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魔法の使えない魔法使い  作者: 只野 凡


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46 身体強化


 リンが私の頭に手を伸ばす。


「な、なに?」


急な行動で驚くが彼女は止まらなかった。

そのまま私の頭に手を置いて、ゆっくりと撫でる。その表情は笑っているはずなのに、何処か悲しそうだった。

少し気恥ずかしさはあったが、なんとなく、そのまま受け入れた。


「やっぱり。似てる。」


「…誰に?」


「…ん。…そう言えば、覚えてる?」


あまり話したくなさそうだ。話題が突然変わるのを感じながらも、気にせず答える。


「何を?」


「初めてのとき、急に私の顔を掴んだの。」


エイルの治療の為に、魔力を確認した時だ。もう、随分の前のことのように感じる。

あのときは、焦っていたのか何も考えずやってしまったが、今思うと中々の奇行だと思う。申し訳なさと、気まずさで顔を逸らす。


「あ、あのときは必死だったから…んっ!」


逸らした顔を両手で挟まれ、強引に顔を合わせる。目と目が合う。


「あの時と何か似てた。逆だけど。」


しばらくそうやって私を見た後、リンは手を離し、椅子に座り直す。机の上の食べ終わった串や、手を拭くのに使っただろう古布を串焼きの袋の中に片付け始めたので、私も加勢した。



 片付けが完了し机の上がスッキリした。布で机をしっかりと拭いて、食べた後は完全に消え去った。よし、とリンが座り直しながら私に告げる。


「身体強化。見せるね」


そういうと彼女は、右腕をひじを立てるように机の上にだす。目で指示されて、同じように右腕を出して彼女と組むと、説明をつづけた。


「腕相撲。2回する。相手の腕を倒したら勝ちだから。」


頷いて返事する。変化を見逃さないように、瞳で彼女をしっかりと視る。


「よーい。どん!」


リンの腕に少し力が入る。彼女はうんうんと唸りはじめ、私の腕を倒そうとするのが伝わるが、少しも動かない。必死に力を入れているだろう彼女に申し訳なさを感じながらもパタリと、やさしく彼女の腕を倒す。


「…ふぅ。ふぅ。次が本番。視ててね。」


もう一度握り直す。


「よーい。どん!」


先程と変わらない力で腕が押される。力には変化は起きていない。

しかし、視えた。じわじわと魔力が右腕にあつまっているのが分かる。


「いくよ。」


瞬間、右腕にかかる圧力が急変する。

グイッと勢いよく倒されるが、すんでのところで持ちなおす。

彼女の魔力を視る。

先程まで、腕を中心に流れていた魔力が、ガチっと動きを止めて、もう一つの腕を形作るように腕の中で形を変えていた。その魔力は完全に全身の流れとは孤立して、その場に留まっている。…これが、身体強化。早速、真似をしてみる。


まずは右腕に魔力を集める。

机がミシミシと音を立て始め、リンが目を見開いた。

意識を魔力に集中する。全身の魔力を、右腕に。魔力の切り離しは、身体の外だが、やったことはある。集めた右腕の魔力を、流れと切り離す。

本来、そのままだと霧散して流れに戻っていく魔力をその場に押し留める。

リンが何かを言っている気がするが、私の耳には届かなかった。

集中を乱すように、ガラガラと遠くで音が響くが、それすらも、意識から切り離す。

今は、この感覚だけに集中する。

腕に重なるように、一回り大きな腕を形造る。今の状態だと、魔力が身体からはみ出ている。


より、集中する。

身体からはみ出した魔力を、内側に押し固める。徐々に腕の中へ魔力が収まる。

密度が増し、流れる魔力とは明らかに異なる。先程、彼女の腕の中に視たものと近づいた。


「できた…かも」


リンと同じ状態。おそらく成功だ。

一発で成功とは、中々悪くないのではないだろうか。リンも、褒めてくれるはずだ。


「リン!これ…」


確認してもらうために声をかけようとした。

しかし、顔を上げた先に、満足気な表情を浮かべる彼女はいなかった。

そこ残っていたものは、私の腕だけを支えに、ぐったりぶら下がるリンだった。







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