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魔法の使えない魔法使い  作者: 只野 凡


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53 発射


 長い息を吐き、呼吸を整える。

まずは状況の把握しなくては。

魔力を溜めた手を構えたまま、周囲を視る。


エイルが、私のもとから離れガルンたちの方へ加勢に向かっている。

ガルンは大剣を振り下ろし、黒い影を片っ端から吹き飛ばしている。

イースは一度距離を取り、動かない影をじっと警戒しているようだ。

残りの仲間は…視えない。


今すぐ探しに行きたい気持ちを押し留める。

今の私に出来ることを。


ゆらゆらと複数の黒い影が迫ってくる。

右手に溜めた魔力を真っすぐ、一体の影に伸ばす。伸びた魔力は、真っすぐに影へと伸びて、そのまま影を通り抜けた。


手応えがない。それでもこれぐらいしか有効な手は思い当たらない。

今度は伸びた魔力を、長い剣のようにして、そのまま横薙ぎに振り払う。

私の手の動きに合わせて動く魔力が、数体の影を揺らす。影は一瞬動きを止めるが、形を取り戻すと、再び迫ってくる。


何をしても影が減ることはない。魔力の塊で丸ごと吹き飛ばしてみるが、数秒で元通り。再度にじり寄ってくる。迫る影の動き合わせて、じわじわと後ろに下がる。


「があぁ!くそっ!霧の中から続々出てきやがって!何匹いやがんだこいつら!」


すぐ後ろでガルンの苛立たしげな声が聞こえる。後ろに下がるのも限界だ。

影による包囲の輪が狭まり、一点に集められつつある。

明らかに状況が悪い。このままではジリ貧だ。

ガルン達の正面の影に、魔力の塊をぶつけて吹き飛ばす。


斬りかかろうとした対象が急に消えたことで、ガルンはたたらを踏んだ。

「うおっとと…なんだアイリか!リンはどうなった!」

イースとエイルも、影の進行が止まった隙に集まってくる。

「…アイリ。こいつらはなにか分かるか?」

弓をしまい、ナイフを構えていたエイルは、視線は影に向けたまま私に質問する。


正直、私が聞きたい。

攻撃をしてくるわけでもなく、ただ近づいてくる不気味な影。対応策もない今、出来ることは逃げ回るぐらいだろう。

第一、今の私は声が出ない。何かの魔法であることは察せられるが、どう対処すればいいかなんて分からない。質問に答えられない私は、黙々と復活した影を魔力でふきとばす作業を続けることしかできない。何か、解決の糸口がつかめれば…


「聖水も効果ないし!せめて、この霧が何とかできたら!あー!ていうか!クロのやつはどこいったのよ!あの役立たず!」


地面を踏みつけるイースの苛立たしげな声に、はっとする。


霧だ。

ずっと引っかかっていた違和感に気づく。

私には視えない霧が、3人には視えている。

彼らにしか確認できていない霧だ。

私には視えない霧。その正体を掴めれば。


 ゆっくりと近づいてくる影。覆い尽くす霧。逃げ場を失い、一点に固まった私達。

絶体絶命とも言える状況。この窮地に、ふと閃いた。


確証も、成功するかも分からないが、やる価値はある。


ばっと両手を広げて、スペースを確保した。

目を丸くする3人をよそに、たなびいたローブが、地面につくほどしゃがみ込む。

魔力を足元集め、固める。

身体強化を足に。


「ぶあっ!なんだこの風!魔法か?!」

「きゃあ!」

魔力による風圧によってガルンたちがよろめく。机が木っ端微塵に砕ける風圧だ。申し訳ないが耐えてもらおう。

「…っ。霧が!だが、俺らも動けん!」


風圧で霧に影響を与えられているみたいだ。

周りを見れば、影もグラグラと揺れその場から動いていない。思わぬ副産物だが、このままではエイルたちが保たない。


もう1段、深く沈み込む。

準備は万端だ。いこう。


地面を思い切り蹴り上げる。



激しい轟音とともに、私は、空へ向けて発射した。

















アイリロケット!発射!

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