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魔法の使えない魔法使い  作者: 只野 凡


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49 期待


 「風衝」


部屋の真ん中に窓ガラスと共に降ってきたクロに、リンが風の魔法を容赦なく放つ。

クロは普通は見えないはずの風をしっかり捉え、構えていたナイフで風の塊を斬り落とした。黒い瞳がギロリと、魔法を放った相手、リンに向けられる。


「なんの真似だ」


「敵はおまえ。窓ガラスを割って入ってくるなんて非常識。見て、部屋がめちゃくちゃ。弁償して。」


リンは、クロの威圧をものともせず、しれっと私がやった分もクロに擦り付けた。

眉をひそめたクロはより一層鋭く睨むが、リンは一歩も引かず、むしろ睨み返した。


数秒間無言の睨み合いが繰り広げられた後、最初に折れたのはクロだった。


「……ちっ」


舌打ちをきめたクロが、懐から袋を投げてよこす。

リンがそれをキャッチした拍子に、チャリンと小気味のよい音がなる。そこそこの数のお金が入っているのだろう。

受け取ったのを確認してクロは続けた。


「冗談はいい。この有様は何だ。相手の数、特徴。能力は。追跡魔法はかけたのか?料金分は話してもらうぞ」


実際、部屋は酷い有様だ。

部屋の扉は破壊され、部屋中に割れた窓ガラスの破片が飛び散る。

机や椅子も木片へと姿を変え、まさに、襲撃にあった後かのような現状だった。


しかし、奇妙なことだが、この現状を作った襲撃者2名はまだこの場に残っている。

うち1名は部屋を見渡し犯人を探し、もう1人は、気まずさから目を逸らしていた。


誰も口を開かないでいると、1階からドタドタと階段を駆け登る音が聞こえてくる。

恐らく宿の店主だ。昨日に引き続きでトラブルを起こしているのが本当に申し訳ない。 

段々と近づいてくる足音に、クロが一言「素人か」とだけ呟き、興味を失ったように廊下から視点を離す。




「扉が!やはり夢じゃなかった!」


喜びのような、悲痛の叫びが廊下から聞こえてくる。店主が倒れていた扉を見つけたのだろう。

足音は加速し、部屋の前まで来た彼と遂に対面することになった。

驚愕と恐怖と、悲しみ。全てがこもった彼の悲痛な叫びが、風通しのいい部屋に響き渡った。


「こ、これは、どうなっているんだ!」


…すみません。店主さん。


✽✽✽


結局、私とリンが二人で謝罪し、クロの出したお金分をそのまま店主に渡したことで解決した。追い出されることなく済んだことに安堵する。

あの袋には、相当の額が詰め込まれていたのだろう。

部屋は、外出中に元通りにしてみせます!と元気そうに話す店主が印象的だった。

来たときは違い、笑顔で去っていく店主を見送った。


部屋の惨状の原因については、正直にクロに話して謝罪した。

クロは一言、「くだらん」とだけ言って、それ以上は特に何もなかった。

案外、懐は広いのかもしれない。


一段落ついたあと、クロは入ってきた窓に脚をかけ、時間が惜しいとばかりに淡々と告げた。


「行くぞ」


「何処に?」


「魔法学院」


「…なんで?」


「対象がいるからだ。先に行く」


短い言葉でリンとクロが会話を交わし、詳しい説明もなしにクロは部屋から飛び降りた。残されたのは、荒れた部屋に佇むリンと私。そして、魔法学院という目的地だった。この街に来たばかりの私でも聞いたことのある場所だ。先ほどから驚いた顔をして固まるリンに、様子をうかがうように質問する。


「魔法学院って、…ジジさんが言ってた?」


「…そう。でも、なんで。」


私の問いに、リンは考え込む仕草のまま、再び固まる。

リンからすると、魔法学院に敵がいることは考えられないことだったのだろう。

今もぶつぶつと呟き、思考をまとめている。

まだ聞きたいことはあったが、邪魔にはなりたくなかったので口を閉じた。


魔法学院。魔法を知った者として、興味はずっとあったが、まさか、こんなにも早く行く機会が訪れるとは。

クロのいうことが正しければ、そこに敵がいる。これから向かう場所は敵の本拠地である。

しかしながら、魔法学院という場所に、私はどうしても期待してしまう。

もしかすると、手紙の印。魔女の証と呼ばれる模様について、詳しく知っている人がいるかも知れない。私の手がかりに関して、なにか見つかるかもしれない。

…それに、リンは無理だと言っていたが、私が魔法を使えるように手がかりだって、あるかもしれない。


期待に胸が膨らむ。敵陣へ向かうというのに、私には一切の恐怖がなかった。

善は急げとでも言うように、早速準備を始める。


…ドレスは、必要だろうか。


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