44 講義
串焼きを二人で食べながら、リンの魔法の講義が始まる。食事中なのが大変申し訳ないが、彼女が語り始めたのだ。
せめて、彼女が話している間は食べるのは控えよう。
口に入った肉を咀嚼し終えたリンが話す。
「肉体強化は、簡単に言うと、魔力で筋肉をつくること。外付け筋肉。」
外付け筋肉…言われてもピンとこないため、実際に魔力を纏ってみる。
私が何かしてるのを悟ったのか、リンの瞳が赤色に変化する。
「それは、魔力を外に出してるだけ。普通そんなことをしたらすぐ倒れる。」
そう言われて魔力を体内に引っ込めた。
これぐらいしかできないのだ。違うのなら、私は肉体強化はやったことないことになる。
新たに串を一本取り出し、私に差し出してリンは続ける。
「…それ。そうなるから、多分アイリは魔法が使えないんだと思う。」
「どういうこと?」
串を受け取ろうとした手が止まる。
今の瞬間に魔法が使えない理由があったようだ。すぐに説明の続きを促した。
「初めて視た時も思ったけど、魔力が綺麗すぎる。普通、皆、自分の属性が混じるの。」
彼女は続ける。
「魔力だけを身体から出すなんて普通はしない。けど、魔力が身体から出ていく瞬間はある。視てて。」
そう言うと彼女のが指先を立てる。
魔力が指に集まるのが見える。
しかし、それ以外にも身体の外に薄い膜のような魔力が出ていた。
「水泡。」
彼女がそう呟くと指先に集めた魔力は、小さな水の玉に変わり、宙を漂う。その状態で彼女は続けた。
「指先に魔力を集めて、水の魔法を使った。 魔力、視えた?」
私はうんうんと、強く頷いて続きを待つ。
リンが指先を引っ込めると水の泡が消えた。
そして、もう一度指先に魔力を集める。
「つむじ風」
彼女の指先出た風が、私の髪を撫でた。風の魔法だ。
今度は先程とは違い、彼女の身体からは、何の魔力も出ていなかった。
「何が違うか。わかった?」
リンの質問に答える。
「水の魔法のときは、身体から魔力がはみ出てた。けど、風の魔法の時はなかった。」
リンは「そう。」と短く答えて説明を続ける。
「私の得意属性は風。風魔法のときは、全部の魔力を使える。けど、ほかの属性のときは、その属性になりきれない分の魔力が外に出る。」
彼女の言っていることは理解できるが、まだ、私が魔法を使えない理由と繋がらない。黙って続きを聞く。
「わたしも聞いた話だけど、この時の外に出る魔力は、純粋な魔力じゃない。私の属性、風が混じる。…はい。」
彼女に受け取り損ねた串焼きを渡されたので、素直に受け取る。
「この魔力は普通、帰ってこない。単純なロス。無駄になる。だから、得意属性以外は皆使いたがらない」
「身体には引っ込められないの?」
私が普段するように、魔力をまた戻せば良いように感じて質問する。
首を振ってリンは答える。
「わたしはできない。外から身体に取り入れられるのは、純粋な魔力だけ。得意な属性でも、混じるともう身体には入らない。
…無理やり入れることもできるけど…。魔力が反発して爆発する。」
彼女に初めて魔力を補充したことを思い出して少し気まずくなった。
あのときはうまくいって本当によかった。
どうやら私の魔力が純粋?だからのようだ。自分の体質に感謝する。
しかし、まだ疑問は晴れない。もう一度彼女に質問する。
「魔力が戻せないことは分かったけど、それで、私が魔法を使えないのはどうして?」
彼女は唸り込んで黙る。ぶつぶつとなんて言えば、どうはなすか…と説明の仕方を考えているようだ。
数分、唸っている間に受け取った串焼きを処理するべく食べる。少し冷めて硬くなってしまっているが、充分美味しい。
串焼きを食べ終わったあたりで、リンが口を開く。説明の方法が決まったようだ。
「…普通の人の身体の中にはパレットがあるけど。アイリには多分ないってこと。」
満足気の顔を浮かべるリンには申し訳ないが、私はもう一度、最初と同じ質問をかえした。
「どういうこと?」
身体強化の話を教えて貰うには、もうしばらくかかりそうだ。




