える。


…が、それだけなら私を呼ばないだろう。


エイルの魔力を視る。こうして人の魔力をしっかりと視るのは初めてだ。


私やリンと比べて微弱なそれが身体の中を流れている。


ただ、ところどころ流れが悪く逆流のような現象が起こっているところがある。


恐らく彼女が見せかったのはこれだろう。

「魔力に異常が起きてるね。もとからかな?」


「…違う。狼型の希少種。あれにやられた。」


 違うと言われ心臓が跳ねたが、もとから、のほうが否定されたようだ。


「それでどうしてほしいのかな。」


「…流れを正常に戻してほしい。」


…果たしてできるのか。


自分の魔力はわりと思い通りに扱えるが、他人の魔力に干渉するのはこれが初めてとなる。大見得を切って任せろ言った手前、できないは許されない。


「構わないが、君には難しいのかい?」


少しでもヒントを得るべく質問をする。私より詳しい彼女から情報をできるだけ引き出したい。


「…できるけど…今は無理。瞳が開けなくなったから。…あなたは大丈夫なの?」


きっと赤い瞳のことだ。あれのうちはできたのだろうが、時間制限があるようで今は使えないようだ。


「あぁ、なるほ…ど?」


 瞳の開けない理由には納得したが、そのあと彼女が言った言葉が引っ掛かる。


私の心配をしていたようだが、何をもって心配されたのか。


……疑われているんだ。


お前に本当にできるのかと。彼女らにとって大切な仲間を預けられる存在かを見極められている。


「…ん?だいじょうぶ?」



追い打ちのようにリンからの質問が飛んでくるが、もとよりやるしかないのだ。


短く「ああ。」と返事を返す。


とりあえず、正常な魔力の流れを観察するべく目の前のリンの魔力をの流れを見る。


全身くまなく流れているそれは、体の中央、へその位置より少し上を起点として流れている。よどみなく流れているが、彼女の目のあたりだけは、少し魔力に違和感があった。


「な…何…?」


リンが顔を背けてしまい、違和感の正体が見えなくなってしまう。


私は彼女の頬を両手で挟み、自分と目を合わせるように持っていく。


「え…ちょ、ちょっと!」

リンの瞳を念入りに観察する。集中のあまり狼狽する彼女の声は耳に入らない。


彼女の瞳の中に、彼女のものとは別の色をした魔力が視える。とても小さいが、恐らく他人の魔力?なのだろう。身体に馴染んでおらず、魔力の循環する流れに乗れていない。

「…取り残されている…。」


つい、そう呟いたとき、見つめていた青色の瞳は大きく開かれ後ろに突き飛ばされた。


しゃがんでいた姿勢のため、2.3歩たたらを踏んで尻もちをつく。


突然の事で、反応できなかった。


今のが何らかの魔法であればどうなっていたか…迂闊すぎた自分の行動を反省する。


「…あっ。…ごめん。」


突き飛ばした本人は申し訳無さそうに下を向いた。攻撃する意図はなかったようだ。

恐らく彼女にとって不快な行動をとってしまったのだろう。謝罪をしなくては。


「こちらこそすまなかったね。あんまりきれいな瞳だからつい見惚れてしまった。それよりも彼だね。よし!」


軽い謝罪に留めて今は役目を全うする。


多少の悪印象を持った奴でも、有用なやつであればすぐには見限られないだろう。


一か八かだが、今は魔女である証明を果たさなくては…











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