47 4日目
ドンドンドン!
ノックと共に部屋の外から何かを叫ぶ声が聞こえる。
相当な轟音が鳴り響いていたのだろう。
近隣の部屋からの苦情か。宿の店主か。
謎の既視感を感じながら、来客にどう対応するかを考える。
とりあえず、掴んだままのリンを、被害から逃れていたベットに寝かせた。
一息ついて、部屋の惨状を確認する。
焚き火の足しにしかならなそうな木片に姿を変えた憐れな机。
背もたれと別れを告げ、パタリと倒れた椅子。
そして、私たちが美味しく頂いた串焼きの串が辺りに飛び散っていた。
不幸中の幸いと言うべきか。被害は机だった物の周辺のみで、それ以外にぱっと見問題は無さそうにみえた。
少し安心してドアの方をみる。
先ほどよりノックの音が強くなっている気がする。今も、ドンドン、ドンドンと。繰り返し扉が叩かれている。
仕方ない。
考えは纏まっていないが、扉へ向かう。謝罪は絶対として、どう説明しようか…。
とりあえず、部屋の惨状は片付けるまでは見せないようにしよう。
場所も状況も違うが、来客の対応はこれで2度目だ。少しは心に余裕ができている。
自分の成長を実感しつつ、ドアノブに手をかけ、ゆっくりと捻る。
しかし、どうしたことか。そっと扉を開けて、顔だけで対応するつもりが、何かが引っかかっているように扉が開かない。
立て付けが悪くなっている。恐らく私が原因なのだろう。ここも何とかしておく必要がありそうだ。
「今、開けるよ」
一応、声をかけてから扉を開ける。
急に開いてしまった時に怪我してしまわないよう配慮する。
相変わらず扉を叩く音は大きく、何を言っているのかは分からないが、鋭く声をあげている。この様子だと私の声は届いていないだろう。
仕方なくそのままドアノブを捻り、押し開ける。
ボキッ
「あ。」
手元で、何かが折れる音が聞こえた。
嫌な気配を察知して、確認するように前を見れば、ドアは閉まったまま。
ただし、穴の開いた扉から、ドアノブと、私の腕だけが、しっかりと廊下へと飛び出していた。
「ひっ!す、すみませんでした!!」
扉の向こう側から、そんな声が聞こえた後、バタバタと急いで遠ざかる足音が聞こえた。
「あ、あの!」
手遅れだと分かっていたが、弁解をするべく急いで残った扉を押す。
メキメキと扉の根元が音をたて、バタリと倒れる扉とともに部屋の外へ。
床の一部となった扉の上を越えて廊下へ出る。ちょうど、逃げた人影が突き当たりの廊下を曲がったところだった。
「あっ…」
声をかけ損ねた。このまま追うことも考えたが、この場の惨状を放置するわけには行かなかった。
数秒立ち尽くした後、片付けを始めた。
まず、全ての原因たる右腕の魔力を、身体の流れに戻す。
そして、部屋を見渡し、この右腕の引き起こした現状を確認した
身体強化。本当に…すごい技術だ。
力を入れずとも、簡単に、すべてを破壊する事ができる。全身をこれで覆ってしまえば、私もイースのような動きをすることができるかもしれない。
などと、半ば現実逃避のようなことを考えつつ、片付けを始めた。
木片やバラバラとなったものは、まとめて端に寄せ、扉とドアノブだけは、魔力で作った紐でぐるぐるにして扉枠に固定した。
一段落つくと、急に眠気が襲ってくる。
リンや宿の人への謝罪は明日にしよう。
そう心に決めて、ソファに横になる。
今日も多くの事がありすぎた。明日は、明日で冒険者として初の任務だ…
早く…寝よう。
あれ…そう言えば集合場所。…どこ…だっけ
頭の中に浮かんだ疑問は、意識とともに、暗闇に溶けていった。




