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魔法の使えない魔法使い  作者: 只野 凡


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5 冒険者


 「…子供か?」

大柄な鎧を着た男は背後にいた軽装の女性に盛大に頭を叩かれた。


 「ローブ見ろ!バカ!…すみません西の森の魔女さん…ですよね?」

伺うような探るような視線でこちらを見ながら女は聞いてくる。


…ローブが功を奏したのか、見事、家主の成り代わりはうまくいきそうだ…。


私が答える前に女性は続けた。

「イースと申します。先程の無礼な筋肉バカがガルン。後ろの彼女はリンです。私たち、ここから東の街『アールイ』で冒険者をしている者です。先程森で狼型の魔物、希少種と遭遇して戦闘になり…撃退は成功したのですが、弓術師のエイルが…」


彼女が後ろを見せるように端に寄る。


そこには頭部を包帯で巻いた男が横たわっていた。


「勝手なお願いで申し訳ないが、少し場所を貸してくれ!金なら言い値で払うし、家の玄関だけでもいい!とりあえず安全な場所で治療を続けたい!」

先程頭を叩かれた男が頭を思いきり下げながら願い出る。


冒険者と名乗る彼ら。

…負傷している仲間もいるようだ。


少なくともここの家の持ち主とは関係はないだろう。一先ず安堵する。


どうするべきか…


心配そうな面持ちの彼らの前で思考する。


要は人助けだ。

相手の言い分が事実であれば、私は少し人を招くだけで多大な恩を売れることになる。メリットは十二分に保証されている。


ただ、もし全てが嘘だった場合、怪我そのものが嘘で、相手が強盗の類の場合。


戦いなど経験したことがあるわけのない私が敵う相手ではないだろう。


…無意識に身体が後ろに下がり開いた扉を少し閉じようとする。


「お願いします!大事な、大切な仲間なんです!!」

イースが扉に手を挟むように身を乗り出してくる。


突然の接近に身体が無意識に後ろに下がる。


自分の身体が縮こまり、硬直するのを感じる。思うように声が出ない。


「あっ!…ごめんなさい。」


イースは謝りながら後ろに下がる。

 


…扉から距離をとってしまった。

もし相手がその気なら、私の意見など無視して侵入できてしまう。

唯一の盾を失ってしまった。


もう相手の言い分を相手を信じるしかない。


せめて友好的に接して少しでも印象を良くしなくては…咳払いをして喉の調子を整える。


できるだけ、自然に。


 「…気にするな。久々の来客に驚いてね。上がってくれ。ただし変なことしないように見張らせてもらうが、気を悪くしないでくれ。」


動揺を悟らせないよう平静を装って話す。


それを聞いた男はぱっと明るい顔になり、笑顔で話しかけてくる。

「ありがとう!!恩に着る!小さな魔女さん!」

「ちょっとガルン!…ありがとうございます!」

「…ありがとう。」


私が端によると、ガルンと呼ばれた男が、怪我した男を丁寧に担ぎ上げ部屋のなかに入ってくる。続いて女性陣も後ろに続く。イースは私の横を通り過ぎる際に一礼し、リンと呼ばれた少女は、少し警戒するような目でこちらを見ながらも、すぐに怪我した男のほうへ向かった。


「ゴホッ!ゴホッ!ここ使わせて貰うぜ?」

ガルンが机と椅子を端へずらし部屋の中央にスペースをつくる。その際に盛大に埃がまきあがった。


「…あーすみません…。掃除は…苦手ですか?」

イースが申し訳無さそうに聞いてくるが、そもそも私の家でもないのだから返答のしようもない。


「…すまないね。」ただそう返すことしかできなかった。


「リン!あれやってくれ」


「…後ろに下がってて。」


リンがガルンらにそう声をかけると懐から本を取り出して埃だらけの床へ手を向ける。

私はそこで気がついた。リンの身体の周囲にゆらゆらと薄く膜のようなものが張っている。それらが床に向けられた手に集まっている。

「…浄化。」

リンがそう呟くと手から白い光が発せられ、床一面の埃が消え去る。


文字通り突然周囲の埃がなかったように消失した。







冒険者 盾と大剣の大柄な男 ガルン

    軽装の女武闘家   イース      

    怪我してる弓使い  エイル  

    治療する少女    リン

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